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グレーな金集めが生み出した「双頭の怪物」

32億円が消えた宏智事件と崔建平の暗躍 ― 検証「アジア・メディア」事件【第2回】

  • 田原 真司,小瀧 麻理子

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2008年9月22日(月)

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 アジア・メディアの前CEO、崔建平は、なぜ会社の預金に手をつけたのか。なぜ16億円もの大金が必要だったのか――。不正の源流を探ると、5年前に中国の上場企業で起きたもう1つの“資金黒洞(ブラックホール)”に行きつく。舞台となった宏智科技では、中国でも前例のない異常な内部抗争が起きていた。

*    *    *    *

 2002年7月9日、宏智科技という社名の中堅ソフトウエア開発会社が、上海証券取引所に上場した。公募価格8.68元で4000万株が売り出され、発行費用を除いた総額3億3211万元(約53億円)が同社の口座に振り込まれた。

 アジア・メディア事件の源流である「宏智事件」は、この瞬間から始まった。事件の全容は未だに明らかになっておらず、その経緯は複雑を極める。だが宏智事件の検証なしに、アジア・メディア事件の謎を解くのは不可能だ。

 目の前に一夜のうちに積み上げられた巨額のマネー。その魔力は、洋の東西を問わず経営者の判断力をしばしば狂わせる。特に証券市場の歴史が浅く、法治の徹底が行き届いていない中国では、上場企業の経営者による資金の不正流用事件が後を絶たない。

 福建省福州市に本拠を置く宏智科技も例外ではなかった。

 同社は1996年、福建省郵電局(郵便および通信事業を管理監督する地方行政機関)の労働組合組織の出資により発足した。その後、99年から2001年にかけて創業メンバーや地元の投資家が組合組織の持ち株を買い取り、純粋な民営企業に衣替えした。

 当時の中国では、こうしたMBO(マネジメント・バイアウト)が地方の行政機関の傘下企業で盛んに行われていた。行政機関は持ち株を経営陣に売却することで、投資額の数倍のリターンを得るとともに、企業経営のリスクから解放される。一方、経営陣は業績を高めて上場に成功すれば、巨額の創業者利益を手にできる。

 とはいえ、経営者が個人でMBOの資金を用意するのは簡単ではない。親戚や同級生など個人的なつてで借金を重ねたり、上場後の高い報酬を約束して闇金融から融資を受けるなど、グレーなカネ集めが珍しくなかった。そしてひとたび上場が実現すると、その矛盾が一気に噴き出すのだ。

預金や国債が次々に“消失”

 宏智科技は、電話会社向けの料金計算システムや顧客管理ソフトの開発を手がけていた。独自の技術力を持つ企業として一定の評価を得ており、最盛期には900人が働いていた。同社を上場できるほどに成長させたのは、創業メンバーで董事長(会長に相当)の林泰起と、総経理(社長に相当)の王棟である。

 林は自身が経営権を持つ別のIT(情報技術)企業の名義で、王は個人の名義で、それぞれ宏智科技の株を買い取っていた。特に王は、上場後の発行済株式の18%を握る筆頭株主だった。

 ところが上場からほどなく、他の大株主との間で経営権をめぐる激しい内紛が勃発する。2003年6月25日に開催された年次株主総会では、9人の取締役の総入れ替えが決議され、林は董事長の座を追われた。総経理に留まった王も、2カ月後に辞任。代わって経営を掌握したのは、総会後の取締役会で董事長に選ばれた黄曼民だった。

 ここから、宏智科技の異常な実態が次々と明るみに出る。

 まず、同社が銀行に預けていた5000万元(約8億円)が、何者かに引き出され消失した。続いて、林が董事長に在任中、別の口座の預金9000万元を銀行に担保として差し入れ、取締役会の同意なしに林の弟が経営する会社に7000万元(約11億2000万円)を融資させたと、プレスリリースで発表した(林は横領を否定)。さらに、大手証券会社・海通証券に預けていた3500万元(約5億6000万円)相当の国債が不正に売却され、資金が引き出された。

 これだけで、上場時に調達した資金の半分近い1億5500万元(約24億8000万円)が闇に消えた。さらに、設備調達の前払金などの名目で不透明に流出した資金を加えると、少なくとも2億元(約32億円)を超えるカネが回収不能に陥った。

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