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いまさら「日の丸開発」は無意味--「国際資源戦争」の実相を読む

対談 谷口正次 VS 黒木 亮(後編)

  • 谷口 正次,黒木 亮

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2008年9月22日(月)

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鉱山技術者として世界のメタル開発現場を踏破してきた資源・環境ジャーナリスト谷口正次氏と、金融のプロとしての経験をもとに石油・ガス田開発の最前線を描いた小説『エネルギー』の著者・黒木亮氏に、いま世界各地で繰り広げられている「国際資源戦争」の虚々実々について本音で語ってもらった。(編集部)

編集部:中国や欧米メジャーによる資源囲い込みが激化するなかで、日本としてはどのような戦略で資源開発に望む必要があるでしょうか。

谷口:資源政策を考えるうえでは、まず、資源が「ある」ということと「とれる」ということは違うという認識が重要です。現在、世界中のメタル資源の40%は南米やアフリカなどの途上国に眠っているといわれていますが、これらの地域は総じて豊かな生態系を持っているため、環境保護の制約条件が年々厳しくなっています。以前なら5年程度で掘ることができたものが、10年や20年もかかってしまう。

谷口正次(たにぐち まさつぐ) 資源・環境ジャーナリスト。1960年九州工業大学鉱山工学科卒、小野田セメントに入社。同社資源事業部長などを経て、1994年に秩父小野田常務、1996年専務、1998年に太平洋セメント専務。2001年に屋久島電工社長(太平洋セメント専務取締役兼務)2004年6月国連大学ゼロエミッションフォーラム理事(産業界ネットワーク代表)。主な著書に「メタル・ウォーズ」(東洋経済新報社)、「入門・資源危機―国益と地球益のジレンマ」(新評論)など。

谷口正次(たにぐち まさつぐ) 資源・環境ジャーナリスト。1960年九州工業大学鉱山工学科卒、小野田セメントに入社。同社資源事業部長などを経て、1994年に秩父小野田常務、1996年専務、1998年に太平洋セメント専務。2001年に屋久島電工社長(太平洋セメント専務取締役兼務)2004年6月国連大学ゼロエミッションフォーラム理事(産業界ネットワーク代表)。主な著書に「メタル・ウォーズ」(東洋経済新報社)、「入門・資源危機―国益と地球益のジレンマ」(新評論)など。

 資源メジャーが深海低メタル資源に注目しているのも、制約条件がそれほど厳しくないという事情があるからです。資源の供給量を考えるうえでは、実際に「とれる」ことができる量を把握しておくことが重要です。場合によっては、「ない」といわれていたものが近くで見つかることもあります。たとえば、埋蔵量の100%が中国にあるといわれていたディスプロジュームが、四国や北海道にも存在するという調査結果が出ています。

 また、たとえ入手できなくても、代替原料で都合がつく場合もあります。ですから、世間が騒ぐほど、メタル資源すべてが枯渇しているわけではなくて、メタルの種類によって深刻さが全然違うのです。枯渇するから心配というのと、偏在しているから心配というのと、地政学的に心配というのと、いろいろあるのです。

黒木:エネルギーやメタルの価格が高騰するなかで、国策として油田開発や鉱山開発に取り組むべきという主張が声高に唱えられるようになりました。けれども、わたしが資源ビジネスの関係者に取材した限りでは、いまさら日の丸を掲げて海外の権益獲得に動いたところで、それほど意味がないという意見が大勢を占めています。

黒木亮(くろき りょう) 1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社に23年余り勤務し、国際協調融資、プロジェクト・ファイナンス、航空機ファイナンス、貿易金融など数多くの案件を手がける。2008年9月、国際資源戦争の最前線を描いた大河小説「エネルギー」を刊行。他に「トップ・レフト」「巨大投資銀行」「アジアの隼」「青い蜃気楼~小説エンロン」「カラ売り屋」「貸し込み」などがある。英国在住。(写真:稲垣純也 以下同)

黒木亮(くろき りょう) 1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社に23年余り勤務し、国際協調融資、プロジェクト・ファイナンス、航空機ファイナンス、貿易金融など数多くの案件を手がける。2008年9月、国際資源戦争の最前線を描いた大河小説「エネルギー」を刊行。他に「トップ・レフト」「巨大投資銀行」「アジアの隼」「青い蜃気楼~小説エンロン」「カラ売り屋」「貸し込み」などがある。英国在住。(写真:稲垣純也 以下同)

 というのも、エネルギーやメタルのコモディティ化が進んだ現在では、膨大なリスクを負ってまで自ら開発に参加するよりも、多少の高値でもマーケットから調達するほうが、結果的にはコストが安く済むと考えられるからです。また、たとえ生産物の何パーセントかを受け取るといった権益を獲得できたとしても、戦争や輸送ルートの途絶といった非常事態になれば、約束した割合の資源を現実に手に入れられるはずもなく、絵に描いた餅にすぎません。イランにあるアザデガン油田を有事の際の日の丸油田などというのは、ブラック・ジョークです。

谷口:わたしも同感です。すでに世界中のめぼしい開発地は資源メジャーや中国などに押さえられているわけですから、いまさらノコノコ出て行っても得られるものはいくらもないでしょう。ですから、日本としては「日の丸開発」に無駄に税金を投入するのではなく、別の戦略を考えるべきです。

黒木:消費すればなくなってしまう石油やガスとは違って、メタルの場合はリサイクルが可能です。いわゆる“都市鉱山"と呼ばれる廃棄物から資源を回収・再生する技術がかなり高まってきているようですね。

谷口:すでに金、銀、銅、ニッケルなど十数種類の金属については回収と再生の技術が実用レベルに達しています。ただし、技術的に可能だといっても、現実の回収システムがうまく機能しないと、効率的にリサイクルすることはできません。

 たとえば日本では、廃棄物として銅が10万トン程度捨てられていますが、そのうち回収できるのが4万トンで、残りの6万トンは中国などの外国へ流れてしまうか捨てられたままです。銅の地金6万トンといえば、同和鉱業の小坂鉱山の年間産出量に匹敵する量で、1000万トンもの鉱石が必要になります。1000万トンの鉱石を得るには、鉱石でない土も1500万トン掘らなければなりませんから、それだけで相当な自然破壊につながります。

 ですから、資源の確保や環境保護を考えるなら、国内の資源を何としてでも回収して、資源を有効利用することが重要です。まず自国の資源を囲い込むのが先決なのです。

日本の資源政策は私利私欲だけで成り立っている

谷口:わたしは、燃料費や原材料費が上がるのならば、それを転嫁しても十分に利益が価格で、製品を売ればいいと思います。これまで日本の製造企業は、あまりに安い価格で製品を輸出してきました。製造原価に適正利潤を上乗せするという時代遅れの考え方にとらわれてきたために、品質は世界最高といわれているにもかかわらず、その価値に見合う価格をつけて売るという発想ができなかった。

 けれども、いまや資源獲得競争で劣勢に立たされ、高い原料費や燃料費を前提にしなければならない状況にあるのですから、自らの付加価値をいかに価格に反映させるかというプライシングの戦略を真剣に考えなければ、国としても企業としても立ちゆかなくなるのではないかと思います。

コメント2件コメント/レビュー

銅管の製造販売に携わっている立場から非常に強い関心を持って読ませていただきました。給水、給湯用配管材として数年前までは大量に使われていましたが、最近の原料高によって数量が激減しておりこの需要分野での存続を危惧する状況です。日本ではレアメタルに関する国家による資源備蓄政策は実施されていますが銅に関しては無策な状況です。中国では銅スクラップには輸出関税を課して囲い込みを政策としています。銅は言うまでもなく電子部品産業には必須金属です。もし、給水、給湯用に銅管の需要が復活できれば何十年か先にはリサイクルの優等生として資源に生まれ変わります。いわゆる都市鉱山の発想によって資源備蓄効果が得られるわけですが、政府がこのような構想を展開してくれればと誠に手前勝手な思いを抱く次第です。(2008/09/22)

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銅管の製造販売に携わっている立場から非常に強い関心を持って読ませていただきました。給水、給湯用配管材として数年前までは大量に使われていましたが、最近の原料高によって数量が激減しておりこの需要分野での存続を危惧する状況です。日本ではレアメタルに関する国家による資源備蓄政策は実施されていますが銅に関しては無策な状況です。中国では銅スクラップには輸出関税を課して囲い込みを政策としています。銅は言うまでもなく電子部品産業には必須金属です。もし、給水、給湯用に銅管の需要が復活できれば何十年か先にはリサイクルの優等生として資源に生まれ変わります。いわゆる都市鉱山の発想によって資源備蓄効果が得られるわけですが、政府がこのような構想を展開してくれればと誠に手前勝手な思いを抱く次第です。(2008/09/22)

レアメタルの重要性が叫ばれて久しいのに一向に都市鉱山よりの回収が進まないのは「資源回収有料システム」にかかっている。無料にすれば不要PCなどが一斉に市場にあふれる事になると思うが、現状では引き取りに数千円もの手数料を取られる為に結局無料引き取りを謳っている「廃棄物引き取り業者」に出してしまい、結果として海外に流れていく。海外向けで「無料引き取り」が成立する以上国内も同様の対処をすぐにでもしないと結局「都市鉱山」なんてすべて「海外資産」になってしまう。(2008/09/22)

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