• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

小泉政治が残したベンチャー負の遺産

改良主義的経済政策への批判

  • 濱田 康行

バックナンバー

2008年7月29日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 今年に入り、新規上場企業が激減している。

 つい数年前まで小泉純一郎政権のもとで、民営化や規制緩和を進めて、市場原理を追求した。その中から、“ヒルズ族”と呼ばれるITベンチャー振興や大学発ベンチャー計画が生まれてもきた。

 私は小泉政権を「改革」「改良」旗印にする改良主義的政権と呼ぶ。政権が残したひとつの遺産がある。それは、ベンチャー企業を育てようという運動である。彼らは、光の方向をみて単純にベンチャー育成を志向した。頭の中にはシュムペーターの創造的破壊という言葉が浮かんでいたに違いない。

 ベンチャー志向は、既存の大企業体制への失望から生まれたという点で、陰が光を生んだ図式があてはまる。しかし、光のベンチャー運動にもちゃんと陰はある。それは一方の極に成功したベンチャーがあれば、他の極にそれに吸着しようとする一群が育つことである。ベンチャー運動もまた資本主義と同様に創造性と寄生性の相互運動として展開した。だからそれは時に輝かしく、そして時に陰鬱であった。この不可分のふたつの面を、一個の個人が見事に体現して見せてくれたものがライブドアの堀江貴文・元社長(ホリエモン)だろう。いまでは彼を追い落とした側が正義の表情を保っているが、果たして彼らは光の側にいるのだろうか。参院選挙に出馬したホリエモンの応援演説をしたのは時の総理だった。

 ベンチャーブームは、ついでに言えば、ホリエモン事件をきっかけに急速に萎んだ。もともと国策が支援した運動だけに、人為的なブームが何度かつくられた。しかし日本のベンチャー運動は第3次、あるいは第4次ブームを最後に日本という舞台から消え去ろうとしている。この反転の真の背景は、日本の景気回復が大企業の復活によってなされたという旧体制の自信である。大方は労働力を削減するというリストラでの復活だから胸を張れるものではないが、景気回復はホンモノで、もはやベンチャーなどというものに期待しなくてもよくなった。少なくとも政策の大筋を決める人々はそう考えたのだろう。しかし、寄生性は独占化した資本主義のもとで著しくなる。寄生している側がいかに活気を取り戻しても、それが資本主義の創造性を再生させることはない。

 ベンチャーキャピタル(VC)、つまりベンチャー企業に資金供給する機関も急速なベンチャー離れを起こしている。この傾向は、欧米で先行して生じ、いわゆるPE化(Private Equity=投資ファンド)として知られているものである。

 ベンチャーはそう簡単に発生しない。また育成に時間がかかる。そして一件当りの投資額は大きくない。しかし世界のVCファンドが集めている資金は先進国と石油産出国の金余りが反映して巨額である。日本のベンチャーキャピタルは1000億円のファンドをいくつも組成したが、これが一件一億円程度のベンチャー投資で消化できるはずがない。彼らは、PEという言葉を輸入し、彼らが実際に行っている様々な投資活動にこの言葉を冠したのである。

コメント6件コメント/レビュー

ベンチャーはそもそも成功を約束されているビジネスではない。当然、大きなリスクがあるから、当たればリターンも大きい。リスクが大きいという当然のことを、あいまいにしぼかしてブームに仕立てるから、リスクに気がついたときブームは沈むのだ。リスクがあるのだから、セーフティネットをしっかりと作っておくというような政策がほんらいの政治であったはずだが、そういう社会の足腰を鍛える政策はなく、役人の利権ばかりが増大したというのが現実だ。『NTT(旧電電公社)の独占を破る規制緩和』というが、この『規制緩和』で一番太ったのは、総務省(当時の郵政省)であることは言うまでもない。すでに民営化さえれてかなり経っているNTTにたいしても、いまだに独占を破るためと称して指導があり規制がされているではないか。NTTのライバル会社は、そういう規制や指導があることを前提としてビジネスをしており、規制緩和という言葉のイメージとはまったく逆の業界保護政策になっているのが現状である。NTTが東西ぶ分割されてしまい、ユーザとしては不便になったことの方が多い。(2008/07/29)

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ベンチャーはそもそも成功を約束されているビジネスではない。当然、大きなリスクがあるから、当たればリターンも大きい。リスクが大きいという当然のことを、あいまいにしぼかしてブームに仕立てるから、リスクに気がついたときブームは沈むのだ。リスクがあるのだから、セーフティネットをしっかりと作っておくというような政策がほんらいの政治であったはずだが、そういう社会の足腰を鍛える政策はなく、役人の利権ばかりが増大したというのが現実だ。『NTT(旧電電公社)の独占を破る規制緩和』というが、この『規制緩和』で一番太ったのは、総務省(当時の郵政省)であることは言うまでもない。すでに民営化さえれてかなり経っているNTTにたいしても、いまだに独占を破るためと称して指導があり規制がされているではないか。NTTのライバル会社は、そういう規制や指導があることを前提としてビジネスをしており、規制緩和という言葉のイメージとはまったく逆の業界保護政策になっているのが現状である。NTTが東西ぶ分割されてしまい、ユーザとしては不便になったことの方が多い。(2008/07/29)

小渕、森内閣の頃、単に就業率向上のためだけに、新規起業者に対する無審査貸し付け、従業員に対する、給与の一部負担等の政策を行った。しかし、これは、ずる賢い輩に、税金をだまし取られただけで終わった。終戦後ならいざ知らず、高度に発展した現在の社会において、そう簡単に、金をやるから起業しろと言っても無理である。アイデアがあれば、最近増えている、女性起業家のように、政府の金をあてにしなくても、立派に発展させています。それより、創造する人間を育てる教育に投資すべきである。人材がいなければ、ベンチャーは生まれない。(2008/07/29)

確かに、日本では巨大なベンチャー市場が誕生したとは言い難いでしょう。しかし、それは政府の側に「ハコモノ」的発想があったからではないでしょうか。規制を緩和し、VCを形成すればベンチャー企業が生まれるわけではありません。ベンチャー企業が成功するには柔軟な発想を持った人材と彼らの武器となる新技術などによる大企業ではできないサービスが必要です。日本の大学内には後者のサービスとなりうる新技術はたくさんあります。しかし、前者のような人材が不足しています。今の日本に本当に必要なのは人材です。人材さえ揃えばベンチャー企業は勃興するのではないでしょうか。(2008/07/29)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

組織を正しい方向に導き、 作り変えていける人が、優れたリーダーです。

ジェニー・ダロック 米ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院学長