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知られざるノーベル・ネットワークの脅威

2008年12月10日(水)

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 10年ほど前、ストックホルムからニューヨークに向かう飛行機に乗った際、隣の席に座った米国人のビジネスマンが話しかけてきました。

 「日本人の技術者の方ですか?」
 「日本人ですが、技術者ではありません。コンサルティング会社を日本で経営しています」
 「スウェーデンは日本の産業にとっては大変、重要な国ですから、私はてっきり技術者の方かと思いました」

 私は彼に、なぜ日本にとってスウェーデンがそれほど重要なのか問いました。
 「日本は米国が発明した技術を応用し、品質の高い商品に仕上げて世界に販売するとよく言われますよね。そのような米国にとってスウェーデンは、新しい発明の種を見つけられる素晴らしい国なのです」

 彼は、スウェーデンは発明の「ゼロの部分」を持っている国だと言い、この国の知的開発能力を大きく向上させた仕掛けこそ、ノーベル賞であると話し始めたのです。

72時間あればどんな新技術でも評価できる

 もう1つエピソードがあります。スウェーデン人の仕事上のパートナーが、スウェーデンでも有数のベンチャーキャピタル、ヘルスキャップの役員を紹介してくれました。同社はバイオや医療関係の会社に投資するベンチャーキャピタルです。

 彼の会社に行き、「スウェーデンはバイオや医学関係の研究機関も多く、その人材の層の厚さを見ると将来が有望ですね」と言ったところ、医師でもある役員の彼はこう答えました。

 「西野さん、それは確かに正しいです。でも、スウェーデンの強さはそれだけではありません。仮にあなたが新薬やバイオの新技術を私どもに提案し、投資の検討を依頼したとします。私の会社はノーベル賞選考の関係者や、ノーベル賞受賞者のネットワークを保有しています。

 彼らにあなたからの提案内容を問い合わせれば、世界中の誰が同様の研究を進めていて、どのような開発のステージがあり、商品力がどれほどあるかなどについて、3日もあれば調べることができます」

 「それはノーベル賞100年の歴史によって蓄積されたネットワークの力ですか?」と私が聞くと彼は大きく頷きました。

 この2つのエピソードは、現在のスウェーデンの産業力を見れば確かにうなずける話です。欧州の北のはずれに位置し、100年前は欧州で最も貧しい国だったスウェーデン。人口わずか900万人強という国でありながら、20世紀にはボルボやエリクソンなど、世界的な大企業を多く擁する豊かな国になりました。表立って語られることはありませんが、私はこの成長の影には、ノーベル賞があると考えています。

食糧難で移民せざるを得ないほど貧しかった時代も

 日本人がスウェーデンに対して抱くイメージは、森と湖の国、あるいは福祉と介護の国などといったもので、20世紀になって大躍進した工業国家というイメージからは程遠いのではないでしょうか。

 19世紀末のスウェーデンは人口400万人程度の国でした。当時は食糧難から4人に1人が米国はじめ、他国へ移民せざるを得なかったほど貧しい国だったのです。

 ノーベル賞が初めて授与されたのは1901年、まさに20世紀の幕開けの年です。以来、スウェーデンは急激に工業国家となり、自動車産業(乗用車だけでなくトラックも)や電話交換機、産業用ロボット、医薬品、化学関係など、多岐にわたる産業が興されました。

コメント5件コメント/レビュー

私もノーベル財団の資産運用に興味あります。きっと保守的なんだとは思いますが、現況、欧州経済の大波にはもまれてそうな…(2008/12/10)

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いただいたコメント

私もノーベル財団の資産運用に興味あります。きっと保守的なんだとは思いますが、現況、欧州経済の大波にはもまれてそうな…(2008/12/10)

今年からの大恐慌で、財団の資金運用が心配です。//(2008/12/10)

筆者がおっしゃるところの「ノーベル・ネットワーク」を「脅威」だと表題にすること自体が、そもそもおかしいのではないかと感じました。スウェーデンはたとえ結果的であるにせよ、平和と英知に対して相当な、かつ適切な投資をしており、その配当を有意義に活用しているのだと思います。◆重武装中立国であるスウェーデンが保有する軍事力は、国土を守るという視点で見ると世界有数です。でも、そのことでこの国が近隣諸国から騒がれるということはほとんどないと記憶しています。歴史的事情は異なるとはいえ、日本とは大違い。そこには「平和への投資」の有無が大きく影響しているように思います。確かに、日本のご近所のお行儀は必ずしも良いとはいえないでしょうが、日本の側にも襟を正す点は多々あるでしょう。私たちがこれまで果たしてきた世界平和・英知への貢献はどの程度だったのか、これから何をすべきなのか、よく考えるべきだと思います。(2008/12/10)

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