様々なメディアの注目を浴びている石井選手ですが、彼が厳しい肉体トレーニングに加え、メンタル面の鍛錬を積んでいることは、あまり知られていません。
石井慧選手のメンタルコーチを務めたピークパフォーマンス代表の平本あきお氏。
皆さんも、想像してみてください。日本国民の期待を一身に受けながら、強豪国の選手を相手に5分間全力で戦わなければならない心境を。一瞬一瞬の動作に、会場の観客のみならず、日本国民のほぼすべての視線が注がれる緊張感。日本のお家芸として金メダルが義務づけられている競技ですから、壮絶なプレッシャーは想像に難くありません。
こうした極限状態で結果を出すためには、「常に自分の柔道を貫ける強い自分」が必要です。そのためには、肉体と同時にメンタルを鍛えることが不可欠なんですね。
現在の柔道界では、急速にグローバル化が進んでいます。世界と戦う上では日本の旧来の価値観では必ずしも勝利が保証されない時代に入っています。例えば、少し前なら、全日本選手権でそこそこの実績を残せば、「こいつは、メダルは取れるだろう」とか、「金メダルは間違いない」などといったことが、大体予想できていました。
伝統的な柔道だけをやっていれば勝てる時代は終わった
ところが、北京オリンピックでは予想外のことが次々と起きました。金メダル間違いなし、といわれた選手が次々と敗れ、敗者復活戦にすら到達できない選手も少なくありませんでした。もちろん、選手は皆、死ぬほど練習して試合に臨んでいます。だけど、海外選手の繰り出す技に対応できない場面が多々ありました。
これは、ある1つの事実を示していると思います。それは、もはや旧来の日本柔道の常識が通用しなくなりつつあることです。例えば柔道には背中をつかんだらいけない、というルールはないですけど、日本柔道の常識では暗黙のルールとして誰もやりません。両足をつかんで持ち上げる行為もそうですね。日本柔道では、誰もやらない。だけど、世界ではそれを得意技としてかける選手が確かに存在するんです。
裏を返せば、それだけ柔道はグローバル化が進んでいるということなんです。柔道の戦い方が変化している中では、ただ伝統的な柔道を型通りに練習しているだけでは、必ずしも結果が保証されない時代になってしまっているんですね。何が正しい戦い方なのか、旧来の常識を受身で教わっていれば良いという時代ではなくなりつつあるんです。
これは、ビジネスの世界でも同じことが言えると思います。昔なら、大企業に入社して上司の言う通り、ミスなく仕事をこなしていれば、無難に昇進して生活も保証されていました。マーケットもゆっくりと流れていたし、会社がひっくり返るような競争相手もいませんでした。
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