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経済史から見たサブプライムの衝撃(下)

大恐慌後の“大反動”とは違う、規制強化の在り方とは

2008年11月21日(金)

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 慶応義塾大学の竹森俊平教授と早稲田大学の若田部昌澄教授による対談の第2回目は、金融危機後の世界経済と日本の金融政策の在り方について語っていただきました。

 まずは、なぜ金融機関を救済するのか? という素朴な疑問への答えから。今回の金融危機の根本にあるのは、米国ならではの企業家精神だと議論が展開します。

 反面、1990年代の反省をせず、今も危機に迅速に対応できているとは言えない日本の政策を一刀両断。増税と景気対策を同時に言うのは政治の弱さにほかならないと、大恐慌後、景気の回復が最も遅れた当時のフランスと日本の類似点を指摘しています。

 また、大恐慌後に起きた規制強化を“大反動”と位置づける研究を基に、サブプライム後の規制の在り方についても語ってもらいました。

 「フーバーは本当にバカだったのか」「なぜフランスは第2次世界大戦で負けたのか」など、大恐慌についての最新の学説もやさしく解説。現在の金融危機を経済史の流れの中に置くことで、見えなかった危機の本質が見えてくるはずです。


前回から読む)

 ―― ここで非常に基本的なことをお伺いしたいのですが、なぜ金融機関を助けなければいけないのでしょうか。ものすごく高額な報酬をもらっている人たちをなぜ、自分たちの税金で助けなければならないのか。こういった素朴な疑問を抱いている人は多いと思います。

 若田部 間違えてはいけないのは、重要なのは金融機関の救済ではなく、金融システムの救済です。

 中央銀行の役割というのは基本的には2つぐらいあります。1つはマクロ経済変数で物価や、それと密接に関わっている雇用、生産と2つぐらいのマクロ変数を安定させること。それともう1つは金融システムを安定させること。

 金融システムの安定化についていえば、銀行間のお金の貸し借りが、かなりまずい状況になっている時には、中央銀行は「最後の貸し手」としての役割を果たさなければいけない。

 なぜシステムを救う必要があるのかというと、ある銀行がダメになると、人々の貯金もなくなってしまう。経済では結局誰かがお金を借りてくれないと、貯金もなくなってくるんです。もちろん、預金保護制度は存在します。しかし、そこまで待って金融システムが機能不全に陥ると、その社会的コストは甚大になる可能性がある。だから金融機関を助けるというよりも、金融システムを救済するというのは必要なことであって、今回の危機ではこの中央銀行がなすべき基本的なことがあぶり出されてきた感じがします。

銀行からお金を借り、良い投資をしているところからやられる

竹森 俊平(たけもり・しゅんぺい)氏

竹森 俊平(たけもり・しゅんぺい)氏
1956年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部教授。81年同大学経済学部卒業、86年同大学院経済学研究科修了。89年米国ロチェスター大学経済学博士号取得。主な著書に『経済論戦は甦る』(第4回読売・吉野作造賞)、『世界デフレは三度来る』(上・下)、『1997年―世界を変えた金融危機』『資本主義は嫌いですか』ほか(写真:大槻純一、以下同)

 竹森 一方では、日本の失われた10年と言われますが、あの時に間違った貸し出しをした銀行は責任を取ってつぶれるべきだ、といった考えがあります。

 貸し渋りで銀行がつぶれる問題点とは、迷惑を被るのが、必ずしもとんでもない間違いを起こしたところと限らないこと。貸す側に貸す余力がなくなって貸せなくなったという時、困るのは借りている側なんですよ。借りてないやつは困るわけがない。

 例えば90年代、日本の地方でつぶれた企業がたくさんあった。それを見て、非効率な企業は消えてなくなるべきだと言う人がいる。しかし、残っている企業というのは駅前に昔から代々受け継いでいる土地がある。キャッシュはあるけど使う能力がない。だから、ただキャッシュが遊んでいる――。そういうところなんです。

 その一方で、この地方に新しいビジネスを作ろうと考えて、東京の大学で勉強して、新しい技術でやってみたいと銀行からお金を借りてどんどん投資している企業がある。こういうところがやられる。

 日本の金融機関と比べて、米国の金融機関はひどいことになった。でもこれは、日本の銀行が米国の金融機関と比べて経営能力が優れていたというわけではありません。日本の銀行は無理に借りて投資をするようなことはしていなかった。資金繰りに余裕があったのです。金融危機というのはしょせん資金繰りがタイトになる状況だから、残るのは借りなかったところ。半面、借りているところはたとえ経営が良かろうとも、金融システムと一緒に落ちざるを得ないという問題がある。

 ――日本の政治家は90年代の危機を経て、竹森先生がおっしゃった金融危機の本質を理解できているのでしょうか。少なくとも、国民にうまく説明できているようには思えませんが…。

日本は今必要な危機対応ができているのか?

 竹森 90年代は日本の金融政策、不良債権問題やデフレに対する政策もみんな悪かった。97年、金融機関が一気につぶれるのを放っておいただけでなく、翌年、日本長期信用銀行がつぶれるのも放っておいた。

 なぜ間違った政策が取られたかというと、当時、日本は国際的な競争の問題がなかったから。今起きているように、英国が預金保護に走ったらほかの国もそちらへ動いていかないとひどい目に遭うといったメカニズムは、その時は働いてなかった。

 ところが今回の金融危機の場合は、各国がどんどん動き出している。日本の政治家のうち、どれくらいの人がこのことを認識しているのか――。かなり不安を感じますね。

 ここで金融機関に対するプロテクションがほかの国よりもお粗末だったりすると、どんどん株は下がるし、金融機関のポジションが悪くなるというスパイラルが起こる。10月31日に日銀は金利を0.2%下げました。国際協調だと言っていますけど、国際協調どころじゃないでしょう。けちだね、本当に。

 若田部 せめて0.25%は下げると思いました。だけど本当は0にして量的緩和もつけなくてはいけないですね。

 竹森 目立たないように、目立たないように低くなった。0.3%だったらもう削れと言われないと思っている。

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「経済史から見たサブプライムの衝撃(下)」の著者

飯村 かおり

飯村 かおり(いいむら・かおり)

日経トップリーダー副編集長

2007年より「日経ビジネスオンライン」編集部に在籍。信頼できるおもしろいコラムを世に送り出すことを楽しみにやってきましたが、2015年よりクロスメディア編集長となり、ネットから紙の世界へ転身。書籍などの編集に携わっています。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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