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せっせと排出「北京の汗」

技術フロンティア (1)ユニホーム

2008年8月7日(木)

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サッカーなど屋外競技で使われるユニホームがより機能性を高めた。高温多湿の環境下で汗をかいても、それを素早く吸い、発散する。日本企業の技術の粋を集めた“頂点素材”が採用されている。

 北京五輪での屋外種目は暑さとの戦いになる。五輪が開催される8月の北京の平均最高気温は約30 度。暑さは選手の体力を奪い、本来の力を出し切れない原因となり得る。世界のトップアスリートが集まり、選手の力量に差が少ない五輪だからこそ、暑さにうまく対応できるか否かが、勝敗の分かれ道になりそうだ。

 様々な競技の中でも、世界中からスター選手が集まることから特に注目されているのがサッカーだ。サッカーは屋外で長時間プレーするため、暑さ対策が特に重要な競技の1つでもある。

「5つの機能」バランスよく

 23 歳以下で構成する日本代表も昨年アジア予選を勝ち抜き、北京五輪の出場権を得た。目標はメダルを獲得する3位以内。そんな日本代表の大きな味方になるのが、アディダスジャパンが開発した新ユニホームだ。

 1 月26 日に開催された親善試合の「日本代表対チリ代表戦」がお披露目の場となった。

 このユニホームは従来品より吸水性などを高めており、高温多湿で大量に汗をかくことに対応した“アジア仕様”になっている。五輪代表に限らず、2010 年のワールドカップのアジア予選を通してサッカーの日本代表はこのユニホームで戦う。

図:新素材5つの項目

 アディダスジャパンは、ユニホームに求められる主な機能を5つの項目に分類して、その向上のレベルを測っている。「軽量性」と「乾燥スピード」「吸水性」「べたつき解消性」「冷え感の解消度」の5 つだ。同社商品開発部の川端圭二グループマネージャーは、「今回のユニホームは、それぞれの機能をバランスよく向上させた」と胸を張る。

 ユニホームを手がけるメーカーはいずれも素材の軽量化や乾燥スピードの改良を進めており、この点では差別化が難しくなっている。ただ、各社とも従来品では、サッカーのように90 分間走り回るような競技において、発汗量の増大とともに吸水性が落ち、べたつき感が強くなる共通の課題を抱えていた。

 川端グループマネージャーは「選手によって違いはあるが、高温多湿の環境下でサッカーをすれば、30分間で300 ~ 500 cc の汗をかく」と指摘する。生地が汗を吸い切れなくなると濡れた生地が肌にまとわりつき、不快感を生む原因となる。

図:生地の構造

アディダスジャパンと東レが共同開発した新素材は、密度が異なる3種類の繊維で校正されている。毛細管現象により、汗は繊維の密度が高い内側から密度が低い外側へと素早く移動し、外気に触れて蒸発する。内側の繊維はループ状の糸を生地の面に対して垂直に立て、糸同士の隙間を広げた

 そこで、同社は東レと共同で新素材「ファブリックエックス」を開発した。同社の従来の素材に比べて、約2割の軽量化を図る一方、吸水性とべたつきを解消する度合いを約2 倍まで高めた。同社の資料によると、他社の素材も同様の改良を実現しているが、吸水性などでは他社製品を大きく上回る水準に仕上がったという。

 早速、新ユニホームに袖を通して練習試合で汗を流した北京五輪サッカー日本代表の長身ストライカー、平山相太選手は、「汗がたまらないからストレスや疲れがたまりにくい。このユニホームのおかげで他国より有利な条件で戦えるだろう」と期待を寄せる。

 同社はこうした機能を実現するために、生地の構造を抜本的に見直した。大きな違いは繊維の密度によって生地を3層に分けたことだ。

「毛細管現象」を活用

 水は、いわゆる毛細管現象によって繊維の密度が低いところから高いところに流れる。そこで、汗をかく内側の繊維の密度を低く、表面にいくほど密度が高くなるようにした。素材の性質をうまく使って、生地の中に汗を排出する“ミクロのポンプ”を仕込んだようなものだ。

 では、どのように繊維の密度を変えたのか。

 まず内側の表面は、糸をループ状にしてそれぞれの間にできるだけ空間を作る。従来製品も吸水性を高めるためにループ状にしていたが、生地面と水平方向に並んでいた。今回の製品は垂直方向にループを立てた。輪になった糸を起こして整然と並べたようなイメージだ。

 吸収された汗は素早く外側に染み出すため、外気に触れて乾燥しやすい。こうして肌のべたつき感を軽減した。 実験を見ると、その違いは一目瞭然だった。生地の内側に、色のついた液体をたらすと、従来品に比べてファブリックエックスの方が液体の染み出すスピードが速く、生地の表面に残った液体も素早くなくなった。

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「せっせと排出「北京の汗」」の著者

大西 孝弘

大西 孝弘(おおにし・たかひろ)

日経ビジネス記者

1976年横浜市生まれ。「日経エコロジー」「日経ビジネス」で自動車など製造業、ゴミ、資源、エネルギー関連を取材。2011年から日本経済新聞証券部で化学と通信業界を担当。2016年10月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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