• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

金融帝国アメリカを支えるカラクリ

日本はグローバル投資時代の「貧乏くじ」を引くな

  • 竹中 正治

バックナンバー

2008年7月9日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 米国とドル相場の長期的な動向を考えるうえで、1年に1度の重要な統計データが6月27日に発表された。商務省が発表する米国の対外資産・負債残高である。

 「対外資産」とは、米国の官民が海外に保有する直接投資、株式投資、債券投資、貸付残高などの総計であり、「対外負債」とは海外の官民が米国に保有する同様の資産(米国の側からは負債)の総計である。2007年末の対外資産は17兆6000億ドル、対外負債は20兆ドル、差し引き2兆4000億ドルのネット負債と発表された。2006年末のネット負債は2兆2000億ドル(改訂前2兆5000億ドル)で、1年間で2160億ドル増加した。

 この数字を見て「あれ、なんだか変だぞ?」と思ったら、あなたは相当な経済通だ。米国の2007年の経常収支赤字は約7300億ドルである。従って、ほかの条件が同じなら、対外ネット負債は2006年から2007年にかけて経常収支赤字と同額増えて、3兆ドル近くになるはずだ。ところが、実際には2160億ドルしか増えていない。これはどういうカラクリだろうか。

 年間所得1000万円の世帯が、年間1100万円支出する生活をすれば、100万円はなんらかの借金となる。この状態を毎年続ければ、利息の支払いも加わるので、10年未満で借金は年間所得と同じ1000万円に積み上がるはずだ。年間所得1000万円の人なら、最初の100万円は無担保で喜んで貸す金融機関がいくらでもいる。次の年の100万円も借りられるだろう。しかし借金が年間所得と同じ1000万円まで積み上がったら、無担保ではもう誰も貸さない。

「米国没落論」が意味する悪夢のシナリオ

 「米国も同じだ。このまま対外ネット負債の増加が続けば、海外投資家がこれ以上はドル資産に投資したくない、貸したくないという限界にぶつかる。海外投資家がドル投資を減らせば、ドル相場の暴落と米国の株式・債券市場の暴落の悪循環が起こり、ドル帝国崩壊の日が到来するだろう。いや、それは既に始まっている」

 これが米国没落論者の描く典型的なシナリオである。

 しかし、万一そのような事態になれば、暴落するのは米国の資本市場だけではない。仮に海外投資家が数兆ドルの規模で資金を米国から引き揚げ、米国の株や債券が急落すると何が起こるだろうか。米国の投資家は海外投資を同じ規模だけ引き揚げることになるだろう。そうすることによってしか、米国を巡るマネーフローは均衡できないからだ。

 その結果、全世界的な資本市場の暴落が起こる。誰もが金融資産を投げ売って現金に殺到する信用恐慌が瞬時に世界中に広がるだろう。これが、各国間の投資が双方向で莫大に増え、どの国も深く相互依存関係にある現代のグローバル経済の現実である。

 私も悪夢的なリスクシナリオとしてそうした可能性がゼロだとは言わない。ドル本位制が未来永劫であるはずもない。しかし、そうした単純な議論は米国金融帝国が構造的に備えているしたたかなカラクリに気がついていない、あるいはそれを過小評価している。その点をご説明しよう。

巨額の対外資産が生み出す利益

米国の対外ネット資産・負債

 グラフをご覧いただきたい。経常収支赤字ほどに対外ネット負債が増えていないのは2007年だけではない。1980年を起点に(この時は対外ネット資産で3655億ドル)毎年の経常収支を累積させると、2007年時点ではネット負債残高は5兆6000億ドルになる(青い線)。ところが商務省発表のネット負債の実績値は2兆4000億ドルである。その差額はなんと3兆2000億ドル(約336兆円)である。富は無からは生まれない。3兆2000億ドルの富はどこから生まれたのか。米国金融帝国の搾取だろうか。

 実は魔法でも搾取でもない。米国は世界最大の対外負債を有するが、その対外資産も世界最大である(前述、2007年末で17兆6000億ドル)。資産からはリターンが生まれ、負債からはコストが生じる。リターンとコストは、配当や利息などのインカムと、資産・負債の価格変動によるキャピタルゲイン(益)とロス(損)に分かれる。配当や利息の受け払いは、所得収支として経常収支に含まれる。従って、商務省データを信じる限り、3兆2000億ドルの落差は資産・負債(ドルベース)のキャピタルゲインとして生まれたのだ。

コメント11

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万〜数百万円で売られている事例もある。

名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官