先週の主要20カ国・地域(G20)が集まった緊急首脳会合(金融サミット)で、世界的な金融システミックリスクのこれ以上の拡大を防ぐために、世界的な協調姿勢を改めて確認したものの、市場の動揺はいまだ続く。
懸念がくすぶり続ける環境下で、金融市場に新たに資金を投じる意欲をかき立て、必要な資金を実体経済に回していくには、金融政策以外にどのような取り組みが必要なのか。世界的に模索が続く。
マーケットの同様が依然として続く中、米国の投資銀行及びヘッジファンドに勤務した経験を持つ渋澤健氏は、現在、一般個人向けの投資信託ビジネスの開始を計画している。「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一を祖先に持つ渋澤氏に、その狙いと意義について聞いた。
(聞き手は日経ビジネス オンライン 真弓 重孝)
渋澤 健(しぶさわ・けん)氏
1961年、神奈川県生まれ。「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の5代目の子孫。83年米テキサス大学卒業。87年米カリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLA経営大学院修了、 MBAを取得。JPモルガン、ゴールドマン・サックス、大手ヘッジファンドのムーア・キャピタル・マネジメントなどを経て、2001年投資コンサルティング会社のシブサワ・アンド・カンパニーを設立、代表取締役に就任。2008年コモンズ投信設立、会長。渋沢栄一記念財団理事、経済同友会幹事。主な著書に『巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」』(講談社)、『渋沢栄一とヘッジファンドにリスクマネジメントを学ぶ―キーワードはオルタナティブ』(日経BP)など。日経ビジネス オンラインにて2008年10月から『資本主義と道徳』を連載中(土曜日オンエア)
(写真:花井智子)
―― 今回の金融危機で、投資銀行やヘッジファンドの行動がやり玉に挙がりました。複数の米国の投資銀行そしてヘッジファンドに勤務された経験を持つ渋澤さんにとって、彼らに対する批判はどのようにご覧になっていますか。
渋澤 今は投資銀行やヘッジファンドは、悪魔のような存在に見られていますが、彼らは悪魔でも何でもなく、これまで彼らなりに極めて合理的に物事を判断し、理屈を積み上げて、AがこうだからBがこうなると、判断して行動してきただけのことです。
投資銀行やヘッジファンドの根底にあるのは、「物事は合理的に効率的に動くべきである。だから、今、非合理的、非効率的なものは、いずれは合理的、効率的になる」という考えです。
今回の金融危機で感じたことは、一つひとつの個体は合理的な動きをしていると、仮に思っていたとしても、システム全体では合理的にならなかったということです。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)で問題になった証券化は、1つの個体としては、リスクを排除したことになったとしても、金融システム全体の中で見れば、リスクはなくなったわけではなかった。
ババ抜きでは、ある人がババを手放すことができても、ババ自体がなくなるわけではなく、一時的に誰かに流れただけです。今回のサブプライムでは、そのババが、気が付いてみたら、元の形を変えて自分に戻ってきたのです。
―― 合理ですべて完結することはなかった。
渋澤 投資の価値観に、機械論と生命論というものがあります。機械論というのは、個々の部品が存在し、それが組み立てられて合理的に機能することで全体が存在するというものです。生命論は、個々の細胞の動きから全体を見るというよ、前提として生命があり、そこには多数の細胞というものがある、というようなアプローチです。
医学を例に取ると、分かりやすいと思います。西洋医学では、例えば胃の調子が悪ければ、体のパーツの1つである胃を手術や薬で治療しようとする。東洋医学の場合、例えば胃がおかしいといっても、気の流れがちょっと乱れたことによって起こった病症がたまたま胃に出たのだから、気の流れを直しましょうとなる。どちらが正しい、間違いというのではなく、恐らく両方とも我々が豊かな生活を送るのに、大切なものだと思います。
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