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高齢化という逆境が農業の未来を切り開く

食料危機は最大の好機――今こそ作れ、儲かる農業(4)

2008年7月28日(月)

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 養豚業の盛んな宮崎県都城市。街の中心部から15分ほど車を飛ばすと、丘の上に大きなサイロが見えた。ここは、年間12万頭ほどの豚を生産する養豚業者、はざま牧場の農場である。30度まで気温が上昇した6月23日。豚舎の中では、5000頭の豚のほとんどが気持ちよさそうに眠っていた。

 国内でも指折りの大規模畜産農家、はざま牧場。だが、経営的には厳しい状況に置かれている。飼料代の高騰と病気による豚の大量死によって、昨年は15億円のコスト増に見舞われた。これは、はざま牧場に限った話ではない。多くの同業者が、エサ代の上昇や後継者難で事業の継続をあきらめている。

 飼料高や燃料高、担い手不足など逆風続きの畜産業。だが、間和輝社長(64歳)の表情に暗さはない。それどころか、「これからの農業にはチャンスがゴロゴロしている」とまで言う。逆境の中で前を見据える間社長。彼の取り組みを通して、畜産業や農業の今後の姿を考える。

おがくずを敷いた豚舎のうえで、豚が気持ちよさそうに寝ている

おがくずを敷いた豚舎のうえで、豚がと気持ちよさそうに寝ている。暑かったからだろう(写真:高口裕次郎、以下同)

 「いやあ、去年はほんとに厳しかった。会社が潰れると本気で思ったよ」。眼鏡の奥の目をまん丸に見開いた間和輝社長はこう言うと、ソファから身を乗り出した。畜産王国、宮崎県都城市で養豚業を営むはざま牧場。エサにきなこを混ぜたブランド豚、「きなこ豚」でその名を知られる。

 都城周辺にある30の農場で牛や豚、野菜の生産などを手がけている。飼育する豚は約12万頭、親牛を含めた牛の数は7500頭に達する。畑の総面積は約200ヘクタール。ここでコメやゴボウ、ホウレン草、サツマイモなども栽培する。2008年2月期の売上高は60億円超。国内でも有数の農業法人である。

 大規模複合農業を実践している間社長。その彼をして、倒産を覚悟させたのは、畜産業に吹きつける猛烈な逆風だった。

大規模化のメリットを吹き飛ばすほどの飼料高

微生物を混ぜたおがくずを敷くと、おがくずが尿を吸い込み、微生物が糞を分解するため、糞処理の手間やにおいの問題が解消する

微生物を混ぜたおがくずを敷くと、おがくずが尿を吸い込み、微生物が糞を分解するため、糞処理の手間やにおいの問題が解消する

 1つは、穀物価格の高騰に伴う飼料高だ。3~4年前、トン当たり1万3000円ほどだったエサ代。それが、6月下旬には5万円に急騰した。約4倍の上昇。牧場には10万頭を超える豚がいる。エサ代の値上がりによるコスト増は半端ではない。

 さらに、昨年は宮崎県で豚の病気が発生した。この病気で全体の25%に当たる3万頭が死んでしまった。通常の事故率が3~5%。その影響度合いが分かるだろう。「大きくなって死ぬ“エサ泥棒”もいますから」と間代表。豚の卸売価格が上昇したことや豚の死亡保険に加入していたこともあり、最終的に黒字は確保したが、エサ代と病気によるコスト増は15億円に上った。

 実は、養豚業は国内農業の中で大規模経営を実践する数少ない分野である。1970年に14頭だった1戸当たりの飼育頭数。それが、1990年には272頭、2006年には1233頭に増加した。これは、諸外国に比べてもかなり数が多い。

 2003年のデータだが、米国の816頭、英国の445頭、フランスの327頭に対して、日本は1031頭を数える。これは、オランダの1166頭、デンマークの1041頭と比べても遜色ない。自給率が低下している1つの要因ではあるが、輸入の配合飼料を活用し、効率的な生産をしているためだ。

 昨今の飼料高はこうした大規模化のメリットを吹き飛ばさんばかり。それでも、間社長はこう言って笑う。「ピンチはチャンス。早く激動の時代が来てほしい」。

コメント5件コメント/レビュー

畜産は農業の中でももっとも工業に近い分野であることを、こういう記事を読むたびに思い出します。畜産関係ではものすごい速度で淘汰が進んでおり、会社の数が一桁減っています。会社が淘汰されることは問題ないと思うのに、畜産や農業だと違和感を感じる人はまだ多いようですが、農業を会社にすることが、雇用を増やし、購買力をあげることが出来るのは間違いないのだと思います。(2008/08/05)

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「高齢化という逆境が農業の未来を切り開く」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

畜産は農業の中でももっとも工業に近い分野であることを、こういう記事を読むたびに思い出します。畜産関係ではものすごい速度で淘汰が進んでおり、会社の数が一桁減っています。会社が淘汰されることは問題ないと思うのに、畜産や農業だと違和感を感じる人はまだ多いようですが、農業を会社にすることが、雇用を増やし、購買力をあげることが出来るのは間違いないのだと思います。(2008/08/05)

記事では明確に触れていませんが、同社成功の理由は、規模の大きさや社長の気転だけでなく、養豚と野菜作りを同時に営んでいること、おがくずなど、木質系の資材が安く大量に入手できる産業構造の地域であったこと、余剰食材や食べ残しから飼料を作れる程度に、人口が密集している地域だったことなど、社内に留まらず地域全体で資源(廃棄物)を循環させられる環境にあった点も、大きいのではないかと思います。野菜、米、家畜、魚と、品目毎に分断された現代の農業・漁業政策には明るい展望が見出し難い現在の日本ですが、産品別ではなく、地域毎に、資源循環の観点から持続性の高い一次産業政策を考えると、多くの地域で展望が開けるのかも知れません。(2008/07/29)

経営センスの無い小規模個人事業者は淘汰され郊外にあるショッピングセンター的な農業経営が資本主義国ではお似合いと言う事なのでしょうか。まさに弱肉強食の世界が農業にも展開すると言う事なのでしょうか。薄半端なニッチな戦略も通じなくなるのでしょうか。パソコンが無くなっても生きて行けますが食料が無くなるのは困りますね。農業経営者同士の助け合いは良いですが、「やめる時はひとこと言ってね」は背筋が寒くなる思いです。日本農業は大規模化しか生き残りの道はないのでしょうか。(2008/07/29)

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