衰退、そして一極時代の終焉。
イラク戦争の失敗、世界的な金融危機の発信地となった米国を巡り、悲観的な見方がわき起こっている。こうした悲観論を一蹴するのが、米ニューズウィーク国際版のファリード・ザカリア編集長だ。
同氏は昨年5月に『アメリカ後の世界』(徳間書店、日本語版は12月)を出版し、その中で「米国が衰退しているのではなく、芽を出す繁栄が、発展途上国に広がり、ブラジル、中国、インドネシア、インドの生活水準を上げた」つまり、米国以外の国の台頭であると主張した。また米国は、優れた教育システムと若い才能がある移民の流入によってますますエネルギーを与えられ、強い国であり続けるというのだ。
世界に米国衰退説をまき散らしたブッシュ政権が終わり、オバマ政権に入った米国の行方について、ザカリア氏に聞いた。
ファリード・ザカリア氏
(Fareed Zakaria)
米ニューズウィーク国際版編集長。1964年インド生まれ、18歳の時に米国に留学。米エール大学卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士号を取得。2000年10月より現職。1999年にエスクワイア誌に、「21世紀の最も重要な21人」の1人に選ばれる。名コラムでは数々の賞を取る。現在はニューズウィーク誌に定期的にコラムを掲載するほか、米ニュース・ネットワークのCNNで毎週日曜放映の「ファリード・ザカリア GPS」でホストを務める。著書に『民主主義の未来−リベラリズムか独裁か拝金主義か』(阪急コミュニケーションズ) に『アメリカ後の世界』(徳間書店)がある
「バラク・オバマ大統領がやるべきジョージ・ブッシュ政権のレガシーの後始末については、2つのレベルがある。1つは単独行動主義を改め、国際協調や国連など国際機関を重視した外交に方向転換することである。これは考え方やレトリックを少し変えるだけで実行できるからそれほど難しいことではない」
「2つのもう1つは、レトリックなど、ムードを変えるだけでは済まされない問題である。実質的に考え方の不一致がある領域だ。例えばアフガニスタンについての国際協力について、米国の立場は、同盟国は積極的に協力すべきであるという考え方であるが、欧州は派兵してもすぐに撤退するなど非協力的である。日本は歴史的に見ても驚くほど協力している」
「米欧の溝は、米国の国務長官が微笑を浮かべ、ソフトな口調になっても、政策や理念が根本的に違うのだから、そう簡単に埋められないだろう。ただし、米国はオバマ政権になって国際協調を重視する外交に変える。これによって米国以外の国も、多国間主義(multilateralism)に基づいた行動を求められるだろう」
単独行動主義から路線を変えて国際協調に振り子を振っても、中心は米国であるとザカリア編集長は主張する。米国に対する世界の信頼は揺らいでないのだろうか。
なおさら米国への信頼や依存が増していく
「私は楽観的に見ている。世界は、より強い米国を望んでいる。テロリズム、エネルギー、気候変動、経済危機、すべての面で米国なしでは問題は解決しないと世界は認識している。米国が国際的に協調しながら積極的に解決しようという態度を具体的に示せば、なおさら米国への信頼や依存が増していくだろう」
こうした楽観論の背景には、2003年のイラク戦争開戦の時から世界のリーダーが代わったことも重要な要素である。フランスではシラク大統領がサルコジ大統領に、ドイツではシュレーダー首相からメルケル首相になった。「ブラウン英首相はブレア前首相と変わらず親米であり、日本は首相が誰になろうと、常に親米であることに変わりはない」とザカリア編集長は指摘する。
2002年に『帝国以後』(藤原書店、日本語版は2003年)を上梓した米国の衰退説支持派の第一人者でフランスの著名な歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は、昨年10月に出版した『Après la démocratie(デモクラシー以後)』で、「米国の覇権はもはや信仰にすぎない」ことを改めて説いた。そのトッドの見方にファリード・ザカリアは反論を唱える。
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