「ニュースを斬る」

まだ見ぬ“脅威”に備える企業が勝つ

グローバル経済を襲う新型インフルエンザというリスク(後編)

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2008年10月15日(水)

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 地球規模の大流行(パンデミック)の可能性が指摘されている新型インフルエンザ。国内で流行した場合、最悪のケースで3200万人が発症すると厚生労働省は想定している。社会的な混乱だけでなく、米国初の金融危機に揺さぶられている実体経済に与える影響も計り知れない。

 パンデミックは企業の存続をも左右する。大流行時には従業員がいつも通り出勤できるとは限らない。感染防止のためにビジネス活動を縮小しなければならない場面もあるだろう。新型インフルエンザが大流行した時に事業をどうやって継続するか――。まだ見ぬ脅威に備えて、事業継続計画(BCP)を作成しておくことが必要だ。

 実際、医薬品卸の最大手、メディセオ・パルタックホールディングスは新型インフルエンザ用の災害対策マニュアルを作成している。メディセオ・パルタックは医療機関に医薬品を運ぶことが主な業務。社会的な使命と企業の存続の両面を考えて、パンデミック時のBCPを9月上旬に策定した。どういう対応を企業は取るべきなのか。メディセオ・パルタックのケースを見てみよう。

 「想像よりもすごいな」。9月9日、東京・八重洲本社で開かれていたメディセオ・パルタックの取締役会。プロジェクターの映像を見た取締役の1人はこうつぶやいた。会議の資料として新型インフルエンザの影響をシミュレーションしたNHKの番組を流した時のことである。

 この日の取締役会では新型インフルエンザの流行に対応した新しい災害対策マニュアルの承認が主要議題だった。2002年11月に中国で発症した重症急性呼吸器症候群(SARS)。日本での感染が危惧されたが、幸いなことに感染者はなく、そのまま人々の関心は失われていった。

 大山鳴動して鼠一匹、今回の新型インフルエンザも同じではないのか――。そう思っていた役員がいても不思議ではない。だが、あっという間に広がる感染の実態や大混雑する病院の様子を描いた映像は、役員の危機感を呼び起こすのに十分なものだったようだ。最終的に、熊倉貞武社長の強い意向もあり、全会一致で承認。現在は総務部を中心に、物品の調達や各部署の行動指針など詳細を詰めている。

どんな状況下でも医薬品を届けるための体制が必要

 2兆2549億円(2008年3月期)の連結売上高を誇るメディセオ・パルタックは日本中の医療機関に医薬品を配送しているトップ企業である。日本の医療を支えるインフラと言っても過言ではなく、大規模災害で事業継続が不可能になると、社会に大きな影響を与えかねない。

 地震などの自然災害を対象にした災害対策マニュアルは既に策定している。ただ、地域がある程度、限定される自然災害に対して、新型インフルエンザは広範囲に広がっていく。また、自然災害は比較的、短期間で終息するが、新型インフルエンザはワクチンが完成するまでに2年ほどかかってしまう。

 地震は局所的ゆえに別の地域での事業継続が可能だが、疫病は皆が感染するリスクがある。従業員の感染次第では事業の継続が不可能になる可能性もある。こういった理由を考えた時、従来の自然災害とは別のマニュアルが必要との結論に達した。

 同社の新型インフルエンザの災害対策マニュアルの根底をなすのは予防である。「新型インフルエンザは疫病のため、予防の徹底で感染者を減らすことが重要。予防がすなわちBCPになる」。災害対策マニュアルの作成にかかわった谷口雄二・総務部長は言う。

 次のページでその中身を見てみよう。

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著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。



このコラムについて

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