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刷新!メダリスト「虎の穴」

技術フロンティア (3)新トレーニングセンター

2008年8月11日(月)

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五輪の開幕を前に今年1月、トップアスリートの専用練習場が完成した。練習中の映像をすぐに見られるようにしてトレーニングの効率化を図る。目には見えない力の入り方を映像化するなど、最先端の技術も盛り込んだ。

 鎧のような筋肉を身にまとった選手が空中で静止。吊り輪を握った腕だけで自らの体重を支え、足の指先までピンと伸ばす。間もなく、選手は輪を中心に体を回転させ始めた。勢いをつけてから吊り輪を離すと、空中で回転して床に着地した。

 北京五輪でメダルを目指す選手の一連の動作を見つめていたのはコーチだけではない。練習場の天井や壁に設置された8台のカメラも、選手の動きを捉えていた。撮影した映像は、練習場内に張り巡らされた無線LAN(構内情報通信網)を経由して、逐次サーバーに保存されていく。

お天気カメラがベース

 ここは東京都北区にある「ナショナルトレーニングセンター」。トップレベルの競技者の強化施設として、文部科学省が374 億円を投じて建設した。北京五輪の開幕まで200日となった今年1月21日にオープンした。

 施設の充実ぶりは特筆ものだ。屋内トレーニング施設は延べ床面積が2万9000m2の巨大な体育館で、内部には体操や柔道など10 競技の専用練習場が整備されている。柔道の練習場には1000 枚超の畳が敷いてあり、その広さは世界最大だ。

 屋外には陸上競技用のトラックやテニスコートもある。一度に250人以上が宿泊できる施設も完備されており、国際大会を前に選手や指導者が合宿を張れるようになっている。

 充実した練習場もさることながら、最大の特徴は施設内に設置された様々なハイテク機器だ。選手のトレーニングをより科学的に進めるため、スポーツ科学の中核研究機関である国立スポーツ科学センター(JISS)が全面的に協力する。

 JISS は日本人選手の国際競技力を向上させるため、文科省が2001 年に発足させた。120人を超える研究者や技術スタッフが所属している。選手やコーチが研究者とコミュニケーションが取りやすいように、ナショナルトレーニングセンターはJISS の隣に建設された。

 冒頭の撮影システムは、JISSスポーツ科学研究部の高松潤二先任研究員らが松下電器産業と協力して開発した。ベースとなったのはテレビ局の屋上などに設置されている遠隔操作カメラだ。「お天気カメラ」のように遠く離れた場所からでもカメラの向きを変え、特定の対象を拡大して撮影できる。

 開発で最も力を入れたのは、使い勝手の向上だった。テレビ局と違って、ナショナルトレーニングセンターには専門のオペレーターが常駐しているわけではない。そこで練習場に居ながらにして、リモコンを使ってカメラの向きやズームを簡単に操作できるようにした。選手やコーチは誰でも機械に詳しいわけではないので、簡単に使えるシステムを目指した。

トップ選手を最強の教材に

写真:選手が自宅や遠征先で、手軽に映像を見られる。

 「研究者はハイスペックなシステムを目指してしまいがちだが、求められていたのは自宅でも簡単に見られる映像だった」と高松研究員は振り返る。当初は、高解像度の映像を保存できる放送局並みのシステムを組む予定だったが、DVDなど民生用の記録媒体で保存できるようにした。選手が自宅や遠征先で、手軽に映像を見られるようにするためだ。

写真:練習場内でも簡単にカメラを操作できるように専用リモコンを開発。

練習場内でも簡単にカメラを操作できるように専用リモコンを開発。カメラの位置と録画ボタンを押せば撮影が始まり、再生もボタン一つでできる(写真:陶山勉 以下、同)

 技の正確さが問われる体操競技では、映像を繰り返し見ることが極めて重要となる。五輪出場選手を何人も輩出した徳洲会体操クラブの立花泰則監督は「選手が思い描いている動きと実際の動きを頭の中で重ね合わせられるよう、練習の映像を反復して見せている」と言う。

 力の入れ具合と自分の姿勢の相関性を客観的に把握するため、トップクラスの選手ほど練習の映像をよく見ているという。

 ナショナルトレーニングセンターではこれをボタン操作だけでできる。

 コーチが手元のリモコンを操ると、直前に撮った映像が練習場の大型パネルに瞬時に映し出される。体操は体の角度がわずかに変わっただけでも減点の対象になる。コーチは選手と同じ映像を見ながら、改善すべき点を指導できる。

 体操では選手に近寄った映像が重宝されるが、競技によってはもっと広範囲の映像が有用なこともある。バスケットボールなどの球技では、天井に設置したカメラでコート全体を俯瞰する映像を撮影する。こうした競技では自軍のフォーメーションを臨機応変に変える必要があるからで、全体を見渡せる映像を練習に取り入れる。

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「刷新!メダリスト「虎の穴」」の著者

坂田 亮太郎

坂田 亮太郎(さかた・りょうたろう)

日経ビジネス副編集長

東京工業大学大学院修了後、98年日経BP入社。「日経バイオテク」「日経ビジネス」を経て2009年から中国赴任。北京支局長、上海支局長を経て2014年4月から日経ビジネスに復帰

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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