4月16日、障害者団体向け郵便料金割引制度を悪用したとされる郵便法違反事件で、大阪地検特捜部は、ダイレクトメール(DM)の不正送付に関与したとして、障害者団体、大手家電量販店会社、広告代理店、大手通販・印刷会社などの10名の関係者を逮捕した。
報道によると、逮捕事実は、実体のない障害者団体の定期刊行物を同封することによって、障害者団体向けの低料第三種郵便割引制度を適用させ、正規料金が一通120円のところを、8円という破格の低料金で約200万通のダイレクトメールを発送させ、正規料金との差額計約2億4000万円を不正に免れたというものだ。
障害者団体のための制度を悪用して多額の郵便料金を免れた許し難い悪質な事件だ。しかし、この郵便法違反事件には、適用する法律に関して、経済犯罪事件としてかなり特殊な面がある。また、その背景には、郵政民営化によって民間会社となったにもかかわらず、旧来の官営事業の性格を色濃く残した郵便法という法律が足かせになって現場の混乱が続いているという実態があるように思われる。
法律面と実質面の両方から、この事件の問題点と、捜査の意義を考えてみたい。
通常であれば逮捕は考えられない軽微な犯罪
まず、今回の被疑事実は、「不法に郵便に関する料金を免れ、又は他人にこれを免れさせた者は、これを三十万円以下の罰金に処する」という郵便法84条の規定に違反したというものだ。まず、驚くのが、これほど大規模な強制捜査なのに、被疑事実の法定刑が「30万円以下の罰金」と著しく軽いことだ。
被疑者の逮捕の要件を定める刑訴法199条は、軽微な犯罪については、住居不定か出頭拒否の場合に限って逮捕を認めている。この軽微な犯罪の範囲は、刑法犯、暴力行為処罰法などでは「30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪」、それ以外の特別法犯については、「罰金30万円以下」を「当分の間、2万円以下」にするものとされている。
社会的地位のある企業の役職員などの場合は住居不定、出頭拒否というのは通常あり得ないわけで、要するに、今回の逮捕事実は、この「当分の間、2万円以下」という刑訴法の規定で何とかギリギリ逮捕の要件を充たしてはいるものの、法定刑のレベルから言うと、通常は被疑者の逮捕などは考えられない極めて軽微な犯罪と言わざるを得ない。
このような軽微な法定刑の被疑事実であえて異例の大規模強制捜査が行われたのは、障害者団体割引という障害者のための制度を悪用して多額の利益を得るという行為の悪質性に着目したからであろう。
しかし、そこで疑問になるのは、詐欺罪との関係だ。
詐欺罪に問うことは不可能で罰則も小額の罰金刑
正規の郵便料金を支払っていると信じて宛先に郵便物を配達しているのであれば、それを支払わないで配達というサービスを行わせる行為は、通常、「人を欺いて、財産上不法の利益を得た」という刑法246条2項の詐欺利得罪に該当するはずだ。同罪であれば法定刑は「10年以下の懲役」、罰金刑の選択刑はない。「不正に郵便に関する料金を免れる」というのは、通常は詐欺罪になる行為のはずだ。
本来は詐欺罪に該当し相当重い犯罪のように思える行為について、なぜ、このように極端に低い法定刑が定められているのだろうか。
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1955年島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官、桐蔭横浜大学法科大学院教授などを経て、2009年から現職。公正入札調査会議委員(国土交通省、防衛省)、総務省顧問・コンプライアンス室長、総務省年金業務監視委員会委員長なども務める。主な著書に『







