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投機悪玉論の不毛

金融パンデミックを生き残る免疫力を身につけろ

  • 竹中 正治

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2009年1月15日(木)

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 米国を震源地とした今回の金融危機は「投機・マネーゲームの暴走」の結果であり、マネーゲームを助長する「米国流金融資本主義」の破綻であるという議論は今日世に溢れている。

 筆者もそうした点は否定しないが、単純な投機悪玉論や「金融資本主義の破綻」みたいな大袈裟なばかりで単純過ぎる議論は不毛だ。本当に必要なことは何なのかを考えてみよう。

昔から繰り返されてきた「マネーゲームの暴走」への批判

 まず、経済が投機・マネーゲーム化することへの批判や警鐘は、実は2000年代や1990年代に始まったことではない。

「金融システムは急速に巨大なカジノ以外の何物でもなくなりつつある」

 こう言って、スーザン・ストレンジが著書『カジノ資本主義』(岩波書店)でカジノ化する貨幣・金融の世界が実物経済の不安定性を拡大していると語ったのは1986年だ。もっと昔にさかのぼることができる。

 「財産が急激な変動をし始めると、企業家自身、その保守的な気質を失い、正常な企業活動から得られる少ないが永続的な利潤よりも、瞬時の巨額の利潤のことを考え始める。(中略)手早い金儲けの方に気を取られるようになる」

 ケインズが『貨幣改革論』(中公クラシックス)の中でこう述べたのは1923年であり、1936年の『雇用・利子および貨幣の一般理論』(東洋経済新報社)の中では次のようにも書いている。

「企業が投機の渦巻きの中の泡沫となると事態は重大である。一国の資本発展が賭博場の活動の産物となった場合には、仕事はうまくいきそうにない」

 京大の間宮陽介教授は著書『ケインズとハイエク―『自由の変容』(中公新書)の中でこう述べている。

「財貨が資産性を帯び、流動性を高めていくことのひとつの帰結は経済の金融化である。(中略)こうして資産市場での売買は、価格の変動にまつわる局所化された不確実性を利益の源泉とするマネーゲームの様相を呈してくる」

 この本の出版は1989年であり、証券化ビジネスが米国で本格化する以前である。予言的洞察と言うべきだろう。

貨幣の発明が富の無限蓄積への衝動を駆り立てた

 実際のところ、現代資本主義の歴史を通じて各時代に金融・資本市場の革新(イノベーション)が起こるたびに、それに乗じた「マネーゲームの暴走」とバブルの崩壊が繰り返されてきた。

 いや、待てよ。それは20世紀になってからのことなのか──。

 人類史上最初で最大の金融革新は貨幣の発明だった。貨幣の登場によって人類の一部にそれまでにない行動パターンが生まれた。際限のない富の蓄積への衝動である。これは貨幣の機能により初めて一般化された行動パターンだと言える。資産の売買を通じて際限なく富を蓄積しようとする「マネーゲーム」の起源は貨幣の起源とともに古いと言えるかもしれない。

 そもそも私たちの「市場活動」とは2つの異なった層から成る。1つは実物的な財やサービスの供給と消費から構成される実体経済の市場である。もう1つは金融資産の取引から成り、際限のない金銭的価値の蓄積を目的とする行動原理が支配し、各種の金融資産の価格(=相場)が形成される市場である。

 実体経済の市場では、経済の参加者がある程度は独立した選好を持ち、自己の利得・満足の実現のために合理的に行動することを前提とすれば、自由な消費、生産、投資が自己調和的な秩序を形成すると考えることに一定の根拠があるように見える。消費財の価格の上昇(下落)は供給を促進(抑制)し、消費を抑制(促進)する。

 つまり「ネガティブ・フィードバック」が強く働いているので、調和的・安定的なバランス回復力が働く。現実には選好はそれほど独立しておらず、他者の行動に依存した選択と行動も頻繁に見られるのであるが…。

コメント13件コメント/レビュー

残念ながら、記事のみではなく、多くのコメントも本質論が何処に有るのか見えていない様に思われます。金融市場には「投資」と「投機」が有り、投機は無くす事が出来ないので、金融市場に悪影響が出ない様に、ある程度の規制して行くと。 しかしながら、この問題の本質はもっと根深いもの...と何故、思わないのでしょうか? 投機で動く財貨が幾ら大きくとも、それらがラスベガスで動いている限りは、実体経済に深刻な打撃を与えるものとならないでしょう。 また、株式市場は、ラスベガス化を防ぐ為に色々な規制が設けられて来ました。 では、何故、サブプライムとかCDSとかオフバランス化が規制されなかったのでしょうか? また、マーカンタイル取引所での規制が撤廃され、総取引量の1%にも満たない取引で原油価格が乱高下する様になったのでしょうか?(欧州からは規制撤廃を戻すべきとの主張されたのに) そこに政治的意図が隠されており、その意図が思わぬ失敗を生んでしまったと推測しないのでしょうか?(2009/01/16)

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いただいたコメント

残念ながら、記事のみではなく、多くのコメントも本質論が何処に有るのか見えていない様に思われます。金融市場には「投資」と「投機」が有り、投機は無くす事が出来ないので、金融市場に悪影響が出ない様に、ある程度の規制して行くと。 しかしながら、この問題の本質はもっと根深いもの...と何故、思わないのでしょうか? 投機で動く財貨が幾ら大きくとも、それらがラスベガスで動いている限りは、実体経済に深刻な打撃を与えるものとならないでしょう。 また、株式市場は、ラスベガス化を防ぐ為に色々な規制が設けられて来ました。 では、何故、サブプライムとかCDSとかオフバランス化が規制されなかったのでしょうか? また、マーカンタイル取引所での規制が撤廃され、総取引量の1%にも満たない取引で原油価格が乱高下する様になったのでしょうか?(欧州からは規制撤廃を戻すべきとの主張されたのに) そこに政治的意図が隠されており、その意図が思わぬ失敗を生んでしまったと推測しないのでしょうか?(2009/01/16)

金融市場の目的の一つ、ヘッジのための売り、リスクテイクのための売りの概念がすっぽり抜け落ちているために論理的には整合性があっても前提が間違っている。なので、現物市場がネガティブフィードバックが掛かって調和的・安定的なバランス回復力が働き、金融資産の市場(で)は経済主体の選好が極度に他者同調的依存型になる」とうっかり間違っている書いてしまう。実際、市場に参加をすると分るが、値の乱高下は金融市場特有というよりは買いしか出来ない現物市場の方が大きい。つまり、ヘッジ及びリスクテイク(投機)売りが出来ない市場は、パニックになりやすいということだ。それが、サブプライムローン証券化問題の全てなのだ。よく、デリバティブ(投機)はゼロサムだから一方の利益は他方の損だとして批判する向きもある。だが、考えてみて欲しい。本当にゼロサムなら、富は移転するだけであって、経済全体に与える影響はない筈である。つまり、これは投機が問題なのではなく、投資が問題なのである。(2009/01/16)

人間は何事にも行き過ぎることがある。ただそれだけのことです。 迷惑の度合いが異なるだけで。 ただ、今回の金融危機に関しては、理論と現実の乖離をシステムの運用側が軽視していたことは反省すべきだと思います。今回は、テクニカル分析とシステムトレードの蔓延で、本来その分析手法とシステムの研究に使われたのと異なる市場、商品においても同じ理屈が通じると過信し、それぞれの市場固有の要素を理解しないまま多くの市場でほぼ同じ形式のシステムを運用し、ファンダメンタルと市場規模を無視した値動きにしてしまったことが、今回分散投資すら機能しなかった要因だと考えていますが、いまさらそれを規制することもできないでしょう。とりあえず、非合理的に見えても、ある程度業種ごとの取扱に関する区分は残しておく必要があるかと思います。(2009/01/16)

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