環境か食料か――。世界がバイオ燃料の扱いに揺れている。
6月9日、福田康夫首相は、日本が取り組む地球温暖化対策(福田ビジョン)を発表した。主要国首脳会議(洞爺湖サミット)での指導力発揮を狙っているが、サミットでは世界の食料危機への対応が重要議題となる情勢だ。温暖化と食料という2つの問題にかかわるバイオ燃料の取り扱いが焦点となっている。
トウモロコシやサトウキビなどから作るバイオ燃料は、自動車用のガソリン代替燃料として世界的に普及している。環境負荷が低いとの理由などから、2001年に約3000万キロリットルだった生産量は、2007年には約6200万キロリットルに達した模様だ。
6月3〜5日までローマで開催された国連食糧農業機関(FAO)の食料サミットでは、各国首脳が食料価格の高騰や食料不足が広がっていることへの危機感を表明。食料不足の一因となっているバイオ燃料を規制すべきとの声が相次いだ。
食料サミットで福田首相は、「原料を食料作物に求めない(稲わらや木くずなどセルロース系)バイオ燃料の研究と実用化を急ぐ」と提唱した。
しかし、現状からすると、この呼びかけは掛け声倒れになりかねない。
日本のセルロース系バイオ燃料は今のところ生産量が少ないので問題にならないが、量産時には原料調達という大きな壁が立ちはだかるからだ。
既に日本の発電所や工場などでは、石炭代替燃料として木材を裁断した木くずが大量に使われている。この木くずを使ったバイオマス発電事業の苦戦ぶりがセルロース系バイオマス活用の難しさを予兆しているので、その現状を見てみよう。
需要増、全国で争奪戦
木くずが集まらない――。
6月5日、ファーストエスコ・グリーンエナジー事業部の鳥渕修事業部長は苦渋の表情でこう語り、岩国ウッドパワー内にある木くずの山を見上げた。

ファーストエスコの岩国ウッドパワーで木くずを集める鳥渕修事業部長 (写真:沖松 岩生)
1997年設立のファーストエスコは工場やオフィスの省エネ支援事業を柱に成長。2005年3月に東証マザーズに上場し、さらなる事業拡大を狙って、2006年にはバイオマス発電事業に参入する。
だが、目論見は外れた。2006年1月に稼働した岩国ウッドパワーは年間9万トンの木くずを調達する予定だったが、2008年2月から予定の60〜80%しか集まらず、稼働率を落としている。
同工場は周辺の中間処理場から木くずを調達している。当初は予定量を確保していたが、周辺にも同様の施設が稼働して、木くずの争奪戦になったのだ。
同社は岩国以外にも、福島県白河市と大分県日田市にバイオマス発電所を建設したが、そこでも木くず不足で苦戦中。バイオマス発電事業で2億円の営業利益を予想していたものの、稼働率の低下などから3億円の営業損失になる見込みだ。これが2008年6月期に4億円の営業損失に転落する主因となりそうだ。
木くずが足りないのは他社も同じ。岩国ウッドパワー近くの山口県美祢市に位置する宇部興産のセメント工場。燃料として石炭を80%、木くずを20%使う予定だったが、木くずが足りずに石炭の調達量を増やしている。調達範囲を広げても他のエリアと競合してしまうため、ファーストエスコの鳥渕事業部長は、「もはや日本に木くず調達の空白地帯はない」と嘆く。
全国的に木くず不足に陥っているのは、2つの理由で木くずの需要が急増したからだ。
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