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蜃気楼を待つ男たち

「収入は減るいっぽう、でも蜃気楼が出ると、いやなことはぜんぶ忘れられる」

  • 宮嶋 康彦

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2009年4月17日(金)

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 いつ出現するとも知れない蜃気楼を求めて、男たちは海岸にやってくる。一日じゅう、儚い現象の現われを待望して海の彼方を見つめている。それも、天気がよければ毎日。

 男たちとは魚津蜃気楼研究会の面々である。会員は仕事をリタイアした60代を中心に、およそ30名。会の発足は平成4年、それまでは、三々五々、海辺に集って情報を交換し、ヨタ話に花を咲かせていた。そのうちに、「もっと蜃気楼のことが知りたい」と索め合うようになり“研究会”へと結束を固めていった。

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 「蜃気楼が発生してもしなくても、同じ思いのみんなと話をした日は良い気分で帰宅できる」

 会長の、石沢啓一さん(58歳)が口元に笑みをたたえて話す。地元の魚津で保険の代理店を経営している石沢さんは、「ここのところ仕事の量が格段に増えました、それと逆行して収入は減るいっぽう、まいっちゃいますよ、去年は蜃気楼発生の不作の年でしたから、ここらで一発、大きな蜃気楼が出てくれないかと期待しているところです、蜃気楼が出ると、いやなことはぜんぶ忘れられますからね」と自嘲気味に笑った。

 肉眼で見ることができる蜃気楼の出現は、年に1、2度のこと。石沢さんは平成元年に初めて「みごとな蜃気楼」を目撃した。38歳、見えざる世間と格闘している年頃だった。「これが自分のふるさとか」と思わせるような美しい光景を目の当たりにし、「生身で感じる魚津という風土をもっと知らなければいけない」と自省するほどの体験になった。

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 「この海岸にやってきて、水平線を眺めている会員のほとんどが、私のような経験をしていると思いますよ」

 仕事を定年退職し、日がな一日、海を眺めて暮らす…その人生は風前の灯か、と思わせたが、そんな後ろ向きの話ではなかった。彼らは、さらなる生き甲斐を見出していた。

 「ほとんどの人が蜃気楼の撮影をします、同じ蜃気楼を撮りながら、みなさん、それぞれの個性が出て異なった作品になっているんです、そんな写真を見せ合うことが、また楽しみなんです、それから、観光客の多くの人は目撃せずに帰りますから、自作を見てもらいながら、蜃気楼のメカニズムなどを説明してあげるのも海岸通いの励みになっているんです」

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