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旧NOVA商法を否定した最高裁

訴訟が示唆する消費者庁の必要条件

  • 大豆生田 崇志

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2008年6月5日(木)

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 「いっぱい聞けて、いっぱいしゃべれる」と派手な宣伝文句で急拡大していた英会話学校の旧NOVAが経営破綻に追い込まれたのは、2007年10月のことだった。翌11月に破産手続きが始まり、事業は譲渡された。そのきっかけは、2007年4月の最高裁判所の判決だ。最高裁は、受講者が解約金の返還を求めた訴訟で、消費者保護を目的とした「特定商取引法」に違反するとして返還を命じた。

 判決で返還を命じた解約金はわずか約31万円。タダ同然の弁護士報酬でNOVAを追い詰めたのは、企業法務が専門で、消費者問題とは無縁だった1人の弁護士だった。しかも、最高裁で争う前の高等裁判所でのNOVA敗訴を伝えたのはマスコミではなく、インターネットのブログだった。解約トラブルに悩む消費者がネットで情報交換していたことが、旧NOVAを窮地に立たせた。

 特定商取引法を所管するのは経済産業省。もともと経産省は、旧NOVAの解約方法を追認していた。行政と強く結びついた業者の手法を否定した司法判断。その舞台裏には、現在設立構想が議論される「消費者庁」に必要な条件が示されている。

(日経ビジネス オンライン 大豆生田 崇志)

 「なかなか解約をさせてくれない」

 都内で法律事務所を構える杉浦幸彦弁護士に、こんな相談を持ちかけたのは、同じテニススクールに通うテニス仲間の女性だった。ビルの屋上にあるテニススクールの階下に英会話学校の旧NOVAがあり、その女性は海外旅行を楽しむ目的で英会話の受講を始めた。

 ところが、何度申し込んでもすんなり受講の予約が取れない。業を煮やして中途解約しようと窓口に出向いたところ、担当者の対応に驚かされた。

 「そういうことだから英語ができるようにならない」
 「もうちょっと頑張りなさい」
 「意気地がない」

 解約の手続きに時間がかかるとも言われた。いったん捕まえた客は離さないとばかりに、執拗に継続を迫られたという。

 当時のNOVAの受講契約は、あらかじめ購入したレッスンポイントをもとに受講を予約しなければならなかった。1ポイントの購入単価は、1200円から3800円まで3倍以上の開きがあった。一度に登録するポイントが多いほど、単価は下がる仕組みだった。

 単価は割引されるものの、NOVAにしてみれば受講者にたくさんポイントを購入させた方が収益は増える。そのためか、将来ポイントをどれくらい使うか分からない受講者にも「多く買わないと損だ」と強く勧誘した。

 2人で連れ立ってパンフレットをもらいに行っただけでも、1人ずつブースに分けて「まじめにやるなら長時間受講しないといけない」などと個別に勧誘していたと杉浦弁護士は言う。こうした勧誘方法でNOVAは、受講者同士で情報を共有させないようにしながら、契約規定など詳しい情報は知らせなかった。

 当時のNOVAは、一定期間が経過するとポイントが使われたと見なす「みなし使用」の規定があった。しかし、自分のポイント残高はクレジットカード式の磁気カードに記録されていて、いくつポイントが残っているか窓口で聞かなければ分からない。いつ予約が可能かも、受付で聞いたり、電話で問い合わせなければならない。ポイントの有効期限が近づくと「キャンペーン中なので安くする」と更新を迫った。なかなか予約ができないと苦情を言うと「ほかの皆さんは、そんなことはありません」「あなただけが、わがまま言っても仕方がない」と、まるでクレーマー扱いされたという。

「解約の返金額は1円も譲らない」

 中途解約しようとすると、契約時よりも高い単価で使用済みポイントの金額が計算された。こうして返金されるのは、高い単価で計算された使用済みポイント分と、解除手数料などを差し引いた残額だった。いわば見かけの安さで受講者を引き寄せながら、実態は中途解約をさせにくい仕組みだった。

写真1

パネルに仕立てたNOVA訴訟の新聞記事を手にする杉浦幸彦弁護士

 相談を受けた杉浦弁護士は当初、NOVAの担当者に善処を求める程度のつもりで、解約の返金額を引き上げるように交渉した。しかし担当者は、1円も譲らないという強硬な態度を示した。弁護士という立場から訴訟を示唆しても、訴訟にはならないだろうと、あしらうように言われた。請求額はたかだか数十万円。訴訟費用の方が高くつくのは明白で、タカをくくられていたようだった。

 どうして返金額が少なくなるのか詳しい情報を求めても、担当者は規則で一切出せないという一点張り。しかも一方的に伝えてきた金額に、今後は一切文句を言わないという趣旨の書面に一筆入れるよう求めてきた。解約トラブルが起きても、証拠を残さずに闇に葬ろうとする意図が感じられた。こうした対応に、解約した多くの元受講者が泣き寝入りしていただろうことは想像に難くなかった。実際に消費者相談の窓口に尋ねてみると、国民生活センターや全国の相談窓口に解約トラブルの苦情が殺到していた。

弁護士が判決にこだわったワケ

 杉浦弁護士が対処法を探ろうと契約書をよく見ると、特定商取引法という記述があった。もともと杉浦弁護士は企業法務が専門だったため、「特定商取引法という法律があることすら知らなかった」という。弁護士会の図書館で手に取ったのが、特定商取引法の法案作成に関わった弁護士による「特定商取引法ハンドブック」だった。

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