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第5話 スタートは数合わせの候補者

  • 出井 康博

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2009年1月28日(水)

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 今年9月までに行われる衆院選では、かつてなかったほどに政権交代の可能性が高まっている。時代の変わり目は、新たに政界を目指す者にとってはチャンスだ。1990年代初めの日本新党ブーム、4年前に小泉ブームが起きた際には、多くの新人議員が国政に進出した。次回の衆院選でも、かなりの議席が入れ替わると予想される。

 ただし、「地盤」「看板」「かばん」のない人間が、自民党や民主党の公認を得て国政を目指そうとすれば、政治家2世にはない苦労が待ち受ける。たいていの場合、同じ選挙区に君臨する強力な現職議員と闘わなくてはならないのだ。その事情は、民主党代議士・Aが初めて立候補した頃から変わっていない。

初出馬の時の相手は、与党に鞍替えした著名な現職

 その日、Aは地元で開かれたお祭りに顔を出していた。いつものように参加者を回って挨拶を続けていると、主催者ら数人に先導され、スーツ姿の人物が仰々しく会場に現れた。Aが選挙で対決することになる与党の現職代議士である。

 この代議士には、全国的な知名度と人気がある。普段は東京にいるか、他候補の応援で地方を回っていて、こうした地元の集まりに出席するのは珍しい。

 「Xさん!」
 Aは、無邪気に呼びかけた。

 Xが一瞬、驚いた表情になった。しかし、すぐに笑顔を取り戻し、両手を差し出してくる。Aは深々とお辞儀をしながら握り返した。その途端、XはAの耳元に顔を近づけ、周囲に聞こえないようこう囁いた。

 「(自分の選挙区を)荒らしてくれて、ありがとう」
 ドキッとして頭を上げると、にこやかな表情を装いながらも、Xの目は笑っていない。それもそのはず。AはXと同じ選挙区で闘うことになったからだ。

 次の瞬間、Aは再び頭を垂れた。
 「ありがとうございます!」
 決して嫌味ではなく、反射的に発した言葉だった

 Xはその言葉に反応することなく、すっとAの手を離すと、何事もなかったかのように参加者の輪へと戻っていった。2000年、Aが初の衆院選に挑む前の出来事だ。

 相手候補のXは、Aの“元同僚”である。XはAの初出馬の数年前、Aが職員として働いていた新党から華々しく国政デビューを飾った。だが、Xは当選すると、いつの間にかその新党から与党へと移り、花形議員としての地位を確立する。そのXと、Aは同じ選挙区で与党と野党に分かれ闘うことになった。

 言葉を交わすのは、新党の時代から数えて3~4年ぶりだった。

 「あの時、Xさんから“きみも頑張れ”“正々堂々と闘おう”と余裕を見せられていたら、“さすがだな”と思っていたでしょう。しかし、実際に聞いた言葉は全く違っていた。むしろ、相手の度量の小ささが分かって自信にすらなった」

電車の中で立候補の話を持ちかけられる

 1996年に結党した民主党は、解党した新進党から議員を吸収し、98年に野党第1党として新たなスタートを切った。その後、同年の参院選で躍進。そして来る衆院選(第42回、2000年に実施)に備え、新人候補の発掘を急いでいた。

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