医薬品のネット販売を禁止する「省令」を、半ば強引に押し通そうとする厚生労働省。しかし同じ政府の中に、省令に異を唱える組織がある。
内閣府設置法に基づいた内閣の「政令」により、2007年1月、内閣府に設置された「規制改革会議」だ。規制改革をより一層推進するため、あらゆる規制に目を光らせており、その責は省令より重い。
ここにも、吠える男がいた。松井証券の松井道夫社長である。
規制改革会議のルーツは遡ること14年前の1995年、村山富市内閣時に発足した行政改革委員会の「規制緩和小委員会」にある。オリックスの宮内義彦取締役兼代表執行役会長が参与を務め、以降、同委員会は名と組織を変えながら存続し、宮内会長も10年以上のあいだ、規制改革の旗手を担った。
安倍晋三内閣時に宮内会長から日本郵船の草刈隆郎会長にバトンが渡され、組織も今の規制改革会議となった。現在、草刈議長以下、首相から任命を受けた14人の民間有識者がメンバーに名を連ねている。
その中の1人、松井社長は今、規制緩和から規制強化へと向かう揺り戻しの現状に、怒り心頭なのだ。
◇ ◇ ◇
非効率な官製市場は、まだ山ほどある
―― 松井さんは規制改革会議に参加されて、今の規制を巡る動きをどのように感じているのか。
松井道夫(まつい・みちお)氏
松井証券社長
1953年3月生まれ、55歳。76年、一橋大学経済学部を卒業後、日本郵船に入社。86年、松井証券社長・松井武氏の1人娘と結婚、翌年、婿養子となり松井姓に改名し、松井証券に入社。88年に取締役就任、95年に社長就任。98年に国内初の本格的なネット証券事業に参入、信用取引の売買高で野村證券を抜き業界トップに。2001年、東証1部に上場。
松井道夫 日本は規制というものがあるが故に、どれだけ雇用が失われたか、ないしは民間の活力がそがれたか。そういったことを思い切り戦後したがために、規制改革というものがこれだけ国民的に取り上げられたんじゃないですか。
では、いわゆる小泉改革が規制改革とイコールで結びつけられているけれども、あの程度の期間だけで、この規制でがんじがらめにされた国から本当に規制が撤廃されたと、国民の皆さんは思っているのでしょうか。
医療や農業をはじめとする“官製市場”がこれだけあって、その中に民がずっと入って行けなくて、いかに非効率であるかということは、日々のいろいろなニュースを見ても山ほど出ている。
まさに経済が大変なことになっている時だからこそ、民が知恵を出して、規制を取っ払っていくことが必要だと普通思うのに、そうはなっていない。いったい、国民の誰が規制緩和に反対なのでしょうか。
一部の規制が緩和されたことで不利益を被った、いわゆる既得権益者が、ここぞとばかりに言っている声を、メガホンで、虫眼鏡で拡大して、それがあたかも国民の声のごとく「官」が喧伝しているように、僕には見えているということです。
すべての規制を十把一絡げにして全部なくせなんて、そんな暴論を吐くつもりはない。我々は悪い規制を撤廃しろと言っているのであり、それはたくさんあるでしょうと。その動きを排除して誰が得をするんですか。
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規制改革会議は、雇用・就労、農林水産業、運輸など、19の分野別にタスクフォースを設置し、これまでに出して来た「答申」や、この3月に再改定する「規制改革3カ年計画」に盛り込むべき案件を詰めている。医療分野のタスクフォースをまとめるのが、松井委員。医薬品のネット販売規制を最大の懸案事項とし、活動を続けてきた。
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