「ビジネス・政策道場」

独自調査で分かった「政界再編予想図」

[第1回政策アンケート 議員編]経済政策を軸に議員の本音を徹底分析

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2008年7月7日(月)

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 追い風を受け政権奪取に向け勢いを増す民主党。一方、洞爺湖サミットを成功させ巻き返しを狙いたい自民党。来るべき衆院選挙を見据えて攻防が激しさを増している。だが、依然として十分な政策論争が展開されているとは言いがたい。

 そこで本誌は、「第1回 日経ビジネス 経済政策アンケート〜日本再浮上への挑戦〜」と題した緊急アンケートを実施。自民党、民主党の全衆院議員に対して、どのような政策を実現すべきと考えているのかを調査した。

 調査結果からは、自民党と民主党では経済政策についての立ち位置が大きく異なっている姿が浮かび上がった。さらに、各議員の回答を個別に見ていくと、所属政党の違いを超えて、目指す政策の方向性が一致する議員が少なからずいることが明らかになった。そこからは、政策を軸にした政界再編の青写真が透けて見える。

 政策アンケートは、有権者である読者、そして日本の成長を牽引する有力企業のトップにも実施。読者や経営トップが政治にどのような政策を望んでいるのかを明らかにするとともに、議員が目指す政策とのズレを検証した。

 議員、読者、経営トップの回答を横断的に分析した結果は、本誌7月7日号の第2特集「民主党 追い風の虚実」に掲載している。「政策道場」では第1回の議員編を皮切りに、読者編、経営トップ編と3回に分けて、それぞれの回答を詳細に分析していく。

 小さな政府で格差是正に力を入れる――。民主党議員が目指す経済政策の方向をひと言でいうとこうなる。

 まず、下のグラフを見て欲しい。これは各議員から寄せられた回答結果から、各議員がどのような政策を望んでいるのかをひと目で分かるように視覚化したものである。「政府のあり方」と「市場経済のあり方」について聞いた、それぞれ5つの設問の回答を合計して平均点を算出。各議員の立ち位置をグラフに示した(第5問については集計の際、「思う」=1点、「思わない」=5点とした)。

図1

>>>自民党の図を拡大する  >>>民主党の図を拡大する

 横軸が政府のあり方。点数が大きいほど「小さな政府派」、点数が小さいほど「大きな政府派」と定義した。他方、縦軸が市場経済のあり方。点数が大きいほど「規制緩和派」、点数が小さいほど「格差是正派」とした。

 民主党議員と自民党議員の立ち位置の違いが一目瞭然だろう。民主党議員の多くはグラフの右下、つまり、「小さな政府で格差是正」に集まる傾向が見られた。他方、自民党は大きく2つのグループに分かれた。1つ目が、グラフ右上の「小さな政府で規制緩和」に集まるグループ。そして、2つ目のグループが「大きな政府で格差是正」だ。

「小さな政府で格差是正」路線に財源の壁

 民主党の「小さな政府で格差是正」路線は、政権を目指すに当たって直面するハードルを如実に示しているといえる。なぜなら、今の日本には、小さな政府で格差是正を実現するために必要な、ある重要な前提が欠落しているからだ。それは、財政再建という問題である。

 日本の債務残高はGDP(国民総生産)比で148%という先進国随一の水準にある。莫大な借金を残したまま、大きな歳出を伴う格差是正対策をどこまで実施できるのか。民主党は消費増税に否定的で、行政改革などにより無駄を削減すれば、財源は捻出できると主張する。

 民主党でネクスト財務大臣を務める中川正春氏は、「公約に掲げている政策全てを、一気に実現できるわけではない。時間軸の問題だ」と話す。政策の実現性に対する不安を払拭するには、より具体的な実行計画を示すことが求められる。

相反する2つの立場を抱え込む自民党

 自民党議員が多く集まるグラフ右上の「小さな政府で規制緩和」は、小泉純一郎政権時代の改革路線をさらに進める立場ともいえる。英国やニュージーランドが財政再建の過程で採用した政府の姿でもある。一方、グラフ左下の「大きな政府で格差是正」は、消費増税などによる大きな財源を武器に所得再配分を充実させる政府である。

 いずれの立場も、政府のあり方と政策の中身に一貫性があり、政策の実現性には納得感がある。逆に言えば、政権与党として両方の立場を併せ持つことで、振り子のように政策を軌道修正しながら時代の要請に応えてきたといえる。小泉純一郎政権後、格差問題への国民の関心が高まるにつれて改革路線が後退してきたのも、こうした自民党の性格を如実に映し出している。

 ただし、今の日本には少子高齢化が進む中で、将来の社会保障費をどう捻出するかという避けて通れない問題が立ちはだかる。経済成長と財政再建のバランスをいかに舵取りするのか。極めて難しい局面に差しかかっている。

 小さな政府による規制緩和路線は、経済環境が悪化する今日では格差問題を今以上に拡大する可能性がある。一方、大きな政府で格差是正を目指す路線は、行政サービスの効率化と経済成長に逆行する危険性をはらむ。従来のような“振り子作用”だけでは、問題解決が難しくなっている。

「開放派」が大多数占める

 アンケートでは、「国際化のあり方」についても考えを聞いた。点数が大きいほど、海外からの投資や労働者を呼び込んだり、農産物などの自由貿易を進めたりすることに積極的な「開放派」。他方、その反対の立場をとる議員を「保護派」と定義した。下のグラフは、「国際化のあり方」を縦軸に、「市場経済のあり方」を横軸に各議員の立場を示したものだ。

図1

 国際化のあり方では、民主党も自民党も開放派が大半を占めると言う点では同様の傾向が見られた。だが、格差是正と市場開放を同時に目指すという民主党の考えは、格差是正と小さい政府を両立させることと同様に、一筋縄ではいかないだろう。

 国を開けば、企業や労働者は激しい国際競争にさらされる。海外の投資家は、より一層の規制緩和と市場原理の徹底を求めている。労働者も海外の労働力との競争の中で、より高度な能力を身に付けることができなければ、安い賃金で働くことを余儀なくされる。グローバル化は格差問題と表裏一体なのである。

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著者プロフィール

大竹 剛(おおたけ つよし)

1998年、デジタルカメラやDVDなどの黎明期に月刊誌「日経マルチメディア」の記者となる。同誌はインターネット・ブームを追い風に「日経ネットビジネス」へと雑誌名を変更し、ネット関連企業の取材に重点をシフトするも、ITバブル崩壊であえなく“休刊”。その後は「日経ビジネス」の記者として、主に家電業界を担当しながら企業経営を中心に取材。2008年9月から、ロンドン支局特派員として欧州・アフリカ・中東・ロシアを活動範囲に業種・業界を問わず取材中。日経ビジネスオンラインでコラム「ロンドン万華鏡」を執筆している。



このコラムについて

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「政策」というと、霞が関の官僚や一部の政治家、これに圧力をかける団体の手で、いつの間にか作り上げられるものだった。だが、そうしてできた法律は当然、私たちのビジネスを縛り、生活に影響する。「政局」を追う新聞やテレビの政治報道では、本当の政策論議は見えてこない。ビジネスの視点から、政策が法律となって世に出るまでの流れを追い、一見暴論とされかねない意見も、あえて世に問う。名づけて「ビジネス・政策道場」。コメントやトラックバックでぜひご意見をお寄せください。

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