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日本の首相は、辞めてからが華

福田首相が連なる「ご印籠」システム

2008年9月5日(金)

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 辞めた福田さんは、おそろしくすっきりした顔をしている。辞任表明からまだ2日しかたっていないのに。

 実際、就任直後の笑顔より辞任直後の笑顔の方が数段さわやかだったりする。びっくりだ。

 こういうのは、アリなんだろうか。

 つまり、日本国の首相が、就任より辞任の方が嬉しいようなタイプの位階であるということを、あるいは、総理大臣がやめてすっきりするような汚れ仕事であるということを、福田さんは、そのさわやかな笑顔を通して語ろうとしているわけなのだが、こういうのは、子供たちの職業観に悪影響を与えないものなのだろうか。

「学級委員長職は、週交替で全員が歴任する方向で調整すべきだと思います」
「なるほど、その方が内申書の評点の上で不公平が出ないというわけだな」
「っていうか、大人になってから、《昔は学級委員長をやってたんだぞ》とか、子供に話せるでしょ。一応」

 と、こういう学級委員会はイヤだぞ。

 首相を退いた人間は、本来なら慙愧憤懣遺憾痛恨といった感じの、画数の多い漢字で表現されるタイプの重苦しい雰囲気を漂わせていて然るべきだ。だって、権力の頂点から滑り落ちたわけなんだから。だろ?

 が、福田さんは違う。夏休み初日の小学生みたいな笑顔を浮かべている。ヤッホーな感じ。ひたすらにうふふっぽい嬉しさをその含む笑いのうちに表現している。いや、もしかして、官房長官時代はメディアに対する冷笑と受け止められ、首相時代は無力感の表れとしての投げやりな薄ら笑いに見えていた同じ含み笑いが、職を辞した今になって見ると嬉しそうに見えるという、それだけの話なのかもしれない。でも、それにしても、いいトシをした爺さんが、あんなにあからさまに安心立命して良いものなのか?

 まあ、気持ちはわからないでもない。

 みのだとかフルタチだとかいった連中に、やることなすことのいちいちを批評される生活は、さぞや鬱陶しかったのであろうからして。

 オレだって、なにかの間違いで総理大臣をやることになったら3日で戒厳令を発令すると思う。だって、いくらなんでもワイドショーの連中のものの言い方は、首相に対して失礼過ぎるから。オレが首相だったら、まず何よりみのとフルタチをしょっ引く。ついでに、ミヤネとかいうヤツも。で、彼らには雁首を揃えて暗い所に入って貰う。営倉行き。それをしなかった福田さんはまだマシだったのかもしれない。

 いずれにしても、いま、福田さんの眼前には、元首相としての悠々自適の生活が広がっている。素晴らしいよね。正直うらやましい。首相なんか死んでもやりたくないけど、元首相っていうのにはなってみたい。っていうか、うちの国では、「元○○」という肩書きが一番おいしいことになっているのかもしれないな。水戸黄門の昔から。

「この印籠が目に入らぬか。こちらにおわしますのは、先の副将軍……」

 というわけで、キモは「先の副将軍」というところにある。つまり、組織を離れ職責と無縁である「先の副将軍」は、責任やしきたりからは自由なのである。が、そのくせ「権威」は失っていない。ディグニティー。そう。ニポンの国でモノを言うのは、刀でも学問でもなくて、紋章つきの印籠だったりするのだね。なにしろ国民が揃いも揃ってチキンだから。って言い過ぎでした。国民の八割が臆病者。これぐらいで調整。

 とにかく、平和な世の中では、実際の権力(暴力装置としての物理的な権力)を持っていなくても、権威を振り回すだけで、快適なボスライフを送ることができる。

 とすれば、誰が権力者なんかやる?
 元権力者で十分じゃないか。
 つまり、問題は、福田さんのパーソナリティーとは別のところにあるのかもしれない。
 問題は、この国のシステムが「権力」を「印籠」に押し込める形で出来上がっているということの中にある。

 自民党の派閥均衡化政策は、ある時期から、権力者ををよってたかって無力化するシステムとして機能していた。

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「日本の首相は、辞めてからが華」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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