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四川地震、日本企業の教訓

国内と同じ対応は禁物、心のケアを最優先せよ

  • 江村 英哲,飯泉 梓

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2008年6月10日(火)

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 5月12日に発生した中国・四川大地震から約1カ月が経過した。現地に進出している日本企業が総じて苦労しているのは、従業員の心のケアのようだ。

 「地震大国」に住む日本人の場合、地震が起きても、本人や家族に被害がなければ、会社に「馳せ参じる」従業員が少なくない。放っておいても自発的に被害状況の確認などを始める。しかし、地震に慣れていない中国人の場合、恐怖心が先に立って、仕事が手につかない。多くの日本企業がそうした日中の文化の違いに戸惑っている。

従業員が工場に入ってくれない

 四川省の省都・成都市の近郊で2輪車用部品を製造する成都永華富士離合器(成都FCC)もそんな1社だ。市川豊紀総経理は「遅刻したら給与から天引きされる制度があるため、とりあえず出社してきたが、しばらくは余震を恐れて工場に入ってくれなかった」と振り返る。

 地震翌日は、280人の従業員のうち、工場に入ったのは49人だけだったという。4年前に合弁先の現地企業が倒産して100%日系資本となった同社の場合、中国人経営者が不在。そのため、復旧作業の指揮は日本人が執った。日本から生産担当の役員が駆けつけ、工場やクルマの中に寝泊まりしながら安全確保のための作業を懸命に続けたが、当初は苦労が続いた。

成都FCCは木材を使い、余震による天井からの落下物に備えた

成都FCCは木材を使い、余震による天井からの落下物に備えた

 日系の建設会社に建屋の安全を確認してもらい、工場内の通路を木材で覆って落下物から身を守れるように工夫も凝らしたが、それでも従業員が工場に入ってくれない。

 「現場が安全だとようやく納得してくれたのは政府のお墨付きを得てから」と市川総経理は打ち明ける。四川省の安全管理局の担当員に2度も建物を診断してもらい、国が安全を保証した後にようやく働いてくれたという。

 成都市の郊外に部品工場を持つヤマハ発動機は地震から2日後に工場を稼働させた。しかし、その後も「余震のたびに従業員が外に飛び出すので、しばらくはまともに生産ができる状況ではなかった」(広報部)という。

 6月1日時点で死者数は6万9000人に達した。従業員の中には親戚や知人を失った人もいる。「こんな状況下で、平穏に仕事をしていていいのか」という雰囲気も現地にはある。

 そんな中、円滑に復旧にこぎ着けた企業がある。成都市郊外でショベルカーなどを製造する、神戸製鋼グループのコベルコ建機だ。

危機対応リーダーを現地人に

 同社は震災から3日後には、生産能力を震災前と同じ、ほぼ100%の状態に戻すことができた。従業員に震災のショックが小さかったわけではない。同社の工場に勤める40代の中国人男性は「余震が毎日続いているので、工場の作業はとても不安。帰宅しても夜中に家が揺れると驚いて外に飛び出してしまう。倒壊が怖くて屋外のテントで寝ている人も多く、従業員は皆、精神的にとても疲れている」と話す。

 にもかかわらず、なぜ、円滑に工場を復旧できたのか。中国事業本部長の瀧口和光専務執行役員は「日中の文化の違いに配慮した。危機に瀕すると日本人は中間管理層が現場を引っ張るが、中国では現地人の強いリーダーシップを必要とする」と説明する。

 地震が発生した12日の午後2時28分。会議中だった瀧口専務は、揺れが収まると、その場に居合わせた中国人の総務部長をリーダーに選んだ。目の前の人物を指名した理由は、「いくら高い役職の人材でも、その場にいない人をリーダーに選んでいては、従業員の統率が取れない」(瀧口専務)と判断したからだ。

 コベルコ建機は成都市近郊に3社の合弁企業を持つ。瀧口専務がリーダーを任命した以外の2法人では、中国人の総経理がリーダーを務めた。

 彼らは、同社が事前に作成していた「危機対応マニュアル」を熟知していた。これには伏線がある。2005年7月、同社の工場は洪水で浸水した経緯がある。当時は明確な対応手順が決まっておらず、復旧に半月以上かかった。その反省から重大災害への対応を文書化し、半年ごとに避難訓練も実施していた。3人はこれら一連の活動に携わっていた。

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