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流通改革で手取りが倍に~直売所が描く農業の未来

食糧危機は最大の好機――今こそ作れ、儲かる農業(7)

2008年8月19日(火)

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 和歌山のミカン農家が始めた直売所が注目を集めている。それは「めっけもん広場」。産地の多くにある買い出し型の直売所とは異なり、都市部のスーパーに直接出店する出張型の直売所だ。「農家が儲かる直売所」として地元でも評判の存在になりつつある。

 中間流通をなくした直販が儲かる、というのは誰もが知っていること。とはいえ、めっけもん広場に参加する農家の手取りは、農協などを通した市場流通に比べて倍も違う。それだけ、既存の流通システムには余計なコストがかかっているということだろう。

 農協を中心とした出荷団体、卸売市場、仲卸、そしてスーパー。日本の農産物流通には数多くのプレイヤーが存在している。今日、小売りの店頭に多種多様な農作物が並ぶのはこうした仕組みが機能しているからだ。もっとも、中間流通のプレイヤーが多ければ多いほど高コスト構造になる。そのしわ寄せが生産者の手取りにいっている面は否めない。

 「儲かる農業」の実現には流通改革が不可欠――。めっけもん広場に集う生産者の笑顔を見ていると、そのことを改めて痛感する。農家の手取りが倍になる直売所。その中身を見てみよう。

 農業でカネを稼ぐ。それを当たり前に実現している女性が和歌山にいた。

 山の斜面をミカンの木が覆う紀の川市。果樹園に囲まれたハウスでトマトを栽培している山下栄子さんは、相好を崩してこう言った。

 「今はすごくおカネを取れるようになったんよ。ほいだら、農業が楽しくてね。元気が出てくるんよ」

 ミカン農家だった山下さん。5年ほど前から1000坪のハウスで「ロケット」と呼ばれるミニトマトを栽培している。堆肥を使い土作りを丹精しているからだろう。山下さんが作るロケットは味の良さでは折り紙付き。地元のスーパーや大阪市内の百貨店の店頭に、「山下栄子さんのトマト」というポップ付きで並ぶほどだ。

 ハウスに隣接した作業小屋。話し始めた山下さんのお国言葉は止まらない。

 「私ね、パートさんを2人、使うてるんやで。2人に来てもらって月30万円、払うてるんやで。まわりのみんなパート代なんてよう出すなぁって笑うけど、それでも結構、儲かってます。毎日、晩に豪勢にしているさかい。みんなには言えんけど」

写真:自信作のミニトマト「ロケット」を手にする山下栄子さん

自信作のミニトマト「ロケット」を手にする山下栄子さん。儲かる農業の楽しさを若い人と分かち合いたいとも語ってくれた

 「農協に出してたらね、ほんまにね、後引いたら何も残らないんよ。私ほんまにね、1人の子供を大学に出すのに、のつこつ(大変な思い)をしましたよ。ほいでもね、“めっけ”に出してから、今は(手取りが)倍取れます。はっきり言って、(卸売)市場の倍!」

 いかに農業が儲かるか――。取材で訪れた6月末、山下さんは生き生きとした口ぶりで語ってくれた。そんなニコニコ笑顔の山下さんが口にした“めっけ”。これは、紀の川市や和歌山市にある直売所、「めっけもん広場」のことである。

スーパーに直売所が出店する“出張型”

 農家が農産物を直接販売する直売所。新鮮な野菜などを安く買いたい消費者に支持されており、全国に1万3000カ所ほどあると言われている。こうした多くの直売所とめっけもん広場が違うところは、スーパーの中にあるインショップ型の直売所という点だ。

 「“買い出し型”でなく“出張型”の直売所ですわ。こういうの、あまりないのと違いますか」。めっけもん広場を立ち上げた児玉典男氏は言う。実際に、スーパーの売り場を見ると、青果売り場が丸ごと、めっけもん広場になっていた。

 実は、めっけもん広場は2つある。1つは、児玉氏が作ったインショップ型のめっけもん広場。そして、もう1つは、紀の川市にあるJA紀の里が運営するめっけもん広場である。後者は2000年11月にJA紀の里が作った大型直売所だ。2007年度の売り上げは約25億円。全国でも屈指の規模を誇る。

 2つに分かれているのは、めっけもん広場の商標を児玉氏が持っているためだ。

 JA紀の里のめっけもん広場が開業した直後、第三者が「めっけもん広場」を商標登録した。「地元に定着している直売所の名前を第三者に使われるのはどうか」。JA紀の里の組合員だった児玉氏はこう考えて商標を購入。その後、JA紀の里とは別に、インショップ型のめっけもん広場を立ち上げた。

写真:紀ノ川市で「観音山フルーツガーデン」を経営する児玉典男さん

児玉典男さんは紀の川市で「観音山フルーツガーデン」を経営する大規模ミカン農家。手取りが増える農業の仕組みを作るために奔走する

 児玉氏が始めためっけもん広場は、今のところ、和歌山市の食品スーパー「ゴトウ本店」の2店舗だけ。ただ、9月中にゴトウ本店の別の店舗で3つ目が開業する。さらに、1年以内に和歌山市内にあるゴトウ本店の全店舗にめっけもん広場を導入する見込みだ。

 「産地に直売所を作ると、建物を建てたり、道を広くしたりせなアカン。それに、今はガソリンが高いし、フードマイレージとか言うでしょ。出張型ならトラック1台で済むからね。やっぱりね、お客さんの近くに農業者が寄っていく。これからは、それが一番大事なことと思うんですわ」

 この児玉氏の言葉を証明するように、今では近隣の農家がこぞって野菜や果物などを持ち込む。農協や卸売市場ではなく、都会のスーパーにあるめっけもん広場に出荷するのはどうしてか。理由の1つは、農家の手取りが高くなるためだ。

コメント20件コメント/レビュー

直売所は儲かりますね~実際に。そこに出しにいくガソリン代の高騰程度なんか屁じゃないですよ。野菜って一個がそんなに値段が高いものではないだけに、一個の手取りが20円なのか、100円なのかはすごい差が出てきますからね。実際我が家も自家用に作っている米を親類に売るようになったら、収入が倍になったので、新しく草刈機を購入しましたよ。金額としては微々たるものですけれどね。(2008/08/21)

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「流通改革で手取りが倍に~直売所が描く農業の未来」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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直売所は儲かりますね~実際に。そこに出しにいくガソリン代の高騰程度なんか屁じゃないですよ。野菜って一個がそんなに値段が高いものではないだけに、一個の手取りが20円なのか、100円なのかはすごい差が出てきますからね。実際我が家も自家用に作っている米を親類に売るようになったら、収入が倍になったので、新しく草刈機を購入しましたよ。金額としては微々たるものですけれどね。(2008/08/21)

全国的に見て農業で成功している地域で一夏住み込みのバイトをした経験の私ですが、NBonlineで紹介されているような農家を見て驚きます。私がいた村では、アルバイトさんを虐めて帰してしまうご主人とか(そのせいで生産性が下がりみんなが苦労する)、ある家のワガママのためにその会社に属する家全員の休みがなくなってしまったという、他の業界ではあり得ないこともありました。経営感覚というか、社会人としての常識も必要でしょうね。もちろん、社会人としての常識があったり優秀な農家の方も当然いるでしょうが。(2008/08/20)

農協のマージンの中身は集かのための運送会社の運賃と共同選果場の運営料と過剰なまでのパッケージの料金と小売価格の2パーセント程度の農協マージンですから商社の22パーセントのマージンから考えて高くはない。問題は現在の市場流通マージンや過剰なパッケージさらに厳重な規格により捨てられる生産物や市場価格という生産者の生産原価を無視し買いたたくためのシステムに有るのではないかと思う、それらの問題を超えるシステムが直売だけれどもいかんせん大量流通には向いていない。新たなシステムを構築してゆくヒントをこのシリーズに期待しています。(2008/08/20)

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