中国で日系企業の工場が“荒れる”のは、この10年で3回目である。2005年の反日デモ、2008年に広がった労働争議。そして今、リストラを巡るトラブルが表面化し始めた。
2月25日、北京市にあるパナソニックグループの現地法人で、社長ら幹部が数時間にわたって多数の従業員に取り囲まれるという騒動があった。スピーカーなどを製造している北京松下部品が、その舞台。同社のリストラ案に対して不満を表した従業員が工場内の事務室に押し寄せたのである。
その日、北京松下部品は従業員に「希望退職」を募ることを表明した。すると、退職者に支払われる補償金の基準について一部の従業員が反発し、条件見直しを経営陣に迫ったのである。その過程が報道関係者によって伝えられ、騒ぎが大きくなった。
広東省深セン市でも3月3日、プラスチック製品を作る日系企業の本社社長や現地法人社長が、工場長や従業員などに暴行を受けて負傷する事件も起こった。汚職の疑いのある工場長らの解雇を巡るトラブルだとされている。
中国では労働条件や退職時の補償金などを巡り、従業員が抗議したり、労働局に訴えたりすることは日常茶飯事。だが、今回のように、実力行使に至るケースはほとんどなかった。
いくつかの背景がある。まず1つは、本社の業績悪化や中国工場の稼働率低下により、日系企業の中国拠点にリストラの嵐が吹き荒れている点だ。従業員の側も必死だ。1年前なら別の職場を探せたが、今は再就職も簡単ではない。急激な雇用環境の悪化によって、企業への態度を硬化させている。
大繁盛の「リストラ講習会」
さらに、中国当局が企業の人員削減に目を光らせており、リストラへの風当たりも強まっている。出稼ぎ労働者や大学生の就職難は現在、中国政府にとって最大の懸念事項。今年に入り20人以上の人員削減は事前に労働組合に通知し、当局へリストラ計画を提出することが義務づけられた。
現状、中国から工場を撤退する日系企業は、ベトナムに生産を移管するユニデンなど数えるほどしかないが、大半の企業は世界的な需要減で人員削減によるコストダウンを迫られている。ただ、日本のように非正規従業員への依存度が高くないため、「派遣切り」のようなやり方にも頼れない。
今年、中国各地では日系企業を対象とした「リストラ講習会」が相次いで開かれている。日本貿易振興機構(JETRO)やコンサルティング会社などが主催し、余剰人員の解消を最大のテーマにしている。

労働関係の法律の基礎や必要な手続きなどが教えられているが、日系企業トップの関心が高いのは、政府当局との関係だ。というのも、表面上はリストラの計画立案と遂行は企業の裁量ではあるが、実際は各地の労働局の理解なくしてはスムーズに進められないからだ。逆に、労働局のお墨付きをもらうことが、従業員の反発や混乱を防ぐ最も効果的な方法であるとも言える。
ある労務コンサルタントは「各地の労働局が最も嫌うのは、人員削減自体より、労使間での大きなトラブル。管轄内で騒動が表面化すればボーナスもカットされる」と打ち明ける。企業側のリストラ計画が認められるとは限らないわけで、駆け引きも必要になる。
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