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円高相場は異常ではない

行天豊雄・国際通貨研究所理事長に聞く

  • 真弓 重孝

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2009年1月28日(水)

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 2009年日本はマイナス成長の見通しが広がるのを受け、株式市場は日経平均株価が8000円割れ、円・ドル相場は1ドル=90円を割る円高となっている。輸出依存型の経済構造の中で、円高は日本企業の収益悪化をもたらし日本経済は袋小路に入るのではないかという懸念が出てくる。

 ドル・円など現在の為替相場の水準は果たして異常なのか。景気悪化のスパイラルから逃れるために財政、金融の役割をどう見ればいいのか。成長回帰のために心得ておくべき、世界の動きとは。元財務官の行天豊雄氏に聞いた。

(聞き手は日経ビジネスオンライン編集長 廣松 隆志)


行天豊雄氏

行天 豊雄(ぎょうてん・とよお)氏
国際通貨研究所 理事長
1931年神奈川県生まれ。55年東京大学経済学部卒、大蔵省(当時)入省。84年国際金融局長。86年に財務官に就任、87年10月19日の世界的な株安、ブラックマンデーを経験する。89年大蔵省退官後、米プリンストン大学客員教授などを経て、92年に東京銀行会長。95年から国際通貨研究所理事長。通貨、金融政策などの国際間交渉で各国と渡り合った「通貨マフィア」として有名。『富の興亡』『日本経済の視座』など著書多数。

(写真:大槻 純一)

 ―― ここ最近の為替水準をどう見ていますか。

 行天豊雄 金融市場の混乱、実体経済の悪化を考えると、現在の為替の動きは安定しているとは言えないまでも、それほど極端な動きではない、と感じています。

 円・ドルの相場やユーロや人民元などほかの通貨においても、過去においてずいぶん大きく変動したこともありました。過去の動きと比べて、現在の為替相場が大変深刻な状況だという感じはしていません。

 ―― 2007年半ばには、1ドル=120円ほど、2008年1月には107円ぐらいでしたが。

 行天 120円という相場がいつまでも続くと思っていた人がいるとすれば、それはかなり甘かったのではないでしょうか。120円台というのは、明らかに円安でしたから。

 現在の相場は、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)的にそれほどおかしな水準ではないと思います。ですから現在は、為替相場の水準が、世界的にも話題にはなってないと思います。ドルでいえば、米国があれだけ大きな財政赤字を持ち、これからもさらに増えていくわけですから、長期的なファンダメンタルズからいえば、ドル安傾向であることは間違いない。

 ただし、長いスパンで見たファンダメンタルズの上には、経常収支の動向、金利の変動、資本の国際的な流れなど様々な要素が載ります。その意味では、昨年の相場の動きは、その典型だったように思えます。資本の国際的な流れや金利変動の予測などで相場が動いた。

典型的な動き

 おそらく去年の夏以降、金融危機が激化して、米国の金融システムなり、民間の打撃が非常に大きくなることが分かった時に、やはりドルにもその影響が必ず及んで、ドルが売られると考えられた。米国経済に対する一般的な信頼感の減少ということが、ドル相場にも反映されるだろうと、思われていました。ところが実際にはむしろ逆、つまりドル高に振れました。後から振り返れば、それはそれなりに理由があったわけですね。

 いわゆる円キャリー的な金利に基づいた資本の流れが逆流したとか、それからまた、金融システムの中での、いわゆる信用収縮の状況でドル資金が海外から米国に還流するという格好になって表れ、それがドル高をもたらした。

 為替の動きというのは、確かにファンダメンタルズというものは厳然としてあるのですが、実際の相場の動きは、それにプラスした要因の変化で非常に大きく左右されるのです。今の相場の動きは、ファンダメンタルズと同時に金融危機や、それに伴う世界的な景気後退がもたらす影響が、いくつも混在しているわけです。

 それをいつの時点でも、今はどの要素が非常に大きく働いているのか。例えばAの要素が大きい、Bの要素はどうだ、Cの要素はどうだと、考えないといけない時期だろうと思いますけどね。

 円についていえば、ユーロやほかの通貨がグローバルな資本の流れに影響されて非常に安くなっている。日本の金利水準はそもそも非常に低く、日本が金融緩和や金利引き下げを行う余地は、常識的に考えればほかの国と比べて、少ないことは明らかなので、その意味で円高の1つの要素にはなっています。

グラフ

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