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減反政策は機能不全、コメを解放せよ!

食料危機は最大の好機――今こそ作れ、儲かる農業(1)

2008年7月8日(火)

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 バイオ燃料の生産、中国やインドなど新興国の食生活の変化など、穀物需要の増大が見込まれる。だが、穀物の単位面積当たり収量の伸びは鈍化し、農業適地も減りつつある。地球規模の食料問題。将来的に、食料需給が世界的に逼迫する可能性は否定できない。

 日本の食料自給率は主要先進国の中で最低の水準にある。1960年に79%だった日本の食料自給率は39%に低下した(カロリーベース)。世界の穀物輸出量は総生産量の約15%に過ぎない。この数字は、穀物生産国が輸出に回すのは自国で余った分ということを表している。

自給率向上は避けては通れない課題

 自国が食料不足に陥った時に穀物を輸出に回す国はない。世界規模で食料需給が逼迫した時に、日本が今まで通り、経済力を背景に食料を輸入し続けられるかどうか。しかも、そういった状況でも日本が外国から食料を輸入し続けることは、飢えた国々から食料を奪うことにもつながる。

 食料問題は既に日本にも深刻な影を落としている。穀物価格の高騰でパンや麺類をはじめ、多くの食料品の価格が実質的に値上がりし、家計を圧迫している。家畜の飼料となるトウモロコシの輸入価格はこの3年間で3倍も上昇。今後、食料品のさらなる値上げも否めない。

 農水省は自給率「50%」という目標を掲げる。どこまで数字を上げる必要があるのか、という点には議論の余地もあるとしても、いざという時に「飢え」の恐怖に怯えないためには自給率の向上は避けては通れない課題だろう。

 その時、主役となるはずの日本の農業は疲弊しきっている。減反政策の崩壊、担い手の高齢化、荒れる田畑、低い生産性――。経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)を進めるうえでも、農業分野の改革は常に叫ばれている。だが、その歩みは牛歩のごとく遅々として進まず、国内の農業には閉塞感が漂う。

日本農業には大きな発想の転換が必要

 もっとも、7月3日の「ニュースを斬る」でも書いたように、資源価格や穀物価格の高騰は国内の1次産業から見ればまたとない好機。農業が産業としての競争力を取り戻し、儲かる産業に変わる絶好のチャンスだろう。

 洞爺湖サミットでは地球温暖化対策に加えて、食料問題も主要な議題になっている。生産国の輸出規制や穀物価格の高騰――。世界の食料事情が不安定さを増す中、日本の農業はこういった視点を持ち、大きな発想の転換を図ることが求められているのではないか。

 このシリーズでは、この状況を逆手に取って挑戦する生産者のリポートをはじめ、識者への取材を通して日本の農業について様々な角度から考えていく。まずは、どん詰まりのコメ問題について。

「あなたたちが作るから価格が維持できない」

 背後に立山連峰を望む富山県・入善町。黒部の雪解け水に育まれた水田には、青々とした早苗が風に揺らいでいる。黒部川扇状地の中心部に位置する入善町は、富山県でも有数のコメどころだ。この町で稲作を営むアグリゴールド矢木の矢木龍一代表は、ため息混じりにこう語る。「分かっていたことだけど、やっぱりという感じだな」。

アグリゴールド矢木の矢木龍一代表

アグリゴールド矢木の矢木龍一代表

 7月3日に農水省が発表した2008年産米の生産調整見通し。当初は2007年産より約10万ヘクタールを減らす計画だったが、結局、2万9000ヘクタールの過剰作付けが発生した。調整目標が未達だったのは、福島県や千葉県、茨城県など17の県である。今年も、コメの生産調整は失敗した。矢木代表からため息が出るのは、この失敗こそ、コメ価格下落の元凶だと考えるからだ。

 もはや、コメの過剰作付けは常態化している。

 昨秋、矢木代表をはじめ全国のコメ農家に激震が走った。コメ価格センターの入札価格が大幅に下落したのだ。例えば、新潟コシヒカリ。2006年産の60キロ1万8331円だったが、2007年10月の月別平均価格は1万6772円と約9%の落ち込みを見せた。秋田あきたこまちも1万5441円から1万4400円に下落している。全国農業組合連合会(JA全農)が農家に渡すコメ代金の支払い方法を変更した影響もあるが、2007年産の過剰作付けは7万ヘクタール。生産調整の失敗が原因だった。

 「あなたたちが作るから価格が維持できない。自分の首を絞めていることになぜ気づかないのか」。生産調整が進まない現状に、矢木代表は苛立ちを隠せない。

 50ヘクタールの水田でコメ作りを営むアグリゴールド矢木は富山県でも有数の大規模コメ農家である。ただ、生産調整で休耕田にしている水田が10ヘクタール、転作大豆を栽培している耕地が40ヘクタールもある。全体で100ヘクタールのうち、コメを作っているのは50%だけだ。

 矢木代表をはじめ、富山県の生産者は律儀に生産調整を続けている。転作目標を達成できなかった年も一度もない。それなのに、千葉県や茨城県のコメ農家は生産調整を守らない。

 「向こうの人たちは車で1時間も走らないところに(東京や千葉などの)一大消費地があるわけでしょう。できたコメを軽トラックにぽこっと載せて売りにいける。でも、こっちはそうもいかないんだよ」(矢木代表)。首都圏に近いほど、自由に作り、自由に売れる。だから、作り続ける。

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「減反政策は機能不全、コメを解放せよ!」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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