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市場経済化する箱根駅伝

2009年1月7日(水)

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 東洋大学が出場67回目にして箱根駅伝で初優勝を飾った。去年は、辛うじてシード権を確保する10位だったが、今年は、10000m29分台が20人以上という選手層の厚さで他校を圧倒した。

 下馬評では、駒澤大学、早稲田大学に次ぐ3番手だったが、昨年の優勝メンバーから5人が卒業し、日本選手権の5000mで4位に入った深津卓也が座骨神経痛で欠場した駒大、9区を走る予定だった準エースの高原聖典が直前になって欠場した早稲田に対し、東洋大は6区を走る予定だった主将の大西一輝がアキレス腱の痛みで欠場したものの、類のない選手層の厚さでそれを補った。

 昨年と今年の総合タイムを比較すると、2位の早稲田が去年より2分26秒遅いのに対し、東洋大は7分58秒速くなっている。このうち6分23秒が、5区の1年生・柏原竜二によるもので、早稲田は柏原ひとりに負けたと言えなくもない。東洋大は、2年生の長距離部員が痴漢行為をして、大会1カ月前に川嶋伸次監督が辞任するという不幸があった。「出るからには恥ずかしい走りはできない」という強い思いが選手たちにあったことは間違いないだろう。事件を起こした2年生と同学年の8区・千葉優で首位に立ち、やはり2年生の9区・大津翔吾、10区・高見諒が首位を守った。

 敗れたとはいえ、早稲田も総じてよい走りをした。特に、2人の1年生(1区・矢沢曜、4区・三田裕介)が区間賞を獲ったことは、来年に向けての明るい材料になった。また、一般入試を経て競走部の門を叩き、それぞれ4年生になって初出場した9区・朝日嗣也(教育学部)と10区・三戸格(政経学部)が、区間5位、同3位と立派に務めを果たしたのは爽やかだった。特に朝日は、一浪して教育学部に入り、当初5000mで15分30秒が切れず、仮入部扱いだったが、3カ月で15分30秒を切るという条件をクリアして部に残った苦労人である。

第55回箱根駅伝で早稲田大学の走者として瀬古利彦からタスキを受け継ぐ筆者 (c)講談社

第55回箱根駅伝で早稲田大学の走者として瀬古利彦からタスキを受け継ぐ筆者 (c)講談社

 私が早稲田大学の選手として箱根駅伝を走ったのは、約30年前の第55回大会(3区)と第56回大会(8区)である。故・中村清監督の指導の下、3年のときは瀬古利彦(2区)から首位のタスキをもらった。

 2回とも、抜きもせず、抜かれもしない「一人旅」だったが、当時から箱根駅伝は、大学駅伝の最高峰で沿道の応援も多く、生涯の思い出として心に残っている。今のようにテレビ中継もなく、静かな心でレースと向き合うことができた。

 箱根駅伝が「ショー化」したのは、1987年に日本テレビが中継を始めたときからだ。平均視聴率は20~30%というお化け番組になり、サッポロビールのスポンサー料は10億円を下らないと言われる。

 大学経営者たちは、受験生を集めるための格好の宣伝手段として力を入れ始めた。山梨学院大学、中央学院大学、帝京大学、上武大学などの新興校は、ユニフォームも、早稲田の「W」や順天堂大学の「仁」のロゴマークと違って、漢字で校名が書いてある。監督のほかに、コーチ、トレーナーなどのスタッフも揃え、合宿費など様々な金銭的な便宜を与え、選手のスカウトにあたっては、授業料免除のほか、少なからぬ支度金も支給している。

 私の頃は、中村孝生と新宅雅也が日本体育大学に入学するときに、テレビと冷蔵庫をつけてもらったという噂があったので、瀬古の地元関係者が「瀬古には何をつけてくれるんですか?」と訊いたら、中村監督が「馬鹿者! 神聖な陸上競技を何と心得る!」と怒ったという逸話がある。真偽は不明だが、いずれにせよ当時の選手の待遇はその程度だった。

 あえてどことは書かないが、今回の出場校の中には、入試偏差値が40そこそこの大学が何校かあり、受験さえすればだいたい合格する。近い将来、少子化の影響で定員割れし、経営危機に陥らないとも限らない。こうした大学が、宣伝手段として箱根駅伝に着目しても不思議はない。

 一方、今回優勝した東洋大学は、ここのところ強気の学園経営で知られている。総合情報学部やライフデザイン学部といった新学部・学科を数多く開設し、遠隔地の朝霞キャンパス(埼玉県)にあった文系の教養課程を都心の白山キャンパスに移転するなど、次々と改革を行っている。昨年は、硬式野球部が東都大学リーグにおいて2年連続で春・秋連覇し、明治神宮野球大会でも2年連続優勝を成し遂げた。今回の箱根駅伝初優勝で、経営に一層に弾みがつくだろう。

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「市場経済化する箱根駅伝」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長