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屈辱が技術系エリートを暴走させた?

なぜオール・ジャパンは真相解明を先送りしたのか ― 検証「アジア・メディア」事件【第4回】

  • 田原 真司,小瀧 麻理子

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2008年10月1日(水)

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 東証マザーズに上場していたアジア・メディアが、創業経営者・崔建平による約16億円の私的流用の事実を公表したのは、今年6月12日だった。このカネは一体どこへ消えたのか。同社は「具体的な使途は調査中」と繰り返すばかりで、真相を明らかにしようとしなかった。

 そんな中、取材班は5年前に中国の宏智科技で起きた別の資金黒洞事件(前回までを参照)に、崔が深く関与していた疑いをつかんだ。再三の申し入れに対し、崔は6月30日深夜、取材班の電話インタビューに応じた。

 「もし宏智事件との関わりを認めたとしても、アジア・メディアでの私的流用とのつながりは否定するか、口を閉ざすだろう」――。インタビューが始まるまで、取材班はそう考えていた。

 ところが、結果は予想もしないものだった。崔は宏智事件への関与を認めただけでなく、アジア・メディアから引き出した資金を、宏智科技に対する債務の返済にあてたと明言したのだ。

 記事の最後に、この6月30日の電話インタビューを掲載する。第1回からの記事と併せてお読みいただくことで、アジア・メディア事件の闇の深さを実感していただけるはずである。ぜひご覧いただきたい。

 さて、子会社の定期預金に取締役会の同意を経ずに担保権が設定されていたことが、アジア・メディアの社内で報告されたのは5月末である。それからインタビューまでの1カ月もの間、同社は一体何を調査していたというのか。

 東京証券取引所、主幹事の野村證券、会計監査のあずさ監査法人、法律顧問の森濱田・松本法律事務所という「オール・ジャパン」は、アジア・メディアの上場を支援した当事者として、崔に対して事件の説明を求め、真相追求を徹底すべき立場にあった。投資家保護の観点から当然である。

 しかし、取材班に対するオール・ジャパンの反応は、当初は「調査中と聞いている」「個別の案件には回答できない」など、まるで他人事のようだった。真相を知りながら隠していたのか、それとも、真相を知りたくなくて耳をふさいでいたのか。それは不祥事に直面した日本の大組織がしばしば見せる、「臭いものに蓋」式の姿勢ではなかったのか。

*    *    *    *

 崔建平とは、一体どのような人物だったのだろう。

 第1回からお読みいただいた読者は、あやしげなペテン師や、粗野な成り上がり者の姿を想像するかもしれない。

 しかし現実の崔は、少なくとも表面上、こうした想像とはむしろ正反対の経営者だった。

 「学者肌で純粋な人物。こんな事件を起こすとはとても信じられない」
 「仕事熱心で素晴らしい人だった。一体何があったのだろうか」

 アジア・メディアに投資し、崔と直接交流していた日本企業の幹部たちは、そう口々に語った。

自分より頭の悪い人間を見下す

 この印象は、中国人でも同じだった。事件が発覚する前、崔を単独インタビューした数少ない中国人ジャーナリストの1人である陳言は、こう振り返る。

「インタビューの時、崔はどう見ても100元(約1600円)しない安物の化繊のシャツに、流行遅れのだぶだぶのズボンという出で立ちで、『自分は技術屋。グルメやファッションに興味はない。技術を開発している時が一番楽しい』と言っていた。そして、東証上場の審査がいかに厳しかったか、審査をクリアするために自分がいかに辛抱強く努力したかを淡々と語った。羽振りの良さばかりを自慢する経営者が多い中、朴訥で真面目な人柄が印象に残った」

 とはいえ、褒め言葉ばかりではない。崔は1987年に理工系の最高学府、清華大学を卒業したエリートである。やはり崔を知る複数の関係者は、彼にはエリートが陥りがちな自信過剰の一面もあったと証言する。

 「物腰は丁寧だが、プライドが高く、自分より頭の悪い人間を見下すところがあった」
 「東証に上場した後、自信過剰がエスカレートし、周囲の助言に耳を貸さなくなった」

 しかし、だからといって会社の預金に手をつけるような経営者には見えなかったという点で、関係者の話は一致する。実際、事件が発覚するまで、周囲は崔のことをすっかり信用しきっていた。なぜだろうか。

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