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「投機悪玉論」を言い訳にするな

ブームに煽られない賢い投資で生き抜こう

  • 竹中 正治

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2008年6月11日(水)

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 原油や穀物価格の高騰が7月の“洞爺湖サミット”の議題になると報じられている。現在の高騰のどこまでが実需によるもので、どこからが投機の結果なのか、正確に分かつことは不可能だが、投機的な要因が働いていることは間違いない。

 食料の高騰の影響から中米のハイチで泥を混ぜた「泥クッキー」で飢えをしのぐ人々の姿をテレビで見た我が家の女房が言った。「食糧の投機なんて、全部禁止すればいいのよ!」。

 思わず私は、女房殿が独裁者となって実物資産への「投機」が一切禁止された世界を空想してしまった。空想の「投機厳罰世界」では人々は実物資産を売買するたびに「投機目的」ではないことを証明するのに神経をすり減らしている。

実需か投機か? 世界を揺るがすコモディティー市場の高騰

 1970年代の世界的なインフレ高騰の時期には、日本では様々な商品の価格つり上げ(当時は“○○転がし”と呼ばれた)に走った大手商社の経営者が国会に召喚されて糾弾された。米国ではインフレ高騰に業を煮やしたニクソン大統領(当時)が「賃金と物価の統制」を発動したが、統制政策は失敗した。

 価格操作など投機に違法性があれば取り締まれるが、市場経済の下で「投機」自体の抑制は困難だ。そもそも「投資」と「投機」の区分けが事実上困難であり、かつ「資産選択の自由」を損なわずに規制することは不可能だ。

 米国の住宅投資ブームはバブル崩壊となってはじけたが、世界的に見ると投資ブームは続いている。こうした変化を、まるで犬の尻尾が頭や胴体を振り回すように「投資・金融活動が実体経済(財やサービスの生産と消費)を振り回すようになった」と懸念する声もある。

 ますます高まる投資(あるいは投機)ブームの根底には何があるのだろうか。過度な金融自由化の産物か。米国の金融緩和による世界的な「過剰流動性」の結果か。某インベストメントバンク(投資銀行)の扇動なのか──。足元の状況として、私もそうした側面はあると思う。しかし根底の部分で人々の意識、関心の変化が起こっている気がする。

投資ブームの根底にある人々の関心の変化

 「犬の尻尾(=金融・投資活動)」と「犬の頭・胴体(=実体経済)」の例えで考えてみよう。GDP(国内総生産)は1年間に生み出される経済的な価値(付加価値)の総計であるから、これを生産と消費からなる実体経済の規模と見ることができる。一方で、家計の保有する金融資産残高は投資・投機を求めて動く資金の源泉として「犬の尻尾の大きさ」と見ることができようか。

 この家計金融資産残高のGDPに対する比率を見ると、過去四半世紀で顕著な上昇が米国、日本、そのほかの先進国共通に見られる。米国家計部門(非営利団体を含む)の金融資産残高は名目GDP比率で1980年の2.35倍から2007年の3.28倍(実額45兆3000億ドル、約4700兆円)に増加、日本の家計の同比率も同じ期間に1.54倍から3.0倍(実額1545兆円、2007年末)へと2倍になっている。中国やインド、原油価格の高騰で潤う中東産油国やロシアでは新富裕層を中心にもっと短期間に同じ方向の変化が生じている。

 グローバルな投機行為は、家計金融資産とは関係ない欧米のヘッジファンドなど一部の投機筋の仕業ではないのか──。いや、事情はそれほど単純ではない。商品先物を得意とする大手ヘッジファンドの英マン・インベストメンのピーター・クラークCEO(最高経営責任者)は、運用資産が1年間で2割増えて約8兆円となり、個人からの預かり資産4兆5000億円のうち日本は24%を占める「上得意客」だと語っている(日本経済新聞、6月4日朝刊)。

 日本の個人投資家層も世界的なコモディティー投機に参戦するとは、たいしたものだ。(ちなみに、マン・インベストメントは、比較的小口の1口3万ドル、約300万円から投資が可能だそうだ。ご関心のある方はどうぞ)

 生保や年金も「代替投資」としてヘッジファンドなどへの投資を次第に増やしてきた。こうした様々な投資運用機関に預けられる資金の源泉は家計の貯蓄である。
 金融資産の積み上がりは、富の格差の問題を伴いつつも、もとより経済的な豊かさの結果である。その結果、犬の頭と胴体に比較して尻尾が大きくなったのであり、大きな尻尾を左右に振れば、反動で体は右へ左へと振れるのはある意味で必然的だ。

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