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日本一視察の多いスーパー、ハローデイの感動経営(下)

不況に負けない「非効率」という競争力

2008年12月19日(金)

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(前々回「ライバルが目を剥く衝撃の売り場」から読む)
(前回「楽しく働く従業員が強い店を作り上げた」から読む)

*本文中の写真はクリックすると拡大表示されます。

 20年前の出来事が今も心に突き刺さっているのだろう。

 徳力店に隣接したハローデイの社長室。何の気なしに入社の経緯を尋ねると、加治敬通社長の柔和な顔が大きく歪んだ。

 「あの時、私は逃げだそうとしたんですよ」

 ハローデイを設立したのは加治社長の父、久典氏(現会長)である。後継者としてごく当たり前に入社したと思っていただけに、加治社長の泣き出さんばかりの反応が意外だった。だが、「働きたいスーパー日本一」という加治社長の思想は、入社の際の葛藤があってこそ生まれたものだった。

 話は1989年に遡る。

実質破綻の決算書

 東京の大学を卒業した加治社長は、家業を継ぐことを前提に、都内のスーパーで修業していた。昼は店舗運営の実務、夜は経理や財務などの計数管理を学んでいた。そして、3年が過ぎたある日、たまたま帰省した時にハローデイの決算書を目にした。その時、加治社長は我が目を疑った。

15年前、ハローデイは破綻の瀬戸際にいた(写真は姪浜店:高口裕次郎、以下同)

15年前、ハローデイは破綻の瀬戸際にいた(写真は姪浜店:高口裕次郎、以下同)

 売上高60億円に対して営業利益は1億円の赤字。本業はガタガタの状態である。その一方、借入金は60億円に達していた。しかも、借入金利は約10%。営業赤字の中、6億円近い利払いを続けていた。この状況で破綻しない方が不思議だった。

 業績悪化の要因は無謀な多角化にあった。ハローデイ(旧かじや)は加治社長の父、久典氏が1958年に設立した。事業欲が旺盛だった久典氏は本業の食品スーパーだけでなく、レストランやコンビニ、豆腐製造など様々な業態に手を広げた。その事業欲が裏目に出ていた。

 「これは無理だろう」。

 決算書を見て呻いた加治社長はハローデイを継ぐのをあきらめ、別の企業に転職しようとした。そんな長男の反応を見て、久典氏は1つの決断を下した。それは、優良な2店舗を残してほかの14店を福岡のライバル企業に売却するという決断だった。

「なぜこの会社は生き残ったのか」

 父親が見せた覚悟が加治社長の胸に突き刺さった。1958年にかじやを設立した久典氏は30年で16店まで店を拡大した。手塩にかけて育てた店をよりによってライバル企業に売却する――。「せめて美田だけでも…」という親心。その決断は並大抵のものではなかっただろう。「逃げようとした自分が恥ずかしくなった」。加治社長は、かじやを継ぐ決心を固めた。

 その後、ある店舗の店長になった。死にものぐるいで働くと、1年後には8000万円の純利益が出ていた。「これならやれるかもしれない」。手応えをつかんだ加治社長は同業他社への店舗売却を撤回。生鮮スーパーに特化し、ほかの業態や遊休地はすべて売却していった。

 経営危機の最中では、多くの従業員が辞めていった。それまでの取引先もハローデイに背を向けた。なのに、会社だけは生き残った。なぜ倒産しなかったのか。なぜ会社が存続しているのか。それを、親子2人で話し合った。そして、1つの結論にたどり着く。

 会社が傾いた要因は多角化にあった。それは、「株式公開」という久典氏の夢を実現しようとした結果である。その過程にあったのは、自分の夢を実現するという思いだけ。会社で働く従業員を大切にするという姿勢はなかった。「ありがとう」と感謝の気持ちを口にするが、その言葉に魂が入っていなかったのだ。それに気づいた親子は、ハローデイを日本一、働きたいスーパーにすることを経営の目標に据えた。

 それ以来、従業員を楽しませることに全力で取り組み始めた。

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「日本一視察の多いスーパー、ハローデイの感動経営(下)」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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