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経済史から見たサブプライムの衝撃 (上)

大恐慌に学ぶべき、不況下の国際資金循環の変化

2008年11月20日(木)

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 米リーマン・ブラザーズの破綻から2カ月。金融危機は金融市場の機能不全から実体経済へ影響を及ぼし、「100年に一度」「大恐慌の再来」といった言葉が聞かれる。

 1929年の株価大暴落に始まった大恐慌が、今再び目の前で現実のものとなるのか――。世界中は不安におびえ、縮こまっている。

 先の見えない危機に瀕したわれわれにできることがあるとすれば、それは歴史に学ぶことだ。

 この2回のシリーズでは、慶応義塾大学の竹森俊平教授と早稲田大学の若田部昌澄教授による対談を通し、世界を覆う金融危機について経済史をひもときながら考えてみる。

 1回目では金融危機について改めて解説。最近の研究に基づいた大恐慌の解釈と、われわれが大恐慌から学ぶべき点とは何かについて語っていただいた。


 ―― 米国発の金融危機は世界を駆け巡り、欧州、日本、そして高成長を続けてきた新興国の実体経済にまで影響が及んでいます。「1929年の大恐慌に匹敵する」と言われたり、米連邦準備理事会(FRB)の前議長アラン・グリーンスパン氏が「100年に一度の津波」と言ったりしていますが、今われわれが直面している“危機”とは経済史の視点から見ると、どのように位置づけられるのか、そこからお話しいただけないでしょうか。

「大恐慌」以来の危機というのは本当なのか?

竹森 俊平(たけもり・しゅんぺい)氏

竹森 俊平(たけもり・しゅんぺい)氏
1956年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部教授。81年同大学経済学部卒業、86年同大学院経済学研究科修了。89年米国ロチェスター大学経済学博士号取得。主な著書に『経済論戦は甦る』(第4回読売・吉野作造賞)、『世界デフレは三度来る』(上・下)、『1997年―世界を変えた金融危機』『資本主義は嫌いですか』ほか(写真:大槻純一、以下同)

 竹森 ハロルド・ジェームズ(プリンストン大学教授。著書に『グローバリゼーションの終焉』)が最近、フィナンシャル・タイムズに書いていたことだけれども、今、起きている規模の金融危機というのは、歴史上なかったと考えた方がいいと思います。1930年代よりも金融危機としては深刻だというのは確かです。

 ジェームズは、大恐慌の欧州では、産業に対する貸し出しの7割を持っていたというオーストリアのクレジットアンシュタルト銀行はじめ、非常に大きな金融機関が破綻した。その一方、米国では中小の金融機関は破綻したが、大きなところは破綻しなかったと言っています。

 若田部 あの大恐慌でも、大きな銀行が破綻したのはごく一部の国で、米国でも大きな金融機関は生き残っていたというわけですね。

 竹森 それに対して、今回はいきなり中心部分がばたばたと倒れた。9月15日のリーマン・ブラザーズ破綻からの1週間というのは、メリルリンチがバンク・オブ・アメリカに買収されることになって、次の日にAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が救済されて、その翌週末にワシントン・ミューチュアルが救済合併された。金融システムの真ん中から問題が起こったというこの危機は、本当に新しい出来事と言っていいと思います。

 若田部 そうですね。実は大恐慌の時は、英国やカナダでは金融危機が起きていないんです。

 竹森 せいぜい預金の引き出しはあったけど、完全に潰れるまでにはいかなかった。

 若田部 例えば英国は、大恐慌の時にはかなり素早く金本位制を停止して離脱するということが可能でした。

 今回の危機はやはり史上最大級の金融危機であるのは事実で、竹森先生がおっしゃったように、いきなり心臓が止まるようなことが起きたという感じですね。

短期の借金がロール・オーバーできなくなった

 ―― 史上最大級と言っていい金融危機に世界中の人たちが直面しているわけですが、その原因としてサブプライムローン問題が第一に挙げられています。そもそもなぜ、これほどの危機が起きたのか、その原因について改めて先生方に解説していただけないでしょうか。

 竹森 今の危機というのは、証券会社の投資行動の脆弱性が出たということです。証券会社、あるいは金融機関でも証券会社と同じような行動を取っていたところに発生した。資金集めの際、銀行の場合は預金があります。取り付け騒ぎがあれば大変だけれども、預金保険があるので小口の場合は一応安定しています。

 ところが証券会社の場合は短期の証券を発行して資金集めをしなければならない。それを長期の証券で運用をして、その間の利ざやを取ってくるわけです。

 最近、証券会社がやっていることは、長期の投資と同じ条件を担保にして短期で借りること。もう売った次の日は買い戻すというようなことをするわけです。しかしこんなことをしていると短期の借金がロール・オーバー(借り換えによる債務の実質的な先延ばし)できない、繰り延べできなければ危ない。

 このように転がしている証券が、少し前まではAAAという格付けを与えられていた。その信頼があり、マーケットでも転がっていた。

 ところがある時、一気に信用がなくなって、まず証拠金が上がった。それでロール・オーバーしようにも、証拠金を積まなきゃいけない。その証拠金が100%になる、要するに借りられないという状態になった。それでみんな資金繰りに詰まった。

格付け会社の「腕を締め上げた」運用側

 ―― なぜそのような危ないことをしたのでしょう。

 竹森 私はやっぱり利潤追求と競争ということがあると思うんです。金融機関のフィーの構造が根底にある。資金の運用を頼む年金基金などのインセンティブから考えても、収益を上げれば上げるほどそのファンドの人気が上がる。ただし、あんまり危ないものでは誰もお金を預けるわけにはいかないから高い格付けを付けたい。そのために格付け機関に“AAAにしてくれ”と言った。

 格付け機関が悪いと批判されますけど、運用する側が格付け機関の腕を締め上げて、「AAAを付けてくれなかったら、お前の代わりにフィッチ(レーティングス)に行くぞ」とムーディーズに言ったわけです。ちょっとでも利ざやを稼いで、自分の相対的な業績を良くしようというインセンティブが運用側に強かったことは否めないと思います。

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「経済史から見たサブプライムの衝撃 (上)」の著者

飯村 かおり

飯村 かおり(いいむら・かおり)

日経トップリーダー副編集長

2007年より「日経ビジネスオンライン」編集部に在籍。信頼できるおもしろいコラムを世に送り出すことを楽しみにやってきましたが、2015年よりクロスメディア編集長となり、ネットから紙の世界へ転身。書籍などの編集に携わっています。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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