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日本一の森林はこう作る~尾鷲の山を歩く

国内林業に復活の兆し(下)

2008年7月7日(月)

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 入り組んだ海岸線と緑深い山々に囲まれた三重県尾鷲市に隣接する紀北町。この町にある「大田賀山林」は、速水林業が所有する森林の1つである。適切な間伐や除伐がされたこの森林は、各地に広がる荒廃林とは対照的に、針葉樹の人工林とは思えない多様な植生が根づいている。

 「林業とは光を管理すること」。林業の本質を速水亨代表はこう語る。速水林業は2000年に、国際的機関であるFSC(森林管理協議会)の認証を国内で初めて取得した。この大田賀山林には、そんな彼のノウハウや哲学のすべてが詰まっている。梅雨のさまかの6月27日。速水林業の森作りを感じるために、速水社長と山を歩いた。

雨上がりのひんやりと涼しい針葉樹林を歩き始める

 日本一雨が多いと言われる三重県尾鷲市。その通り、大田賀山林に行く道中はバケツをひっくり返したような土砂降り。この雨の中で山を歩けるのかしら、と思っていたが、日頃の行いが良いのか、現地に着く頃には雨もやみ、薄明かりが差し始めた。

 午後1時に麓の山小屋で速水代表と待ち合わせて、作業道をてくてくと登り始める。雨が降ったせいで革靴はドロドロ。でも、ひんやりとした涼しさが森林全体を覆っており、とても気持ちがいい。木々の間に差し込む陽光は幻想的ですらある。

 この森、ヒノキの針葉樹が中心だが、ヒノキだけでなく、イチイガシやミズナラなどの広葉樹が目立つ。シダが多いのだが、下草もびっしり。今までに見たスギやヒノキの林とは何かが違う。そんなことを考えながら歩いていると、見慣れぬ巨大な重機に出くわした。

*写真をクリックすると大きなサイズでご覧いただけます。

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 木材の積み替えに使う「スキディングローダー」という重機(このタイプは、ブルドーザーのショベルのようなものがついていた)。日本にある3台、すべてを速水林業が所有している。この日は稼働していなかったが、「タワーヤーダー」という機械もある。これは、脚立のような支柱を立て、ワイヤを張り、木を切り出す装置である。人の手で木を切り出しているのに生産性が高いのはこうした機械を駆使しているからだ。
(写真:高木茂樹、以下同)

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 これは、植林したまま間伐をしていない森林だ。約20年生のヒノキだが、ひょろっとした木が多い。日が当たっていないため、下草も生えていない。この場所は平地だが、斜面の場合は雨で土壌が流出しかねない。「比較林」。大田賀山林では、比較のためにあえてこういう森を残している。

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 作業道も下草で覆われている。「作業道も土壌流出の原因。できるだけ、少ない方がいいというのが私の考え」(速水代表)。その代わり、「タワーヤーダー」などで搬出している。下草の上を歩くと、靴も汚れにくいから良い。


細かく手入れされた森のヒノキは間伐材でも高価で売れた

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 伐採した後の景観を維持するために、あえて100年生の木を残して植林している。大田賀山林では、小さなエリアごとに伐採し、樹木の樹齢を意図的にずらしているエリアが少なくない。同じ樹齢の森でなく、いくつかの違う樹齢のエリアを作る。それだけで、ヒノキの人工林でも多様性が高まるという。「それに、見た目もきれいでしょう。私は誰が見てもきれいな森林を作りたいんです」(速水代表)。

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 「平尾の下」と名づけられた森林。終戦直後の1945年に植林したという。1ヘクタール当たり8000本のヒノキを植えたが、現在残っているのはわずか6%の475本である。94%は間伐や除伐で切り出したということだ。それだけ光の管理をしっかりしてきたため、木の幹は太く、下草が存分に生えている。

 「この森の木は、非常に細かく手が入っている。ヒノキとしては非常に高い価格で取引された林のひとつでしょう。間伐材でも十分に採算が合った」と速水代表は胸を張る。価値が高いのはまっすぐで丸いため。適切な枝打ちをしなければ、節のないまっすぐなヒノキは作れない。

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 人工林の中に立つコナラの木。コナラは、ほかの植物を寄せつけない作用(アレロパシー)を出すため、周囲には下草が生えていない。

 ただ、その代わり、樹液を出すこの木には昆虫が集まってくる。そして、この昆虫を目当てに鳥や小動物が集う。こうした広葉樹が1つあることで、針葉樹の人工林にはできない生態系が生まれる。


森が土を作り、動物たちを育む

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 速水代表が、ヒノキの下の地面を移植ごてで掘り出した。「こういう黒っぽい土壌が20センチメートルぐらい積み重なっています。これは腐植土。腐った植生が土になろうとしているんです。ほら、ここに腐りかけているヒノキの葉がありますね。針葉樹の地表は雨で流されると言われるけど、ここはそんなことはありませんよ」。

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 速水社代表が指さした先にある穴はイノシシの沼田場(ぬたば=泥浴び場)。体についたダニなどを落とすために泥を浴びる場所である。そばの切り株には、イノシシが体を押しつけたであろう赤土の後が残っていた。「うちの山では、動物はビジターでなくメンバーです」。


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「日本一の森林はこう作る~尾鷲の山を歩く」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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