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第1話 女子高生にも「いってらっしゃいませ」

  • 出井 康博

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2008年12月26日(金)

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 師走は議員も忙しい。

 12月、民主党代議士・Aは東京と地元を飛行機で毎日のように往復している。午前中は国会に出て、夕方には地元で支持者との忘年会に参加する。そして時間があれば、早朝から駅頭に立つ――。

 この日は午前6時50分、秘書の運転で選挙区内にある駅に到着した。駅は郊外のベッドタウンに位置しているが、通勤客はまだまばらだ。小雨が降る中、すでにもう1人の秘書がやってきていて、緑地に白い文字でAの名前が大きく書かれたノボリとスピーカーを、駅に上る階段脇に設置している。

 その秘書と少し言葉を交わした後、Aはロータリーで客待ちをするタクシーの運転手たち、続いて違法駐輪車の取り締まりをしている老人のもとへと近づき、深々と頭を下げた。馴染みなようで、彼らも笑顔で応えている。

午前5時半起床、「朝ズバッ!」を横目に身支度

 そして再びノボリとスピーカーの設置された場所へ戻ると、ネクタイを締め直し、小さく咳払いをした。ちょうど午前7時、駅頭演説を始める時間だ。

早朝、最寄り駅で短いフレーズで訴える候補者A

 「おはようございます。わたくしは、皆様の代表として国会に行かせていただいております、民主党のAでございます…」

 ゆっくりとした調子で、声は張り上げない。ハンドマイクの音量も抑えている。通勤客に迷惑がられては、せっかくの演説が逆効果になってしまう。

 Aは前夜、地元市会議員らのインターンを務める学生たちとの飲み会に参加した。酒を飲まない議員の車で送ってもらい、自宅に戻ったのは午前0時を回っていた。

 今朝は5時半に起き、みのもんた司会のワイドショー「みのもんたの朝ズバッ!」を横目に身支度をした。この番組には民主党の同僚議員が出演することも多いが、顔ぶれはいつも同じだ。Aのような知名度の低い議員に声が掛かることはない。

 午前6時過ぎ、事務所でリースしているプリウスに乗って秘書が自宅まで迎えに来た。朝食はダイエットのため抜くのが習慣だ。夜は連日のように会食が続く。Aは酒を注がれると必ず飲み干してしまう。体重は放っておくと、どんどん増えていく。健康診断では中性脂肪と血糖値に注意するよう指摘された。規則正しく運動できればいいだろうが、ジムに通うような時間などない。

 車の中で朝刊の見出しに目を通す。新聞は自宅、地元と東京の事務所、2人の秘書で別々のものを1紙ずつ購読している。気になる記事があれば秘書から報告してもらう。

胸のポケットにはiPhone、ネット接続に予定の確認

 新聞をたたむと、胸のポケットからiPhoneを取り出した。インターネットに接続し、新たな予定が入っていないか確認するためだ。購入したばかりで、スクロールする手つきがたどたどしい。40代半ばになって老眼が進んだのか、小さな字が見え難い。

 「じゃあ、今日はそこを右に曲がって」

 iPhoneを操作しながら、後部座席から道順の指示を細かに出す。通い慣れた駅までの運転すら、秘書に任せられない性格なのだ。

 Aには初めての選挙で落選した過去がある。その後、次の選挙までの丸3年間、自らハンドルを握って選挙区内を隅々まで走り回った。落下傘候補として見ず知らずの土地にやってきたAだが、今では「地元のタクシーの運転手よりも道には詳しい」と自負している。

コメント19件コメント/レビュー

未だにそういうスタイルが票につながると思うとがっかりするのだが、それが現実だろうと納得もする。コメントを読んで思うのだが、自分自身はそれを毛嫌いしても、そういう実態は有権者の鏡ではないのか。単純に否定するのではなく、サポートする人が増えない限り、なくならないのではないか。(2009/01/05)

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いただいたコメント

未だにそういうスタイルが票につながると思うとがっかりするのだが、それが現実だろうと納得もする。コメントを読んで思うのだが、自分自身はそれを毛嫌いしても、そういう実態は有権者の鏡ではないのか。単純に否定するのではなく、サポートする人が増えない限り、なくならないのではないか。(2009/01/05)

30代後半の銀行勤務の会社員です。通勤途中の風景でよく見ます。効果の程は?と誰もが思うでしょう。この記事で知ったのは、行っている本人が本当に必要な活動を感じている事に驚きました。この活動で喜んで共感しているのは特異な人たちでは?真に一般の世帯と向き合いたいなら皆が集まる場所を調査分析もしくは創出して共感の輪を広げないと・・・最近、政治が身近にとの言葉を聴きかますが、議員の周りに取り巻いている人たちは、一般の国民とは違う。。。そんな状況に疑念を感じているこの頃です。!今日始めて、こんなに声を出して語ってしまった。。。(2008/12/27)

正直、集票=選挙運動=政治家業であることは事実ですからそれを今更否定する気はありませんが、それを"公僕"とまで持ち上げるのには違和感を禁じえません。あくまで握手や集票運動は"私に投票して下さい"という利己的意図による行為であって(最終的に当選しない政治家などタダの人以下であり落選するとどんな政策論議も無意味だとはいっても)せいぜい仕事の主従でいえば二義的であるべきものを筆者もA氏もやはり忘れかけていらっしゃるのかな、と正直感じます。(あえて目下の準戦時体制を取り上げているというためかもしれませんが)現実だから致し方ないとはいえ、陳情含めそういった個々の案件に注力して政策や法案にかまける時間が妨げられるのは本末転倒でしょう。大仰な話をすれば何のために地方行政があるのかなと思いますし、いっそ百害あって一利もない半端な二院制はそういった国策的マクロとミクロレベルに分けて運営すればいいのにと思います。(その意味ではまだ戦前の貴族院衆議院制度の方が現実的でしょうか)A氏も努力される普通の方というのは拝察いたしましたが、やはり二世議員以外の普通の方でも行政に使われる以上の政治家になる事は難しいのだな、と改めて思います。ご本人に非があるというよりは全く致し方のないことなのですけれども。(2008/12/27)

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