4月1日、英ロンドン。20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)の開催を翌日に控えた首都は、異様な空気に包まれていた。
「金融バカの日(Financial Fools' Day)」
「4月バカ(April Fools' Day)の日」をもじって、そう名づけられたこの日、金融街「シティー」には、銀行救済に反対する人々が集結し、デモを繰り広げていた。英銀行大手ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの店舗は暴徒に襲われ、窓ガラスが粉々に砕け、コンピューターや家具などが外に放り投げられた。
その衝撃的な映像が、世界に流れた直後のことだった。為すすべなく傍観していた警察が、一転して反撃に転じた。そして、「デモ対警察」5時間闘争は、悲劇的な幕切れを迎えることになる。
日本では報じられていない、金融サミット・デモの内側をリポートする
なごやかな雰囲気が一転、警官隊がパニックを呼ぶ
午後3時30分、地下鉄「マンション・ハウス駅」交差点。突然の出来事に、路上は騒然となった。警官隊が、四方から一斉に駆け寄ってくる。1部隊が15〜20人程度。そして、人々を囲い込む。
この頃、人々は和やかな雰囲気でデモを続けていた。クイーンビクトリア通りに繰り出していた群衆の中には、プラカードを手に気勢を上げる人もいたが、多くの人々は、余興に参加している気分だったに違いない。若者の姿が目立つが、座り込んでビールをあおっている中年男性や、車椅子の老人もいる。音楽をかけながら踊っている一団、そして輪になって談笑する学生たち…。
だが、警官隊の登場で、パニックに陥った。逃げ出そうとするが、どの道にも警官が壁を作り、立ちはだかる。そんな中で、血気盛んな若者たちが、押し寄せる警察官と対峙する格好となった。ペットボトルやゴミが警官隊に向かって投げつけられる。警官隊は2つの列を作り、前列はデモの中心を包囲するとともに、後列が周辺で見物している人々を遠ざけていく。
隔離された形になったデモの中心にいた人々は、激しく警官隊とぶつかり合った。
「オレたちが戦いたいのは銀行家だ。ポリスは引っ込んでろ」
怒号が飛び交い、あちこちで小競り合いが始まる。顔面から血を流した若者が、仲間に抱えられるようにして前線から引きずり出され、交差点の真ん中に横になった。
クイーンビクトリア通りとクイーン通りの交差点は、四方の道をすべて封鎖された。上空にはヘリコプターが舞い、状況を監視している。ビルによじ登る者や、壁を乗り越えて逃げようとする者も後を絶たないが、警察が着実に逃げ場をふさいでいく。
30分が過ぎた頃、交差点の中心には、あきらめた人々が座り込み始めた。ビールやウイスキーをあおる人も多く、酩酊状態になった人がよろめきながら歩いている。突然、巨体の男が、歩道に仁王立ちになって、そのまま嘔吐を始めた。上半身裸で、警官隊に詰め寄る者もいた。
狭い空間に押し込められた鬱憤がたまり始めたその時だった。
午後4時過ぎ、突然、クイーンビクトリア通りの東側に立ちはだかっていた警官隊が、バリケードを解除して走り去っていく。
「警官が逃げて行くぞ」
人々は気勢を上げた。空いた穴から水が噴き出すように、人々は走って逃げ出し始めた。近くのビルでは、勝利を確信したかのように、デモ参加者が勝手にポールに青い旗を掲げた。人々が拳を突き上げ、歓喜の声を上げる。
だが、間もなく、自分たちが、警官隊の仕組んだ巨大な罠にかかったことを知ることになる。




















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