• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

企業を破綻に追い込む「利益偏重主義」

『会計物語』の林 總氏と『エネルギー』の黒木 亮氏が緊急対談(後編)

2008年10月10日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 企業と投資家の双方が、「利益」にばかり目を向け、企業の存続に欠かせない営業キャッシュフローの推移を注視しなかったことが、企業の破綻を招いた――。

 前回に続き、林總氏と、黒木亮氏の2人が、現代の企業経営を蝕む「粉飾」の実態に迫ります。

 林氏は単行本『会計課長 団達也が行く! 物語で学ぶ会計と経営』の中で粉飾がどのように企業に蔓延していくかを、会計士としての実体験をもとにリアルに描きました。また、黒木氏は小説『エネルギー』で石油デリバティブの不正会計を描いています。

 粉飾が横行する背景には何があるのか? 粉飾を見抜くにはどこに注目すればいいのか? 粉飾を減らす手立てはあるのか? 会計実務のプロと国際金融のプロというそれぞれの立場から、率直な意見を戦わせていただきました。

企業の存続には現金が必要

編集部 最近では四半期ごとの利益が過度に重視されているように思えます。そうした市場のプレッシャーは、企業会計の現場にどのような影響を与えているのでしょうか。

 会計の実務に携わっていて実感するのは、ここ十数年の間に、「利益」の概念が大きく変わったという点です。伝統的な利益というのは収益から費用を差し引いたものだったわけですが、最近は「包括利益」という考え方が主流になり、富の増加で利益を把握するようになりました。具体的には、今期末の純資産が前期末に比べてどれだけ増加したかというふうに、バランスシートの差額を利益と見なすのです。

黒木 そうした考え方に立つなら、バランスシートにあらゆる資産が計上されていることが前提となりますが、めぼしい資産をどんどん証券化してオフバランスにするようなことが横行すると、バランスシート上の純資産やその増加分である利益がいったい何を意味しているのかということになってしまいますね。

 ウォーレン・バフェットは、「私は証券アナリストの言うことは聞かずに、ローン・アナリストの言うことに耳を傾ける」と言っています。というのも、証券会社から送られてくるリポートには利益や収益率のことばかり書いてあって、手元流動性や資金繰りについては何一つ書いてないからだというのです。


黒木亮氏=左(写真:稲垣純也、以下同)

黒木 今回のリーマン・ブラザーズの経営破綻も、もしも多くの投資家やアナリストが営業キャッシュフローの推移を注視していたなら、もっと早く株価が下がっていたかもしれません。ところが実際には、営業キャッシュフローではなくて利益ばかりに皆がとらわれていたために、どれだけ経営が悪化しているかということに土壇場まで気づかなかった。

 ピーター・ドラッカーは、企業というのは生存することが前提になるという「企業生存説」を唱えています。企業が存続するためには現金が必要で、何よりも現金を稼ぎ出すことが重要です。そして、その源泉となるのが営業キャッシュフローなのです。

 利益は収益から費用を差し引いた計算上の数字であって、そこに現金が伴うかどうかは別問題です。ドラッカーは利益イコール現金でなければいけないと考えていました。彼は、利益の意味として「業績の評価」「将来のリスクに対する保険」「将来の設備投資のための原資」の3つを挙げましたが、これらは、利益が現金に裏づけられていなければ意味をなしません。

エンロン事件後、会計監査に変化

黒木 生存することが前提と言われると、会社をつぶしてはいけないというふうにも聞こえます。『会計課長 団達也が行く! 物語で学ぶ会計と経営』の中にも、監査人が経営破綻につながることを懸念して不適正意見を出すのを躊躇する場面が出てきますが、会計監査の現場では会社をつぶしてはいけないという意識があるのでしょうか。

 基本的には考えないのですが、そうした意識が働いているというのが現状だと思います。やはり現場では人間と人間の関係というものがありますから、ここで不適正意見や限定付適正意見を出せば、経営が立ちゆかなくなることが決定的になるという局面では躊躇せざるを得ないでしょう。

 会計士は「ゴーイング・コンサーンを前提にして」という考え方が染みついていますから、会社が破綻するかもしれないとなると、なかなか思い切れるものではありません。


黒木 亮(くろき・りょう)
1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社に23年余り勤務し、国際協調融資、プロジェクト・ファイナンス、航空機ファイナンス、貿易金融など数多くの案件を手がける。英国在住。主な著書は『トップ・レフト』『巨大投資銀行』『アジアの隼』『青い蜃気楼~小説エンロン』『カラ売り屋』『貸し込み』など。近著『エネルギー』(上・下、各1800円税別)が好評発売中。


単行本『熱血!会計物語 経理課長、団達也が行く』

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書は『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』など。近著『会計課長 団達也が行く! 物語で学ぶ会計と経営』(1600円税別)が好評発売中。


コメント4件コメント/レビュー

拝金主義ここに極まれりという感じです。今話題の行き詰った企業群が、利益を良く見せるために法の枠内なら何でもありだったことがよくわかりました。利益還元は資本主義の趣旨の一部だと理解しますが、行き過ぎた要求と法の抜け穴をつく方法で、今のようになっては元も子もありません。甘いかもしれませんが、ものや価値を作り出そうとするその共同体の情熱への共感が出資を決意させ、利益を生み、ともに成長するシンプルな考えが、私たちには必要だと思います。痛みも大きいですが、今、実態が伴わない企業が退場して良かったと前向きに考えています。人は同じ過ちを繰り返すことを肝に銘じて。。(2008/10/11)

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

拝金主義ここに極まれりという感じです。今話題の行き詰った企業群が、利益を良く見せるために法の枠内なら何でもありだったことがよくわかりました。利益還元は資本主義の趣旨の一部だと理解しますが、行き過ぎた要求と法の抜け穴をつく方法で、今のようになっては元も子もありません。甘いかもしれませんが、ものや価値を作り出そうとするその共同体の情熱への共感が出資を決意させ、利益を生み、ともに成長するシンプルな考えが、私たちには必要だと思います。痛みも大きいですが、今、実態が伴わない企業が退場して良かったと前向きに考えています。人は同じ過ちを繰り返すことを肝に銘じて。。(2008/10/11)

「金持ちは貧乏人を搾取するのが当然」資本主義といいます。(2008/10/10)

監査対象である企業から報酬を得ている限り、会計士はその企業に限りなく甘くなる。かって会計士は監査対象会社を「うちの会社」と言っていたものだ。(2008/10/10)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授