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シリーズ――ポスト・サブプライム(5)

先行き不透明で当然、感ずるべきは「現在以上の現在」

  • 真弓 重孝

バックナンバー

2008年11月26日(水)

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 サブプライム問題の深刻化で、ヘッジファンドに代表される投機行為に批判の目が向けられている。ただ投機は、江戸時代の大阪・堂島の米市場など人類が以前から、通常の投資行為の中でリスクヘッジや流動性の向上などに活用してきた。こうした面から、投機のすべてを悪、と断罪できない。では、投機の何が問題なのか。

 「投機は禅の言葉で、全身全霊を向けてある物事に取り組むという意味がある」。臨済宗の僧侶で、作家の玄侑宗久氏は言う。自然と一体になって悟りの境地を開いていくのが禅の投機ならば、サブプライムで顕著に行われた投機は、先行きが不透明な未来を人工的に可視化させたものだ。

 その先に何があるのか分からないのが自然で、人間はその自然の一部であると考えれば、昨今の金融投機は、本来は人間にとって不自然な行為、という意識からかけ離れてしまったものと言える。

 ポスト・サブプライムの新たな金融秩序作りで、日本がイニシアチブを取ることを取り沙汰されている。日本が今後できる貢献には何があるのか。資金支援など様々なものがあるが、西洋的思考で構築されてきた金融秩序に、一石を投じることもあるかもしれない。禅の精神と経済問題について玄侑氏に聞いた。

(聞き手は日経ビジネス オンライン 真弓 重孝)


 ―― 昨今の金融危機でやり玉に挙げられている投機行為の投機を辞書で引くと、「悟りを開くこと」など禅にまつわる言葉だと紹介されています。

玄侑 宗久(げんゆう・そうきゅう)氏

玄侑 宗久(げんゆう・そうきゅう)氏
1956年、福島県に生まれる。臨済宗妙心寺派福聚寺の跡取りであったが、反発して様々な宗教の合宿などに参加。大学は慶応義塾大学中国文学科に属し、現代喜劇を専攻する。27歳で出家し、京都にある天龍寺専門道場にて修行。その後は生家に戻り住職に。小説『水の舳先』でデビューし、『中陰の花』で第125回芥川賞を受賞。小説や禅と宗教に関する著作は『アミターバ―無量光明』『禅的生活』など50冊を超える。
(写真:管野勝男、以下同)

 玄侑 宗久 全身全霊をかけて1つの物事に向かうことで、悟りになります。投機の偈(げ)という言葉がありますが、それはもうこれだというのを偈に唱えることです。この投機が経済的な用語に採用されたのは、投機の機はチャンスのことで、チャンスに我が身を投げ出すという意味があるからでしょう。

 禅の投機は、自然現象です。自然は基本的に、どう変化するか分からないものです。ですから経済用語として投機でも、長期的にどう動くか分からないと考え、例えば目先の20円や30円の動きで、取引して利益を確定しようとするのが、最も無難なのではないでしょうか。

 ―― 冷静に考えれば、この先、値動きがどうなるのか分からないのは、至極当然のことなのですが、投資や投機に身を投じていると、「先行きが分からない」というのは、人をものすごく不安にさせると思います。

 玄侑 なんら不安を持たないで、投機行為をすることなどは難しいと思いますが、不安を和らげることはできるでしょう。人が不安な身体状況にある時は、呼吸が浅く、短くなっています。息を吐ききっていないからです。吐ききらずに吸い始めるので、浅く短い呼吸になるのです。

 こうした身体的な状況が、体に不安というものを裏付けてしまうのです。不安とは、目には見えない頭の中で思い浮かべたことがもたらしていると考えがちですが、実は呼吸という身体の物理的な動きによって作られているのです。

 ですから安心も、頭ではなく身体的な状況が裏付けます。安心するには、息を吐ききることが必要になります。

 ―― 玄侑さんは作家の五木寛之さんと対話されている『息の発見』(平凡社)で息の仕方1つで風邪や下痢が治ると述べられています。病気に限らず、呼吸の仕方で精神的な状況も変わるということですか。

息の発見

 玄侑 そうですね。息の長い呼吸というのは、集中して事に臨む時にも役立ちます。1つのことに心が統一され安定した状態を三昧と言います。いわゆるヨガではサマディと同じ状態の時は、息は止まりますね。

 野球のバッターがここぞと球を打つ瞬間は三昧になっていて、恐らく息は止まっているでしょう。息を止めた状況をある程度続けるには、呼吸が長くないと難しいですね。

 ―― 長い呼吸をすれば、精神が安定し、集中力を増して物事に臨むことができるということですか。しかし、長い呼吸をしても、経済行為の投機をしている時は、不安を抜本的に取り除くことはできない。

 玄侑 経済行為としての投機は、要するに未来を先物買いするということです。これは全くなってない。未来を思惑通りにしようという心掛けは、禅的なものと懸け離れています。

 禅で無心、予断から離れた状態になることを追求します。予断を持つというのは、将来どうなるか本来は分からないのに、自分の都合がいいように未来を決めたり、未来を安く見積ってしまうことで、様々な過ちを犯すことになる。

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