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流動性の蒸発は、なぜ起きるのか

危機に学ばぬグローバル市場

  • 可児 滋

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2008年9月17日(水)

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 チャプターイレブン(連邦破産法11条)の適用を申請したリーマン・ブラザーズバンク・オブ・アメリカ(BOA)による救済合併が決まったメリルリンチ。全米3位と4位の証券会社の経営破綻は、ベアー・スターンズ、米政府支援機関(GSE)と続いたサブプライム危機の第3幕が開いたことを強く印象づける。

 無謀なオプション売りをきっかけに破綻したベアリング、仕組み債投資が財政破綻につながった米国カリフォルニア州オレンジ郡、世界中の金融・証券界を震撼させたLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)危機、デリバティブを駆使した揚げ句に倒産したエンロン事件 ―― 。

 高度な金融技術や複雑な金融商品に端を発した金融危機は数年周期で、悪性ウイルスのように耐性を増しながら世界を襲ってきた。デリバティブに次ぐ「第2の金融技術」と言われる証券化も過去の例に違わず、金融危機の一因となっている。

 名門証券会社2社を破綻に追い込んだサブプライム渦。金融デリバティブに起因した過去の巨額損失事件を分析した『デリバティブの落とし穴』(日本経済新聞社)を2004年に上梓した可児滋・横浜商科大学教授に、今回の“落とし穴”を聞いた。

(聞き手は日経ビジネス オンライン 篠原 匡)

 ―― 可児教授は著書『デリバティブの落とし穴』で過去の巨額損失事件を取り上げ、失敗の原因や取引のポイントを分析されています。米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した今回の金融危機と過去の損失事件との共通点はどのようなところにあると考えますか。

 可児 ある種の共通点があるとすれば、1998年に破綻したLTCMでしょう。ソロモン・ブラザーズのトップトレーダーだったジョン・メリーウェザーが創設したLTCMは、2人のノーベル経済学賞受賞者をパートナーに据えたドリームチームでした。取引の中心は、マーケットの歪みを見つけてその歪みが是正される前提の下に投資するグローバル裁定取引で、初めの数年はこれが成功、破格のリターンを実現しました。

 ところが、1997年のアジア通貨危機とそれに続く98年のロシア危機をきっかけにしてLTCMの投資戦略は破綻しました。デリバティブ取引やレポ、空売り、借り入れなどによって、とてつもなく高いレバレッジを利かせていたこともあり、巨額な損失が発生してしまいました。このLTCM事件で大きな問題になったのが「流動性リスク」です。

 ご存じの通り、流動性リスクとは、なんらかのきっかけでマーケットに出ている注文が少なくなり、新規に取引をしようとしても適切な価格で取引ができなかったり、保有するポジションを適切なタイミングや価格で売却できなかったりすることを指します。マーケットでの取引執行が成立しにくくなるリスクと考えればよいでしょう。

買い手が急激に薄くなる

 マーケットが正常な状態にある時には当たり前のように取引ができても、マーケットがいざストレス下に置かれると、取引が執行できなくなる可能性がある。特に、悪いニュースを耳にすると、取引参加者の間に群集心理が働いて、手持ちの金融商品を、先を競って売り抜けようとします。そのために注文が偏り、買い手が急激に薄くなってしまう、これが「流動性の蒸発」です。今回のサブプライム問題でも、証券化商品の流動性が蒸発しました。

 ―― LTCM問題の時も流動性リスクは議論に上がりました。多くの投資家はこれを大きなリスクとして認識していたはずなのに、同じことを繰り返してしまったわけですか。

 可児 そう、また同様の状態が起きてしまった。本をただせば、市場参加者の証券化商品に対するリスクの認識が過小評価されていたことが今回のサブプライム問題の一因でしょう。世界的な過剰流動性がそもそもの大前提としてありますが、米国の住宅価格が右肩上がりで上昇する中で、信用力の劣る個人に対しても積極的な融資が行われました。その住宅ローン債権が証券化され、世界中の投資家に販売されたわけです。

 本来であれば、信用力が劣る分、そうした住宅ローン債権のリスクは高く、それを前提とした条件で取引が行われるはずですが、平穏な時期が長く続いたため、マーケットにリスク軽視の風潮が醸成されました。ところが、サブプライム問題によって、証券化商品の買いの手が一斉に引っ込んだ。まさしく流動性リスクの表面化です。証券化商品の価格が極端な下落を示しているのはそのためです。

マーケットの不透明感が増幅

 ―― 確かに、サブプライムローンを原資産に組み入れた証券化商品にはマーケットで値がつかないものが少なくありません。

 可児 LTCM危機の際には、金融機関による救済が決まったことでマーケットの不安感が後退、買い手が現れ始めました。それもあり、時間をかけてポジションを解消することができた。ところが、今回のサブプライムローンの場合、マーケットの不透明感が解消されないどころかそれが増幅する傾向にあるため、適正な価格がつかない。

コメント1件コメント/レビュー

証券化の手法自体は残るのかもしれませんが、今なぜ証券化するのか?といえばレバレッジが効いたからです。 レバレッジを失えば証券化という手法に人々は興味を失うでしょう。また、証券化という手続きを踏んでまで流動化する背景には国際会計基準がからんでいるので、その見直しも出てくるのではないかと思います。よって、証券化という手法は今後あまり使われなくなっていく気がしています。(2008/09/22)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

証券化の手法自体は残るのかもしれませんが、今なぜ証券化するのか?といえばレバレッジが効いたからです。 レバレッジを失えば証券化という手法に人々は興味を失うでしょう。また、証券化という手続きを踏んでまで流動化する背景には国際会計基準がからんでいるので、その見直しも出てくるのではないかと思います。よって、証券化という手法は今後あまり使われなくなっていく気がしています。(2008/09/22)

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