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東証マネーを吸い込んだ巨大な「資金黒洞」

オール・ジャパンの威信に泥を塗った“中国第一股”― 検証「アジア・メディア」事件【第1回】

  • 田原 真司,小瀧 麻理子

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2008年9月19日(金)

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 明日9月20日、東京証券取引所の株価ボードからアジア・メディアの名が姿を消す。初の中国本土系企業として昨年4月に東証マザーズに上場したのもつかの間、創業トップが子会社の預金約16億円を私的に流用したことが発覚し、上場からわずか1年5カ月で“退場”に追い込まれる異常事態に陥った。

 この事件では、経営者の犯罪行為はもちろん、上場を認めた日本側の審査体制も批判を浴びている。それは、急成長の歪みを抱える中国経済の闇の一面と、不祥事を隠蔽しがちな日本の体質を同時に浮かび上がらせた。今なお謎だらけのアジア・メディア事件を検証し、問題の核心に迫る。

*    *    *    *

 2007年4月26日、東京証券取引所の取り引き開始を告げる鐘を、1人の中国人起業家が満面の笑顔で高々と鳴らした(東証のサイトにある写真はこちら)。男の名は崔建平(ツイ・ジエンピン)。この日、東証マザーズに上場したアジア・メディアの創業経営者である。

 この上場は、東証にとって特別な意味を持っていた。

 バブル崩壊以降、東証に上場する外国企業数は一貫して減り続け、ピーク時の127社からわずか25社に落ち込んだ。このままではアジアのローカル市場に転落する――。そんな危機感から、東証は失地回復の切り札として中国企業の誘致活動に積極的に取り組んでいた。アジア・メディアはその第1号として、鳴り物入りで日本に上陸したのだ。

「私は、信義を重んじ、アジア・メディアを優秀な上場企業に育てるために、同僚と一緒にさらに努力することを固く約束します」

 上場セレモニーで、崔はそうスピーチした。祝いの美酒に酔う崔の周りには、東証社長(現会長)の西室泰三を筆頭に、喜びをともに分かち合う日本人の姿もあった。上場の主幹事を務めたのは日本最大手の野村證券、会計監査を担当したのは四大監査法人の1つであるあずさ監査法人、法律顧問に就いたのは四大法律事務所の1つの森濱田・松本法律事務所。さながら「オール・ジャパン」と呼べる支援体制が敷かれていた。

 さらに、広告最大手の電通、携帯キャリア最大手のNTTドコモ、衛星通信最大手のJSAT、大手商社の伊藤忠商事など、日本を代表する一流企業が傘下のファンドなどを通じて出資していた。米アップルや米シスコ・システムズの創業期に投資したことで知られるシリコンバレーの名門ベンチャーキャピタル、米セコイア・キャピタルも、戦略投資家のリストに名を連ねていた。

日本でも中国でも無名の存在

 アジア・メディアの事業は、中国各地のケーブルテレビ局向けの番組情報配信と、テレビ局の番組広告枠の販売代理が2本柱。だが、中国のテレビ業界の実態や事業の将来性について、日本の一般投資家が客観的に評価するのは難しい。そんな中、オール・ジャパンや戦略投資家の“七光り”が、無名の中国企業に対する投資家の不安を和らげ、期待感を高めたことは想像に難くない。

 アジア・メディアの上場は大きな注目を集め、取引初日の終値は公募価格(640円)の17.5%増しの752円をつけた。株価はさらに急上昇し、2007年7月19日には一時2055円の最高値を記録した。


 一方、本拠地の中国では、アジア・メディアの東証上場は当初はさほど話題にならなかった。

 同社は2004年に英領バミューダ諸島に設立登記された持ち株会社であり、中国国内での事業活動は別名の子会社を通じて行っている。中国企業が海外の証券市場に上場する場合、バミューダや英領ケイマン諸島などに設立した持ち株会社を上場させる例は珍しくない。だがアジア・メディアは、持ち株会社だけでなく、子会社も中国では無名の存在だった。

 しかし、上場後の株価急上昇を引き金に、中国でも関心が高まり始めた。注目を集めたのは、オール・ジャパンの支援体制ではない。2005年に中国に本格進出したセコイヤ・キャピタルの最初の投資案件だったことだ。無名の有望企業を発掘しただけでなく、中国企業にとってなじみの薄い東証に第1号として上場させ、高い投資リターンを実現した。それが「さすがはセコイア」と評価されたのだ。

 中国語で株のことを「股」という。アジア・メディアは、東証に上場した最初の中国株を意味する「中国第一股」として、中国のファンド業界で知られるようになった。

 その1年後、崔がオール・ジャパンの威信に泥を塗る事件を起こし、同社が上場廃止に追い込まれるとは、この時点では誰ひとり想像できなかっただろう。

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