「7月頃から取引先の経営が想定以上に悪くなって、(破綻先などへの債権の)償却費用が膨れ上がった…」
北海道の大手地方銀行、北洋銀行を傘下に持つ札幌北洋ホールディングスの柴田龍・取締役は、こう言って声を落とした。
世界経済の急激な悪化が、日本の弱い部分を突き始めている。札幌北洋HDは2009年3月期、2001年4月の経営統合以来、初めての赤字に転落する。
原因は景気の急激な冷え込みによる融資先の破綻・業績悪化と、世界的な株価崩落に為替乱高下などによる投資商品の大幅な損失計上。
まず、期初に90億円と見込んだ貸倒償却引当費用は、380億円に大幅積み増しとなり、株式や投資信託などの保有有価証券も価格下落で1000億円を超える含み損を出して203億円を減損処理。貸し倒れ処理とともにダブルパンチの大型損失となって、一気に赤字のふちに沈んだ。
「有価証券投資は、当然日本株だけではなく、欧米の投信や株式などにも分散して、リスクを抑えていたはずだった。しかし、それが全く利かなかった」
米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題後の信用収縮と、欧米の景気悪化で内外のファンドなどの投資マネーが大幅縮小。日本の不動産への投資圧縮につながって、「土建経済」に頼る日本の地方経済を直撃した。
地方の建設・不動産業の経営悪化の連鎖となって地銀を揺さぶったうえに、世界的な株安が有価証券の投資損失となって追い打ちをかけたのである。
札幌北洋HDが期初に357億円の経常黒字と見込んだ通期予想が、わずか半年で380億円の同赤字へ転落した裏に透けるのは、世界景気の悪化が、まず経済基盤と銀行・企業の体力の弱い地方を危機に追い込んでいる構図だ。
製造、流通業へ不振拡大
地銀の業績悪化は札幌北洋HDだけではない。表のように上場87地銀のうち、2009年3月期の経常利益が期初予想から50%以上減ると発表した地銀は50行にも上っている(11月17日現在)。30%以上なら70行にも達する。

米ドル、日本円、共にエネルギー単位を基準としてみれば、通貨は長期的低落傾向にあるのだから、これから上昇傾向にあるはずの通貨の国(新興国)に対して、北米も日本も投資をするのが正攻法に思う。例えば、日本の地銀は地場の企業で日系ブラジル人などに頼っている企業に対して、それらの人材を活用してのブラジルでの事業展開を手助けするというようなことは出来ないのだろうか。他の金融機関にもできるとは思うが、地銀がもっともそのような企業に近いはずだ。(2008/11/27)