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2009年混沌の先
米国発2つの「ネオ」の未来は

デービッド・ハーベイ・ニューヨーク市立大学教授

  • 大野 和基

  • 日経ビジネス オンライン編集部

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2009年1月5日(月)

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 ネオコンサーバティズム(新保守主義)とネオリベラリズム(新自由主義)。この、米国が信望し世界に広めてきた2つの「ネオ」は、泥沼化したイラク攻撃、サブプライム・ショックの深刻化で、その勢いは急速になくなりつつある。

 「米国型民主主義を世界に広めることは、米国の使命である」

 『ネオコンの論理』(光文社)を著した米国の政治評論家、ロバート・ケーガン氏は、かつてこう断言した。この独断的で偏屈的な思想に基づいて行動した結果、イラクには民主主義が誕生するどころか、未だにカオスの状態となった。この大失策でネオコン思想は急速にパワーを失っていく。

 蓄積が進む資本のさらなる蓄積を求めて、このネオコンとある種、連関しながら膨張してきたのがネオリベこと新自由主義と言える。米国がイラクで公共事業の完全民営化や外資開放を押し進めたように、ネオリベは規制緩和、公的部門の民営化、金融の自由化などを推進する。

 こうしたネオリベの在り方に批判的考察を繰り広げてきたのが、20世紀後半の最も影響力のあると言われる地理学者のデビッド・ハーベイ米ニューヨーク市立大学教授だ。ハーベイ氏はマルクスの資本主義理論を地理学的視点から考察した『資本の限界(邦訳は空間編成の経済理論)』を著作に持つように、その研究対象は地理学にとどまらず、政治経済学など多岐にわたる。ハーベイ氏は現状をどう捉えているのか。


デビッド・ハーベイ(David Harvey)氏

デビッド・ハーベイ(David Harvey)氏
米ニューヨーク市立大学人類学科教授
1935年英国生まれ、英ケンブリッジ大学で博士号取得、英オクスフォード大学教授、米ジョンズ・ホプキンズ大学教授などを経て、現職。都市研究の第一の理論家で、20世紀後期の最も影響力のある地理学者と呼ばれる。新自由主義にまつわる言及も多く、主な著者に『ネオリベラリズムとは何か』(青土社)、『ニュー・インペリアリズム』(青木書店)、『新自由主義――その歴史的展開と現在』(作品社)、『パリ――モダニティの首都』(青土社)、『都市の資本論――都市空間形成の歴史と理論』(青木書店)などがある

 ハーベイ氏は新自由主義を「この思想は基本的に自由市場、個人の財産権、起業の自由、民営化によって特徴づけられ、国家は経済における直接投資の価格を決めるのに、後部席を取る(干渉しない)ことによって、個人の自由がもっともよく保障されるという考え方である」とする。

 つまり、反ケインジアン的社会民主主義的な政府の形であり、これは多くのヨーロッパ諸国に存在し、さらに米国にも1950年代、60年代、ある程度その思想はあった。実際に米国でこの思想が影響力を持ち始めたのは1970年代で、国は経済への介入をやめて、国営企業の民営化を実行し、市場の自由化に向かって大きく動いたのである。

 元々ミルトン・フリードマンなど経済学者たちが考え出した理論だが、その後押しをしたのは、ファイナンシャル・タイムズのようなメディアであった。この思想が台頭した背景には、国営企業は利益を生み出すのに苦労し、課税によってもっとも裕福な階層も縮小していったことがあげられるだろう。

リベラリズムとネオリベラリズムの差は

 では、いわゆるリベラリズム(自由主義)とどこが異なるのか。ハーベイ氏はこう解説する。

 「古典的リベラリズムであるアダム・スミスは国の経済への介入には反対ではなかった。ネオリベラリズムは市場がどのように機能するかという点で、この古典的リベラリズムとは考えを異にし、マネタリスト的考え方をする」

 南米ではネオリベラリズムはポピュラーな思想で、チリでは1973年のクーデターのあとピノチェット政権は典型的なネオリベラリズム政策を導入し、奇跡と呼ばれるほどの経済成長を実現している。

 米国では1975年のニューヨーク市の財政危機からネオリベラリズムの思想が台頭し、投資銀行が市を乗っ取ってしまった。その次に起きたことが、どんなことがあっても金融機関を保護するという政策であり、レーガン政権の主だった政策になった。

 さらに英国では1979年誕生したマーガレット・サッチャー政権が、まさにこのネオリベラリズム政策を強引とも言えるパワーで実行し、航空会社、水道会社、電話会社など国有会社の民営化を断行した。

 ネオリベラリズム政策の特徴の1つは労働組合の力を骨抜きにすることだが、チリでは労組は破壊され、レーガンも米国の労組を激しく攻撃し、サッチャーも英国で炭鉱の労組と熾烈な戦いを展開し、組合労働者を骨抜きにしてしまう。

 しかしながら、実際に起きたことは世界中の労働者の生活水準が上がることはまったくなく、英国や米国ではほとんどの労働者は1970年代よりも暮らし向きがよくなることはなかった。ハーベイ氏の著書『ネオリベラリズムとは何か』で、米国で収入の最も多い0.1%が国民の総収入に占める割合は78年の2%から99年には6%以上に増加していることを指摘する。

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