サブプライム問題に伴う世界的な金融市場の混乱を受け、今後の金融システムの在り方などを問う金融サミットの開催が来月半ばに予定されている。
行きすぎた収益市場主義を是正するうえで、監督機関の規制強化は避けられない、いやむしろ積極的に監視すべきというムードが世界中で醸成されている。たしかに、金融システムの安定を取り戻すためには、公的資金の注入などの措置は欠かせない。
しかし、公的資金は本来、国民1人ひとりの財産であるということを考えれば、公の前に民として今回のバブル崩壊の意味を考える必要がある。経営者として企業再建に取り組んできた経験を持ち、公的部門の改革にも詳しい伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長に話を聞いた。
―― 金融機関をはじめ欧米そして世界の企業は、これからサブプライムに関連する様々な負の遺産処理を迫られてくると思われます。かつて不動産投資で財務基盤を傷めた伊藤忠商事を再生すべく陣頭指揮した経験を持つ丹羽さんにとって、これから企業のリーダーが心がけておくべきことは、どのようなものがあるでしょうか。
丹羽 宇一郎(にわ・ういちろう)氏
伊藤忠商事 取締役会長
1939年生まれ。62年3月名古屋大学法学部卒業、同年4月伊藤忠商事入社、92年6月取締役、94年6月常務、96年4月専務、97年4月取締役副社長、98年4月取締役社長、2004年6月取締役会長就任、現在に至る。地方分権改革推進委員会委員長、成長力底上げ戦略推進円卓会議議員、日本経済団体連合会日タイ貿易経済委員会委員長、認定NPO法人 国連WFP協会会長などを務める。
(写真:花井 智子、以下同)
丹羽宇一郎 まず、今回のサブプライム問題で言えるのは、人間というのは同じような過ちを、歴史的にも何回も繰り返すということです。米国人だろうが日本人だろうが、成功、失敗、成功、失敗を繰り返してきました。
それは人間の心の持ち方というものが、非常に大きな影響を与えています。つまり強欲。世界のどの国を問わず自己愛、自己中心的になり、高い志は消失していきました。これらのことが重なって、今回の国際的な金融危機というものを生み出してきたのです。
サブプライム問題で巨額の損失を計上したスイスのUBSが、今春に出した「Shareholder Report on UBS's Write-Downs」という50ページの報告書には今、私が申し上げた趣旨のことが書いてあります。
自分たちの心にすきがあり、リスク分析を怠った。本来は自ら債券を抱えず、取り扱い手数料を得るべきものを、自ら保有してしまった。人事給与体系が成果主義一本だったため、社員は後にどんな資産が残るかなどほとんど気に留めず、自分の給料をいかに上げるかに、もっぱらエネルギーを注いできた――。
今回の金融危機で破綻した海外の金融機関を買い取った日本の金融機関が、おそらく最も困っているのは、社員の報酬でしょう。彼らは高度な金融工学の知識を持ち、新しい商品を生み出してきたことに自尊心を持っている。
本当は、これだけのリスクを残したことをまっさきに反省し、その報いも受けなくてはならないのに、いまだに高い給料をもらおうとしているわけですよ。私だったら即刻、「給料を半分にしてしまえ」と思うんだけど、そうするとその社員は逃げてしまう。そうなると、人が資産の会社だから、何を買ったのか分からなくなってしまう。
私だったら、逃げる者は逃げても構わないと思う。本当に、彼らの能力で儲かったとは思いません。リスク分析に甘く、イケイケどんどん環境だったからで、知能が優れていたわけでも、どこそこのMBA(経営学修士)を持っていたからでもない。
―― どうしてリスクに甘くなるのでしょうか。
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