「閉ざされた日本の空」

第15回 成田を凌いだタイの空港

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2008年8月8日(金)

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 激化する国際競争の中、本格的なオープンスカイに踏み切れない国土交通省は、経営難に喘ぐ地方空港を海外に開放することにより生き残りの活路を求めてきた。その航空交渉の相手国はもっぱらアジア諸国である。

 <空港容量に制限のある我が国の首都圏空港を除き、日タイ相互に乗り入れ地点及び便数制限を廃止し、航空自由化を実施した。我が国がこのような航空自由化に合意したのは韓国に次いで2カ国目となる>

 国交省のホームページによれば、昨年11月、チェンマイで行われた日本とタイは航空当局間協議に合意。昨今、日本企業が進出し、相互の往来が盛んなタイは、日本の航空政策にとってまさしく重要な国と言える。

 そんなタイの国際基幹空港が、スワンナプーム空港である。オープンは2006年9月28日。首都バンコクの中心部から東へ30キロほど離れたサムットプラーカー県ノーングハオという場所にある。バンコクから車で1時間ほどしかかからない。

 スワンナプームとはサンスクリット語で「黄金の土地」を意味する。これまでタイの国際基幹空港だったドンムアン空港に代わり、東南アジアのハブ空港を目指しているという。アジア最大規模の本格的国際ハブ空港を建設したタイの空港戦略は、日本より一歩先んじている、と評価する航空関係者も少なくない。オープンから2年近く経過したスワンナプーム空港の実情をレポートする。

成田の旅客数を上回る

 スワンナプーム空港の特徴は、まずその規模の大きさである。空港の敷地面積は3237ヘクタールと、実に成田空港の3倍に当たる。現在、4000メートルと3700メートルの2本の平行滑走路が整備され、そこから旅客・貨物機が飛び立つ。ターミナルビルの北側にそびえる世界一の高さ(132メートル)の円形ガラス張りコントロールタワーが、空港のランドマークになっている。24時間眠らない国際ハブ空港である。

 乗り継ぎが同じターミナルでスムーズにできるといったワンルーフ戦略の一環として建設された旅客ターミナルビルは、単一施設としては世界最大。地下2階、地上7階建ての建物だ。出発ロビーの中央にある巨大な黄金の仏像が、利用客を見送る。旅客用のボーディングブリッジ(搭乗棟)は、注目の総2階建て大型機A380(エアバス380)の2階部分に直接装着できるように設計されている。

スワンナプーム空港

スワンナプーム空港

 現在の施設は、年間4500万人が利用できるキャパシティーがある。開港1年目の利用状況は4184万人、と処理能力の93%に到達。オープン当初、巨大なターミナルビルのせいで「トイレの場所が分からない」「使い勝手が悪い」などといったクレームやトラブルが相次いだ割には、利用客は減っていない。利用客の数だけを比べたら、約3500万人(2006年度)の成田空港を凌いでいる。

 「空港運営にとって、東南アジア諸国は地理的に有利な位置にある。日本からタイでトランジットして欧州に向かう利用客も多い。そのため、東南アジアの空港は、どこもハブ空港を目指すと宣言してきました。スワンナプームも15年前の設計段階からそう申し上げてきました」

 「その中でもタイは地理的な優位性を発揮できます。よくシンガポールのチャンギ空港と比較されますが、例えば東アジアからバンコクを経由して欧州に向かう場合、こちらの方が1時間半以上時間を短縮できます。ただし、シンガポールとは競争するのではなく、お互い東南アジアの空港として共存していきます」

日本からも資金を調達

 タイ空港株式会社(AOT)のサラジット・サラポルチャイ副社長がそう話す。国際競争力を持った空港の規模という点では、日本より一歩も二歩も先を歩いているとも言えるが、さらなる拡張計画もあるという。

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著者プロフィール

森 功(もり・いさお)

ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、新潮社勤務を経て独立後、政治経済事件と幅広い取材・執筆活動を展開。代表作に『古賀誠研究』『日本道路公団の闇』『官邸のラスプーチン「飯島勲」研究』(いずれも「週刊新潮」)。『JAL大激震』(週刊文春)、近著『ヤメ検――司法に巣喰う生態系の研究』(「月刊現代」)が2008年第14回「雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。主な著書は、『黒い看護婦』(新潮社)、『殺人者はそこにいる』(新潮社共著)『サラリーマン政商 宮内義彦の光と影』(講談社)。



このコラムについて

閉ざされた日本の空

 世界の航空ビジネスが、大きく変わろうとしている。米国やEU(欧州連合)は、「オープンスカイ協定」の下、原則として空港や航空会社が自由に路線を設定できるようになった。アジアのハブを目指すシンガポールも米国や英国などとオープンスカイ協定を締結している。その一方、アジアの玄関口を自認する日本を見ると、成田、羽田のキャパシティ不足が続き、他国とオープンスカイ協定を結んでいない。日本の空港、そして航空会社は、ボーダレス化する航空ビジネスの中ではたして競争力を持てるのか。

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