「閉ざされた日本の空」

第9回 成田、形だけの民営化に勝算は

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2008年6月20日(金)

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 「急速に進む経済のグローバル化の中で、日本は活力が落ちている気がしてなりません」

 前回の記事でインタビューした関西国際空港の村山敦社長は、最後にそう言い残した。だが、苦戦しているのは関空だけではない。世界的な空港の覇権争いの中、日本の航空行政の欠陥そのものが浮き彫りになりつつあると言える。日本の空の玄関口、成田国際空港(NAA)が、グローバル化への迅速な対応に迫られているのは間違いない。

 これまで見てきたように、かつてアジアの玄関口の地位をほしいままにしてきた往年の存在感は色褪せ、成田空港はシンガポールのチャンギ空港やソウルの仁川空港から猛烈な追撃を食らっている。長年、世界一だった貨物の扱い量が香港国際空港に抜かれ、2006年以降、仁川空港に次いで3位に陥落したのは知られたところだろう。

世界の空港の国際貨物取扱量の状況(2006年)

 また、ここへ来て、国内では羽田の国際化待望論が巻き起こってきた。おかげで2010年の羽田再拡張で増える10万回の発着枠について、国土交通省も当初発表された3万回から、この5月末には昼3万回と早朝3万回の合計6万回に増やす方針に転換した。近年、国内の地方空港はキャパシティー不足の成田をあてにせず、韓国や中国、台湾と直接路線を結ぶようになった。

世界の空港の国際旅客数の状況(2006年)

小さい経営の自由度

森中 小三郎氏

森中 小三郎(もりなか・こさぶろう)氏
成田国際空港社長
1942年8月生まれ。65年住友商事入社、92年、同社船舶プラント本部電力プロジェクト部長、93年同社取締役、2003年同社取締役兼副社長執行役員。2007年6月より現職

(写真:花井 智子)

 折しも、今年6月に開港30周年を迎えたばかりの成田国際空港は、日本の基幹国際空港として、重大な岐路に立たされていると言える。この先、その輝きを取り戻すことができるのか、森中小三郎社長に聞いた。

 「(住友商事8053時代の)40年、私ほど世界の旅をしている人はそうはいないと思います。世界中の空港も見てきました。しかし、実際の空港づくりとなると、一朝一夕に身につくものではありません」

 「基本的に空港運営は国の関わりが深い。滑走路、エプロン(駐機場)、誘導路などはNAAで所有していますけど、経営の自由度が小さいのは確かです。公共性があり、制約も多い。海外に向けて独自の路線営業ができる関西国際空港中部国際空港と違い、成田空港は最初から2国間の航空交渉で決まっている事柄も多い。その中で、首都圏のメトロポリタン空港としてどう展開していけるのか、それを模索しています」

 住友商事元副社長の森中氏は、成田空港初の民間人社長だ。住友商事時代には、アジアや中東の電力プラント事業を手がけ、1997年のアジア通貨危機に直面しながら、インドネシア最大規模の発電所を建設した実績を持つ。アジア・ゲートウェイ構想議論の最中の昨年6月、成田空港の社長に就任した。

 成田の経営トップは、空港建設の閣議決定から公団時代を含めた40年、旧運輸省をはじめとした官僚天下りの指定席だったが、安倍晋三首相(当時)官邸の意向により、社長に招聘されたと言われる。関空の村山社長と同様、民間出身の経営者だけに、その期待は大きい。昨今、航空業界で囁かれてきた成田空港の地盤沈下について、どうとらえているか。まずそこから尋ねた。

 「国際線について、羽田だ、成田だ、なんて言い争っている暇があったら、成田は独自に2本の滑走路をうまく使って、運営していけばいい。確かに成田は24時間化が難しい内陸空港なので、一部、羽田が離着陸を国際線に使うのは仕方ないことだと思います。例えば神奈川や静岡の方が、羽田を使って近くの国へ日帰りでビジネスに行く。そいう需要はあるでしょう。成田と羽田でそのあたりを分け合っていく、というのが重要ではないでしょうか」

 森中社長はそう言う。

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著者プロフィール

森 功(もり・いさお)

ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、新潮社勤務を経て独立後、政治経済事件と幅広い取材・執筆活動を展開。代表作に『古賀誠研究』『日本道路公団の闇』『官邸のラスプーチン「飯島勲」研究』(いずれも「週刊新潮」)。『JAL大激震』(週刊文春)、近著『ヤメ検――司法に巣喰う生態系の研究』(「月刊現代」)が2008年第14回「雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。主な著書は、『黒い看護婦』(新潮社)、『殺人者はそこにいる』(新潮社共著)『サラリーマン政商 宮内義彦の光と影』(講談社)。



このコラムについて

閉ざされた日本の空

 世界の航空ビジネスが、大きく変わろうとしている。米国やEU(欧州連合)は、「オープンスカイ協定」の下、原則として空港や航空会社が自由に路線を設定できるようになった。アジアのハブを目指すシンガポールも米国や英国などとオープンスカイ協定を締結している。その一方、アジアの玄関口を自認する日本を見ると、成田、羽田のキャパシティ不足が続き、他国とオープンスカイ協定を結んでいない。日本の空港、そして航空会社は、ボーダレス化する航空ビジネスの中ではたして競争力を持てるのか。

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