• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

ゴールドマン・サックス会長、中国で強気の講演
「我々自身の手で経済成長を創り出す」

清華大学でブランクファイン会長兼CEOが見せた“健全な強欲”

  • 田原 真司

  • 小瀧 麻理子

バックナンバー

2008年12月22日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「コンピューター付きブルドーザー」――。その人物のスピーチを聴きながら、思わず故・田中角栄元首相の異名を思い出した。話しぶりには知性がにじむが、それ以上に聴衆を圧倒する押しの強さを感じたからだ。

 人物の名はロイド・ブランクファイン。“世界最強の投資銀行”と呼ばれる米ゴールドマン・サックスの会長兼最高経営責任者(CEO)である。

 ゴールドマンは、欧米の金融機関を次々に破綻させたサブプライム関連証券で大きな損失を出さず、黒字決算を維持し続けた唯一の投資銀行だった。しかし、今年9月のリーマン・ショック以降はほとんどの金融商品やコモディティが世界的に暴落したため、その打撃は避けられなかった。12月16日に発表した第4四半期決算(2008年9~11月期)で、ゴールドマンは上場以来初の21億2100万ドル(約1900億円)の純損失を計上した。

ロイド・ブランクファイン氏

米ゴールドマン・サックス 会長兼最高経営責任者(CEO) ロイド・ブランクファイン氏

 その5日前の12月11日夕刻、ブランクファイン氏は北京の清華大学経済管理学院を訪れ、ホールを埋め尽くした数百人の学生を前に講演した。未曾有の金融危機の最中、震源地である米ウォール街の大手投資銀行トップが学生を相手にスピーチするのは異例だ。しかも、四半期決算を間近に控え、香港、北京、東京の3都市を3日間で回るという超過密スケジュールを縫い、公の場に唯一姿を見せたのがこのイベントだった。

 その目的は、ゴールドマンが今年3月に打ち出した社会貢献プログラム「10000 WOMEN(テンサウザント・ウーマン)」の宣伝である。アフリカ、インド、中国など発展途上国の女性1万人を対象に、欧米の有力ビジネス・スクールや途上国の大学、NPOなどと連携し、女性たちにビジネスや経営管理の専門知識を学ぶ機会を与えるというもの。このプログラムにゴールドマンが提供する資金は5年間で1億ドル(約90億円)と、一企業の社会貢献事業としてはケタ外れの規模だ。

 しかし宣伝だけが目的なら、時期が時期だけに代理に任せることもできたはずだ。後述するが、ブランクファイン氏がわざわざ演台に立った背景には、中国政府に深く食い込むゴールドマンと、その橋頭堡としての清華大学という親密な関係がある。

 いずれにしても、金融危機の渦中で“最強の投資銀行”の現役トップが今何を考えているのか、生の声を聞く機会は貴重だ。講演会ではマスコミの質問はシャットアウトされたが、学生との質疑応答からは、ブランクファイン氏の経営哲学やゴールドマンの企業文化が鮮明に浮かび上がった。その模様を解説を交えながら紹介しよう。

(北京支局 田原真司、日経ビジネス記者 小瀧麻理子)

*    *    *    *

 ゴールドマンの存亡をも揺るがす金融危機の最中、そのトップが社会貢献活動をテーマに講演するというのは、どこかミスマッチな感が否めない。学生たちもそう感じていたのだろう。質疑応答での関心は、当然のように社会貢献活動に対する金融危機の影響に向かった。

 問 金融市場を取り巻く厳しい事業環境がゴールドマン・サックスの経営に影を落とし、社会貢献プログラムを見直す可能性はありませんか。

  「10000 WOMEN」への取り組みを見直す考えはまったくありません。なぜなら、このプログラムは単なる社会貢献活動ではなく、我々にとって本物の投資であり、ビジネスの重要な一部だからです。

 我々は常に世界中で経済成長を追い求めています。我が社の成長と(ある地域または市場の)経済成長は、切っても切れない関係にあるからです。成長の芽がどこにあるかを探し求めるだけではありません。大切なことは、我々自身の手で成長を創り出すことです。「10000 WOMEN」はゴールドマン・サックスにとって、将来の経済成長を創り出すために我々が今日できる最も重要な投資なのです。

 問 金融危機の影響により、中国戦略に変化はあるのでしょうか。

  我が社の創業は1869年ですが、1869年から2008年までの間に何もかもが変わりました。なぜなら、我々は環境の変化や新しい機会に常に適応し続けてきたからです。最近10年だけをとっても、比較的小さな会社から非常に大きな会社になり、投資アドバイス主体の事業から直接投資に領域を広げ、米国中心からグローバルな投資銀行へと大きく脱皮しました。

我々が求められるのは、成長あってこそ

 そして、現在の環境にも適応しようとしています。我々は最近、(証券専業会社から)銀行持ち株会社に転換しました。これにより、従来の投資銀行業務をそのまま続けられるだけでなく、預金の募集や融資などの業務にも進出できるようになりました。新たな挑戦ですが、結果として会社は成長を続けると思います。現在の経営環境は確かに厳しいものですが、我が社には140年にわたり幾多の困難を乗り越えてきた強さがあります。現在の困難も必ず乗り越えられると楽観しています。

 先ほども言ったように、我々の成功は経済成長に依存しています。そこに経済成長があるからこそ、人々は我々のサービスを求めるのです。企業が成長する時、経営者は事業に投資し、ともに投資してくれるパートナーを探し、資本を調達し、アドバイスを求めます。そのすべてが我々の出番なのです。

 我々が魅力を感じるのは、経済成長が世界中で最も急角度なところです。中国は長年にわたって高度成長を続け、景気の悪い時期でさえ成長率は世界の他の国々を上回っていました。それこそが、今ここにいる理由です。現在の経済環境下でも、中国に対する姿勢は変わりません。

*    *    *    *

 公の場で弱気は見せられないことを差し引いても、ブランクファイン氏の受け答えに言い訳がましいところはなく、どこまでも強気だった。印象に残ったのは、飽くなき成長を前のめりに追求し続ける一貫した姿勢だ。

 世界中から選りすぐった頭脳集団が高いリターンを競い合うゴールドマンの企業文化は、金融業界では皮肉とやっかみも込めて“健全な強欲”と形容される。途上国の女性の社会進出支援プログラムを「ビジネスの一部」と言い、「自身の手で成長を創り出す」と語るブランクファイン氏の発言には、そんな企業文化がストレートに表れていて興味深い。

コメント7

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

グローバル市場でいい仕事をしたければ、まず「世界に通用する見識」を磨くことだ。

中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授