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TCIの向こう側に見えるもの

  • 児玉 博

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2008年6月13日(金)

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 「当社を支持してくれるのであれば株式の売却先は国内企業にこだわらない」

 政府・電力会社9社がすべての持ち株を放出する完全民営化の方針が閣議決定された後に「電源開発」社長に就任した中垣喜彦は就任記者会見でこう高らかに宣言していた。2001(平成13)年6月29日のことだった。

 中垣は自らの言葉を実行に移すかのように株式売り出しを前にロンドンなど海外各地でIR(投資家向け広報)活動を精力的に行い、外資に投資を呼びかけたものだった。

 政府の方針に則り、「電源開発」の完全民営化がなされ、東京証券取引所の株式を公開したのが2004(平成16)年10月。

 海外でも株式を買いやすくすることと、取りあえず株価を高くすることを目標に置いたために、敵対的な買収に対して合併提案に拒否権を発動できる「黄金株」さえ無い、いわば丸裸の株式公開であった。さすがに、社内をはじめ、電力業界内部からあまりの無防備さを危ぶむ声が聞かれた。

 しかしながら、「構造改革」を唱え、圧倒的な支持率を誇っていた小泉内閣全盛の時。そうした声は時代に棹差すとして葬り去られた。さらに、「電源開発」民営化を主導した経産省の頂点には強烈な電力民営化論者であり、小泉純一郎首相以上に規制の撤廃、緩和に心血を注いだ村田成二氏が立っていた。「電源開発」の完全民営化はその言葉通り一切保護のない「完全」民営化であった。

 もっと言えば、経産省内部の電力自由化派の若手などの間からは、「(電源開発が)外資に買収されてもいいかもしれない。外資に買収されるような民営化こそ自分たちがしなければならない民営化じゃないのか」とする声さえあった。いや、そうした声が主流でさえあった時があった。

 しかし、「電源開発」が政府の意向とはいえ、経産省に有無もなく背中を押されたとはいえ、手をこまぬいていたわけではない。

 世界的な金融自由化の流れ、経済のグローバル化、IT(情報技術)の爆発的な普及、そして新興市場の整備が日本にもM&A市場を生み出し、投資ファンドが経済の表舞台に登場したのである。

 ライブドア元社長、堀江貴文の言動に、村上ファンドを率いる村上世彰の一挙手一投足に旧来の経営者たちは困惑し、震え上がった。

 買収防衛策を持たぬ「電源開発」が頼ったのは、丸裸で資本市場に放り出した経産省であった。村田氏が退官した後の経産省はその反動から極めて保守的な事務次官が続いていた。 

 「電源開発」では、経産省内で企業防衛策を研究し、実務的な運用をどのように図るべきかを検討していた経産省経済産業政策局産業組織課に幹部候補生を送り込み、買収防衛策の導入を急いでいた。

 経産省所管の有力企業、または裁判所から出向してきた者たちとともに、世界的なM&Aの潮流などを学び、具体的な企業防衛策を携えて彼らが「電源開発」に出向から戻るまさにその直前であった。大株主から1通の手紙が「電源開発」本社に届いたのは。差出人は言わずと知れた「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド」(TCI)である。

 まさにここしかない、というタイミングであった。2007(平成17)年3月12日、「電源開発」にとって青天の霹靂はこうして始まった。

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