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地方の雇用を守るか、建設会社の農業参入

食糧危機は最大の好機――今こそ作れ、儲かる農業(6)

2008年8月12日(火)

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 公共事業の大幅な減少によって、地方の建設会社は青息吐息の状態にある。活路を見いだすため、農業や介護事業に参入した業者も少なくない。2000年に農業生産法人「あぐり」を設立した愛媛県松山市の金亀建設(現・愛亀)もその1社だった。時代の荒波に飲み込まれ、将来に強い危機感を持った西山周社長は、社長に就任すると同時に農業への進出を決断した。

 それから8年。60アールの水田から始まったコメ作りは50ヘクタールまで拡大した。農地は農家から借り受けているもの。高齢化などによる担い手の不足で西山社長の元に集まった。最近では、近隣から出る食品残渣を集めた堆肥作りも始めている。化学合成農薬や化学肥料などを使わずにコメを作るためだ。安全で、生産者の顔が見えるあぐりのコメは、地元で飛ぶように売れている。

 雇用維持、農業再生、産業復興――。地方には課題が山積している。本業の舗装業に農業やリサイクル事業を組み合わせる愛亀の経営。東京から離れた松山の建設会社の試行錯誤に、地方だけでなく、日本が抱える問題を解決するヒントが隠されているのではないだろうか。

 「まあ、実際に“巻物”を見てもらう方が早いと思いますよ」。愛亀の西山周社長はこう言うと、A4版の紙を張り合わせたグルグル巻きの資料をテーブルいっぱいに広げた。この巻物は、グループ会社の人繰りの推移を表した棒グラフである。1年分のグラフをよく見ると、月によってグラフの棒線の色と形が大きく異なっているのが分かる。

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人繰りを表す棒グラフを見ると、水田の代掻きや田植えで忙しい5月から6月は、上に伸びた舗装作業の人員(ピンク色の棒線)よりも、下に伸びた農作業の人員(グレーの棒線)が増える

人繰りを表す棒グラフを見ると、水田の代掻きや田植えで忙しい5月から6月は、上に伸びた舗装作業の人員(ピンク色の棒線)の部分が、下に伸びた農作業の人員(グレーの棒線)にシフトする

 例えば、11~3月。棒線の長さはほぼ同じだが、横軸の「0」を基点に、ほとんどが上に伸びている。2月、3月は特にその傾向が顕著だ。ちなみに、棒線の色はピンクである。一方、5~10月は下に伸びたグレーの棒線が目立つ。

 色と上下の伸び方が月ごとに異る棒グラフ。上に伸びた棒線のピンク色の部分は舗装作業に必要な人員の数。下に伸びた棒線のグレーの部分は農作業に従事する人員数を示している。この巻物を見ると、愛亀の従業員は、11~3月は本業の舗装作業に就き、5~10月は農作業にシフトしていることが分かる。

コメ作りと舗装工事は親和性が高い

 松山市に本拠を置く愛亀は愛媛県を中心に舗装業を手がける地方建設会社である。売上高は36億円(2008年3月期)。無借金経営で自己資本比率は80%を超えている。この愛亀、実は50ヘクタールの水田でコメを作るコメ農家でもある。その生産量は年120トンに達する(2008年産の見込み)。

 なぜ舗装会社が農業なのか。西山社長の広げた巻物にその解がある。

 愛亀が農業に参入したのは2000年のことだ。1995年をピークに公共事業費は減少の一途をたどる。舗装が本業の愛亀にとって、公共事業の縮小は死活問題である。工事が減れば、舗装の技術を持つ従業員の雇用を維持できない。

 建設会社の強さの源泉は高い技能を持つ従業員にある。淘汰の時代を生き残り、競争力を高めるには、技能を持つ人々を自社に抱えておく必要がある。「技能者を温存するにはどうすればよいか」。2000年に社長を継いだ西山氏は、農業生産法人「あぐり」の設立を決断した。

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愛亀の西山周社長。後ろはあぐりがコメを作っている水田

愛亀の西山周社長。後ろはあぐりがコメを作っている水田

 西山社長がコメに目をつけたのにはわけがあった。それは、舗装作業と農作業の繁閑がうまくずれるためだ。

 舗装の仕事は国や地方自治体が発注する公共事業が多い。国や自治体は4月から新年度が始まるが、実際の工事は秋から3月にかけてがほとんどだ。それに対してコメ作り。水田の代掻きは5月上旬、田植えは5月下旬、稲刈りは9月末である。舗装工事とコメ作りは作業時期が重ならない。工事がない時期は農作業を、農閑期には工事にと、従業員を効率的に配置できる。

 もちろん、繁閑のずれだけが理由ではない。農業には経営という発想が希薄。そこに、建設現場で培ったノウハウを持ち込めば、競争力のあるコメを作ることができると考えたからだ。

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「地方の雇用を守るか、建設会社の農業参入」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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