「ニュースを斬る」

小泉改革が“ぶっ壊した”強靭な首相

御厨 貴・東京大学教授が語る、現代日本政治の危機

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2008年9月4日(木)

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 突然の辞任を決めた福田康夫首相。安倍晋三前首相に続く政権投げ出しの遠因を探ると、1990年代後半以降に起きた自民党の変質がある。後継者育成システムを兼ねていた派閥が崩壊した後、代わりの人材育成システムが生まれなかった。

 現代日本政治に詳しい東京大学の御厨貴教授に、福田首相辞任の背景と今後の日本の政治の課題について聞いた。

(聞き手は日経ビジネス オンライン 篠原 匡)


御厨 貴(みくりや・たかし)氏
1951年東京都生まれ。1975年東京大学法学部卒業、東京都立大法学部教授、政策研究大学院大学教授を経て、2002年に東京大学先端科学技術研究センター教授に。政治家や官僚の「オーラルヒストリー」を主要な研究テーマとする

(写真・村田 和聡)

 ―― 今回の福田康夫首相の辞任をどう思いましたか。

 御厨 総理大臣の地位というのか、かくも軽くなったか、というのが正直な感想です。しかも、途中で投げ出したのは彼で2人目。1年前には、安倍晋三前総理が同じように突然、辞任した。この2人に共通しているのは、どちらも内閣改造直後の辞任だったこと。最も悪いタイミングで辞めてしまいました。

 仮にも総理大臣という権力の座にあった人でしょう。権力の重さや責任を理解していれば、普通こういうことはやりません。そうでしょう。会社の社長が役員を選任した後、誰にも相談せずに辞めるということが考えられますか。

 明らかな敵前逃亡。これは、国民にとてつもない不信を与えます。そういうことすら考えない人が、日本の総理大臣をしていたのか。日本政治の崩壊。行き着くところまできた、と感じています。

 ―― 福田首相は臨時国会のスケジュールなどを考えて、このタイミングを選んだようですが。

 御厨 勝手に辞めるというのは、やはり勝手な行為でね。辞任の時の会見も本当にいただけなかった。全部を民主党の、ねじれ国会のせいにしていたでしょう。衆参のねじれは、どの総理大臣にも解決不能な難題ですよ。

 でも、それをどうこう言うのは愚痴であり、その中で物事を処理していくのが総理の仕事でしょう。総理とは何であるか、その自覚すらなかったんでしょう。そういう意味でも本当に驚いた。

おのれの非力を自覚し続けた1年

 ―― 福田政権とは何だったのでしょう。

 御厨 福田さんには申し訳ありませんが、ねじれ国会に翻弄されて何もできないという、おのれの非力を自覚し続けた1年だったのではないでしょうか。実際に、内政では見るべきものは何もない。4〜5月に道路特定財源の一般財源化をぶち上げましたが、案の定というか、予算策定まで総理の座にとどまることはできなかった。

 外交面は日中関係の改善や先進8カ国首脳会議(サミット)の開催など目立ったイベントがありました。ただ、福田さんが何か積極的に動いて実現した、というわけではありません。防衛省改革にしても、今回の辞任で改革案はお蔵入りでしょう。

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著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。



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