東京の下町、荒川区で運送業を始めて80年近い老舗企業のサンウェイ。「ハトのマーク」でお馴染みの「引っ越し専門」の協同組合に加盟し、年間2300 件近くの引っ越し業務を請け負っている。全国で210ほどある引っ越し専門の加盟社の中で、常に10位以内に入る。この優良な成績を支えているのが、現場の作業員9人を含む正社員18人と、サンウェイが直接雇用するアルバイト10人、それに人材派遣大手のフルキャストから派遣される1日限りのスポット(日雇い)派遣労働者たちだ。
亡き父の後を継ぎ、30年の長きにわたり同社を引っ張ってきた井上久子社長(77歳)は、連日の「日雇い派遣、原則禁止へ」という新聞報道を見ては、ため息をつく。
「法人からの引っ越し依頼では、100人を超えるスタッフを臨時で募集することも年に10回はある。それだけの人数を自社で労務管理することなど不可能。このままだと会社を畳むしかない」
日雇いの派遣で来た労働者のうち、直接雇用を希望する者をアルバイトとして採用したり、そこから正社員に採用したりした人も少なくない。しかし、繁忙の波が大きい仕事であるがゆえに、基本的にはスポット派遣に頼らざるを得ないのが実情だ。
「格差是正」で与野党が動く

7月8日、与党は「日雇い派遣の原則禁止」などを盛り込んだ提言を舛添要一厚労相(写真右)に提出した
だが、日雇いや短期間派遣などを中心として、人材派遣業界に強烈な逆風が吹きすさんでいる。
業界大手のフルキャストと最大手のグッドウィル(東京都港区)が昨年来、禁止されている港湾・建設現場への派遣や、二重派遣をしたことなどで相次ぎ事業停止命令を受けた。グッドウィル・グループは7月末をメドに日雇い派遣事業からの撤退を発表している。
自民党と公明党の「新雇用対策に関するプロジェクトチーム」(座長・川崎二郎元厚生労働相)は7月8日、雇用が不安定な日雇い派遣の原則禁止など、労働者派遣制度見直しのための提言をまとめて、舛添要一厚労相に手渡した。8月下旬にも召集される臨時国会で労働者派遣法の改正案を提出する方針だ。川崎元厚労相は「ワーキングプアの温床となる日雇い派遣を廃止して、正規雇用を促すべきだ」と法改正の必要性を訴える。
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