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「ビッグスリーを"国鉄"と考えると分かりやすい」~米上院はどうして救済法案を白紙に戻したのか

『超・格差社会 アメリカの真実』の小林由美氏に聞く

2008年12月14日(日)

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 なんだか理解できないなぁ--。例によって、ぼんくらな私の頭はぶつぶつ言っていた。日本時間で金曜日(12月11日)の昼過ぎに報じられた「米上院、ビッグスリー救済法案の協議が決裂、政府案白紙に」のニュースだ。雇用や輸出に大きな影響を持つ自動車産業を、カネ詰まりから緊急避難させるための政策だ。しかも米国景気や金融市場などを通して、世界経済への影響もばかでかいだろう。否も応もなく救済するしかないんじゃないか? 

 もちろん、そんなことは当然分かっていて、それでも救済案をはねつけたはず。ならば、先方の考えの中には、私がまったく理解していない前提、向こうにしてみたら常識以前の事実があるのだろう。こういうときは達意の先人に素直にお聞きするに限る、というのが、ぼんくらなりの対応策であります。

 今回お聞きしたのは、弊社で『超・格差社会 アメリカの真実』を著していただいた小林由美氏。詳しい経歴は下記の通りだ。ニューヨークとシリコンバレーで日本人初女性エコノミスト、証券アナリスト、コンサルタントとして28年間活躍してきた女性。経営者として、日米で経営の実務に携わった経験も長い。

 自分の会社の本ながら、私はこの『超・格差社会…』で、米国を「日本の常識」で見ていたことを思い知らされた。そこで、今回ムリにご登場をお願いした次第だ。これまた例によって、語り手の深い知見に比べ、質問が浅い点はどうかお見逃しいただきたい。(日経ビジネスオンライン 山中 浩之)

超・格差社会 アメリカの真実

小林由美(こばやし・ゆみ)経営戦略コンサルタント/アナリスト、C.F.A.。JSA International取締役。東京生まれ。1975年東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行に女性初のエコノミストとして入社。調査部で医薬品・エレクトロニクス産業を担当後、長銀を退職。スタンフォード大学でMBA取得。82年、ウォール街で日本人初の証券アナリストとして、機関投資家向け調査でNo.1だったペインウェバー・ミッチェルハッチンスに入社。85年、サンフランシスコで経営コンサルティング会社JSAに参加後、セコイア・キャピタルをはじめVCの投資先として、半導体、コンピュータ、ソフトウェア関連企業やM&A、不動産開発などの業務を行い、現在にいたる。著書に『超・格差社会 アメリカの真実』日経BP社、1700円(税別)

*   *   *

--ということで、小林さんに絵解きをお願いしたいのですが。

小林:反対論のコアは非常に簡単、明快ですよ。

「経営上の基本的な問題を解決しなかったら、何度救済しても、アメリカの自動車メーカーは生き返らない」

 これです。

 問題解決には、Chapter 11(チャプターイレブン、米連邦破産法第11章、日本で言う民事再生法)に持ち込んででも、客観的でクリアな、かつ厳しい制約を課し、経営体制を根本的に刷新するべき。だから救済案は通せない。

--破産法とか言われると、GMやクライスラーが「世の中から消えてしまう」イメージがありますよね。

小林:消えません。Chapter 11を適用して債権者の支援を受け、経営を立て直した例はこれまでにも無数にあります。自動車関連で言えばDura Automotive SystemもChapter 11から再生したし、ユナイテッド航空も長い間Chapter 11 で運営し、再生しました。

 現在の体制のままで再生はできない、と言う点では、アメリカの代表的なプライベートエクイティ(PE)ファンド、サーベラスが8割の株式を握るクライスラーは、もっと深刻ですね。PEファンド・金融主導によるメーカー再生はなかなかうまくいかない。彼らは基本的に短期収益志向だから、企業が持っている価値を抜き出して現金化するだけ。或いは、様々な手段を使って安く買い、つまり売り手が安く売らざるを得ないような状況に追い込んで、買った時点で儲ける。そして高く転売して、買った時の儲けを実現する、といったことが多くて、なかなか価値を生み出せない。

 そういうことが分かっているから、(ファンド側を)痛い目に逢わせて、引っ込ませようとしている雰囲気もあるんです。「株主はほとんどがPEファンドの投資家、つまり富裕な個人が中心。だったら自分達の資金で何とかしろ」という冷淡な眼が米国には結構ありますね。サーベラスによる議会や政府へのロビー活動は、現在も凄まじいらしいです。影響力を背景に政治力に頼る姿勢が強烈で、それがまた反発を呼んでいる。

金融危機はビッグスリーの「基本的問題」ではない

--とはいえ、破産法適用で世の中から消えるわけではないにしても、雇用や景気には重大な影響が予想されますが。

小林:ビッグスリーが縮小する分、日本やドイツのメーカーの現地生産が増えて労働者を吸収するし、ディーラーは外国ブランドの車を扱えばいい。自動車市場・自動車産業が無くなるわけではない。本当に強い企業がアメリカでいい自動車を製造する、それこそがフェアな自由競争の原理--。そういうふうにも考えられますよね。30年前にカラーテレビで同じことが起きて以来、何度も繰り返されてきたことです。

--ということは、最初の大前提がなぜ出てくるのかが、この件を理解する一番のカギですね。「経営上の基本的な問題を解決しなかったら、何度救済しても、アメリカの自動車メーカーは生き返らない」。その「基本的な問題」は、金融危機ではない、ということですよね。何を指すんですか。

小林:山中さん、クルマはお好きですか。

--40代の中年男性として人並みには。

小林:米国のクルマで一番売れている車種は?

--ピックアップトラック(PUT)ですね。PUTについては牧野茂雄さんが「ビッグスリーが儲けてきた理由」で詳しく書いてくださいました。

小林:見る方によっていろいろ理由はありますが、私の意見では、PUTが売れるのはまず第一に「安いから」です。

コメント22件コメント/レビュー

本題とはズレますが、「田舎を切り捨てて、都会が得をしたのである。公共的な交通を民営化したことで、どれだけ地方の荒廃が進んだか、理解しようとしないのは、都会人の傲慢。国鉄民営化こそ地方格差を増大させた張本人である。」「ローカル線がなくなり、都市と地方との格差が広がり地方に人が住めなくなったこと」というコメントが2つほどあるようです。いまだにそのような主張をされるのは、人口が減りつつある21世紀の日本の実態を全く無視しているとしか思えません。高度経済成長期の発想そのもので少し唖然とします…もはや、地方も都会も均衡ある発展を、などというのは夢物語でしかないと思いますが…。すでに、地方の過疎化は避けようのない自然現象ではないでしょうか?それを無理して食い止めようとするには多大なコストが必要でしょう。問題は、その多大なコストを都会に負わせてよいのかということであって、私はとてもそうは思えません。(2008/12/16)

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「「ビッグスリーを"国鉄"と考えると分かりやすい」~米上院はどうして救済法案を白紙に戻したのか」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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本題とはズレますが、「田舎を切り捨てて、都会が得をしたのである。公共的な交通を民営化したことで、どれだけ地方の荒廃が進んだか、理解しようとしないのは、都会人の傲慢。国鉄民営化こそ地方格差を増大させた張本人である。」「ローカル線がなくなり、都市と地方との格差が広がり地方に人が住めなくなったこと」というコメントが2つほどあるようです。いまだにそのような主張をされるのは、人口が減りつつある21世紀の日本の実態を全く無視しているとしか思えません。高度経済成長期の発想そのもので少し唖然とします…もはや、地方も都会も均衡ある発展を、などというのは夢物語でしかないと思いますが…。すでに、地方の過疎化は避けようのない自然現象ではないでしょうか?それを無理して食い止めようとするには多大なコストが必要でしょう。問題は、その多大なコストを都会に負わせてよいのかということであって、私はとてもそうは思えません。(2008/12/16)

お二人の記事は、理解は出来ますが、私がズレているのかもしれませんが、私は的外れ、だと思います。「経営上の基本的な問題を解決しなかったら、何度救済しても、アメリカの自動車メーカーは生き返らない」、この論理でしたら、アメリカの自動車産業はずっと前に消えていたでしょう。アメリカにとって自動車、自動車産業は、馬に乗っていた時代からの大陸的な自由の象徴のようなドリームだったと思います。自動車産業は、科学技術者なら解ると思いますがローテクです。自動車は発明当初から基本的な変化は殆ど有りません。ITが多少加わっただけで、ローテクです。それをなぜ維持してきたかを見なければ的外れになるでしょう。 国鉄に似ている、に関しても、異論があります。まず大きく、産別労組と企業別労組の違いが、アメリカと日本にはあります。自由を守るためには、労使の拮抗が必要で、アメリカはそれを知っています。総合して、自動車に限らず全てのリサーチは、ぜひ時間と空間において、古から現代までのグローバルな視点でのリサーチを希望します。(2008/12/16)

日本のメーカーの「自助努力」の能力は、大企業から中・小企業まで涙ぐましいものがあり、世界に誇れる資質であると思う。一方で、日本経済も、いつまでも「車」や「家電」の勢いに頼るのではなく、新しい産業やサービスを創出し、雇用の受け入れ先を広げる必要があるのではないかと感じる。(2008/12/16)

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三品 和広 神戸大学教授